「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」

ハンズオフ機能は濃霧の高速道路でも安定して動作した(POVカメラで撮影)
  • ハンズオフ機能は濃霧の高速道路でも安定して動作した(POVカメラで撮影)
  • ホンダ アコード ホンダセンシング360プラス
  • ホンダ アコード ホンダセンシング360プラス
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  • 単眼の広角カメラ
  • ミリ波センサーが仕込まれているが、外見からはわからない
  • ミリ波センサーが仕込まれているが、外見からはわからない
  • ホンダ アコード ホンダセンシング360プラス

2025年5月、ホンダ『アコード』の新グレードとなる「e:HEV Honda SENSING 360+」が追加された。ホンダの量販モデルとして初となる、高速道路・自動車専用道におけるハンズオフ機能が搭載されたグレードで、いわゆる自動運転「レベル2+」に該当する。

本稿では、このハンズオフ機能の試乗レビューを中心に、その技術的な特徴と、それがもたらす移動体験の変化について報告する。


◆約40万円の追加機能

本題に入る前に、アコードの新グレード「ホンダセンシング360プラス」について概要を紹介しておこう。

従来からあるアコードの「ホンダセンシング360」の上級グレードとして今回登場したもので、ハンズオフ機能が追加されたほか、ドライバーの状態を常に見守るドライバーモニタリングカメラ、10cm単位の高精度な自車位置測位が可能なGNSSと高精度地図データなどに対応している。

そのほかにも、分岐や出口IC付近で車線変更を支援する機能や、速度超過でカーブに侵入しようすると警告および減速する機能、ドライバーの異常を検知すると自動停止および救助要請を行う機能、降車時に後方からの車両を検知して警告する機能などが追加されている。

このような機能が追加されたホンダセンシング360プラスの価格は、ホンダセンシング360に対して約40万円の上乗せとなる599.9万円となっている。40万円は決して安くはないが、追加される機能や安全性を考えれば、それ以上の価値は十分あるだろう。

◆ダントツで完成度の高いハンズオフ

ホンダセンシング360プラスの中核機能である「ハンズオフ機能付き高度車線内運転支援機能」とは、高速道路や自動車専用道において、一定条件下での手放し運転を可能にするものだ。

他のメーカーでハンズオフ機能を搭載したモデルも存在するが、トンネル内や悪天候時、あるいは速度制限など、作動には多くの制約が伴うことが少なくなかった。当日はあいにくの悪天候で、高速道路の一部区間で50キロ規制が敷かれるほどの濃霧や、時折激しい雨が降るという、運転支援システムにとっては厳しい条件下であったにもかかわらず、アコードのハンズオフは、悪天候をものともせず、驚くほど安定して作動し続けた。

試乗を振り返ってみよう。高速道路の本線に合流後、ACCをオンにすると10~20秒ほどでステアリングのインジケーターが青に光り、アコードはハンズオフ可能な状態へと移行したことを知らせる。

最初に手を離す時には、小心者の筆者は内心ビビりながらそっと手を離したのだが、それは杞憂であったことをすぐに理解した。

雨や濃霧の中、トンネルへの出入りが頻繁にあるルートであったが、ハンズオフ機能はキャンセルされることもなく継続した。道中ICなどで白線が途切れる箇所もあったが、アコードは迷う素振りもなくハンズオフで巡行を続けた。

その制御は自然で、細かな修正舵を当てながらレーン中央をビタッと維持し続けた。カーブにおいては自然にイン側のラインを走行し、アウトに膨らんで不安を感じることもなかった。隣車線の大型トラックを追い越す際には、ドライバーの圧迫感を軽減するため、わずかにトラックから距離を取るように進路を調整する制御も見られた。

他メーカーの同様の機能と比べても、ハンズオフで走行できる時間が断然長い。結果として高速道路の大半をハンズオフ状態で走行することができた。測ったわけではないが、感覚的には95%ほどの時間はハンズオフだった。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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