“主客転倒”などというとやや言葉が過ぎるが、VWの『ID.BUZZ』の実車が目に触れるようになり、もともと同じ空気感をもっていた『ムーヴ・キャンバス』が、あくまでも個人の感想だが、ますます“ミニID.BUZZ”に思えてきた。もちろん“雰囲気”の話だが……。
◆“型”にはまらない、自由でしなやかなデザインとセンス

現行の2代目ムーヴ・キャンバスの登場は2022年7月。ここのところは本家の『ムーヴ』の新型がスライドドアの採用で話題だが、このムーヴ・キャンバスが個人的な推しであるのは変わらないので、おそらく登場時以来、久しぶりに試乗してみた。
すると、やはり心地よかった。再確認したのは、このクルマは他の軽自動車にはない独特のホンワカとしたムードがあるということ。と、ここでふと、この春に試乗した最大のライバル車のスズキ『ワゴンRスマイル』を“癒し軽の筆頭”と記事に書き、タイトルにも使われたことを思い出したのだが、その部分を今回“筆頭”から“双璧”に改めさせていただきたいと思う。

このクルマでいいのは、内・外観ともに、いかにもクルマでござい……といった“型”にはまらない、自由でしなやかなデザイン、センスにまとめられている点。実はそういうエッセンスが新型ムーヴに盛り込まれてもよかったのに……とも思ったのだが、デロンギのコーヒーメーカーとか北欧の家具を選んで使う心地よさといえばおわかりいただけようか? 機能は同等でもデザイン、色、風合いが日常生活を心弾むものにしてくれる……そんな魅力が、このムーヴ・キャンバスにはある。
◆走りにもリラックスムード漂う
試乗車は“ストライプス”で、本来なら筆者(=オジサン)であれば渋めの“セオリー”に乗るべきだったかも知れない。が、幸いにも(!?)色の部分が落ち着いたスムースグレーマイカメタリックだったため、それほど照れずに試乗ができた。

室内もサッパリとしたデザインで、ライトグレーのサラッとした風合いのシート表皮なども心地いい。我が家のシュンも座面前後長がタップリとしたシートに気分よさそうに乗っていたし、その後席は座面の高さがあり人も足を組んで座れるほどのゆったりとしたスペースで、十分な頭上空間(コブシ2個はある)が確保されている。
走りもリラックスムードといえばいいか。乗り味、ステアリングフィールなど基本的に穏やかだが安心感もある。安心感はターボとCVTのパワートレインも同様。今回はエアコンも使いながらの試乗で、日常使いをメインにごく普通に乗ったが、それでも23.6km/リットル(WLTCモードのカタログ値は22.4km/リットル)の燃費が確認できた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。