スタートアップ支援の新時代! 鉄道会社が『TRIP』でめざす未来とは

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日本の鉄道インフラをスタートアップの力に……。日本の鉄道インフラをスタートアップの力に変える、イノベーションクラスター『TRIP』についてのメディア向け説明会が3月12日、開催された。鉄道事業者がスタートアップを支援する取り組みだ。


◆鉄道会社は多くのアセットを持つ

TRIP=東京レイルウェイ・イノベーション・パートナーは2024年度から2026年度までの3か年度にわたり、鉄道事業者とTISが中心となり、社会課題解決や未来の街づくりなど、社会的インパクトのあるイノベーションを創出するスタートアップ企業を支援していくプロジェクトだ。TRIPの代表会社は、企業に「成長戦略を支えるためのIT」を提供するTISインテックグループのTISが務め、鉄道会社12社が参画する。

TISのビジネスイノベーション事業部ストラテジー&イノベーションコンサルティング部の水船慎介シニアマネージャーは「鉄道会社は多くのアセットを持っている。電車はもちろん商業施設、ホテル、観光地など多様なアセットがある。そして鉄道事業者各社がすでにスタートアップ支援に取り組んでいる。事業者がタッグを組み、多くの挑戦者を支援して、TRIP基点でイノベーションを創出したい」と語った。

◆沿線1万1000kmでスタートアップ事業

TRIPは、東京都が推進する「グローバルイノベーションに挑戦するクラスター創成事業」(通称:TIB CATAPULT)で採択されたイノベーションクラスターのひとつだ。“鉄道・交通”をメインテーマとし、ウェルビーイングや気候変動対策(クライメートテック)、生物多様性の回復・保存(ネイチャーテック)などの領域でスタートアップ企業の技術・ソリューションを活用し、社会課題の解決をめざす。スタートアップを支援する企業の共同体をクラスターと呼ぶ。

TRIPはTISと小田急電鉄、京王電鉄、京浜急行電鉄、JR東日本スタートアップ、西武ホールディングス、東急で発足、のちに西日本鉄道、東京地下鉄、東武鉄道、相模鉄道、名古屋鉄道、東海旅客鉄道が加わった。2025年3月時点で鉄道事業者12社、25都府県、約3300駅、総距離約1万1000kmをカバーする。スタートアップ事業は東京都内にとどまらず、グローバル進出支援も視野に入れている。

TRIPが支援するスタートアップTRIPが支援するスタートアップ

◆出会いの場、情報交換も

TRIP発足前にJR東日本スタートアップ(J)、東急(T)、小田急電鉄(O)、西武ホールディングス(S)の4社は、鉄道横断型社会実装コンソーシアムの「JTOS」を立ち上げていた。TISの水船シニアマネージャーは「JTOSをいいな、と思っていたところに、東京都がTIB CATAPULTでクラスターを作っていくことになり、その枠組みの中でJTOSの取り組みを加速して、面白いことができると思った」と、TRIPクラスターのきっかけを語った。

後からTRIPに加わった西日本鉄道(本社:福岡市)の新領域事業開発部の森永豪課長は、「話をいただいたときに『これは参画するでしょ』とほぼ即決だった。スタートアップ企業は東京に集中しているので、TRIPで出会いが増える。同じような事業をやってる鉄道会社と情報交換もできる」と参加の理由を述べた。

◆横展開しやすいので加速できる

さらに鉄道事業関連のスタートアップ事業は横展開しやすいようだ。森永課長は、「他の鉄道事業がやっていることは『うちでもやれるんじゃない?』という発想になる。鉄道業界の文化的なものもあるかもしれないが、社内でも話が通りやすい」という。

横展開の利点については小田急電鉄のデジタル事業創造部ポリネーター / シェアリングエコノミー協会アンバサダー / SCI-Japanフェローの和田正輝氏も言及する。「鉄道会社のアセットは基本各社同じなので一気に広げれられる。そうすればスタートアップの成長が速い。鉄道業界で競合はもちろんあるが、小さいところには目をつぶって大きい世界をいっしょに作る」。

参画する各鉄道事業者が協力し、個別では提供できない広範なネットワークや鉄道利用者との接点を活用することで、業界全体や社会に新たな価値を提供するな機会としてTRIPの利活用が期待されている。

《高木啓》

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