大手私鉄間では珍しい車両の移籍があった。西武鉄道では4月11日に南入曽車両基地(埼玉県狭山市)において、小田急電鉄から譲受した8000系車両を媒体に公開した。5月末から国分寺線で運行を開始する。
●2030年度までに100%VVVF化
西武では新造車両の導入と並行して、他社から環境負荷の少ないVVVFインバータ制御車両を導入して省エネルギー化を加速させる方針だ。2030年度までに100%VVVF化をめざしている。西武では他社から譲受したVVVF車両を「サステナ車両」と呼ぶ。
サステナ車両1本目となる8000系は、元小田急8000形。2024年5月に小田急から譲受後、7月1日より武蔵丘車両検修場(埼玉県日高市)において、保安装置の変更や車両デザインの変更などを行なった。施工業者は小田急グループの小田急エンジニアリングだ。2025年1月7日に主要な更新を終えて武蔵丘車両検修場を出場、3月末までに運行開始に必要な試験を終えた。この後、西武線各路線で乗務員による訓練が始まる。
●廃車のタイミング
西武8000系は6両編成。小田急8000形からの変更点は、保安装置の西武仕様への変更、西武内規に沿った予備電源の蓄電池の増強など。室内では車端部のロングシートが、全幅(車両の長さ方向)はそのまま、4人掛けから3人掛けになった。1人当たりの幅は40cmが53cmになった。外装デザインは社内公募による。西武はサステナ車両として無塗装車を探していたが、西武での導入タイミングと他社での廃車タイミングとが合ったのは、塗装が必要な小田急8000形だった。
小田急8000形の新製は1982年からで車齢は40年以上になる。一般的な車両の寿命に達しており、延命は長くを望めないので、改造箇所は必要最低限に留めたという。また、西武ではドアが片側4か所の8000系を導入して3ドアの旧型車を廃止するので、ホームドア導入に都合が良い。ただ、4ドアはサステナ車の前提条件ではなく、譲渡のタイミングが合った車両が4ドア車だったわけだ。
●東急9000系も譲受予定
西武はサステナ車両として小田急8000形のほか、東急電鉄9000系を導入予定だ。東急9000系は4ドアで無塗装のステンレス車体を持つ。西武での形式は未定。小田急と東急からは合計約100両を導入する。西武では、池袋線、新宿線など本線系へ新造車両を導入し、小田急車を国分寺線で、東急車を多摩川線、多摩湖線、西武秩父線、狭山線で運行する計画だ。今後のサステナな車両導入について、時期や両数などの詳細は未定。西武と小田急、東急とで配車計画を擦り合わせていくことになる。
西武ではサステナ車両の導入効果を次のように試算している。サステナ車両100両導入してVVVF化100%を達成すると、直流モーターの旧型車両に比べて使用電力量は約50%削減され、それに伴ないCO2排出の削減は年間約5700tとなり、これは約2000世帯の年間排出量にあたる。車両のリユースによりCO2も削減できる。新車製造時に排出するCO2を約9400t削減でき、車両廃棄時に排出するCO2を約70t削減できるという。