京王電鉄(本社:東京都多摩市)は、新型通勤車両「2000系」を2026年1月31日から運行開始する。5号車には京王初の大型フリースペース「ひだまりスペース」を設置する。ベビーカー利用者などに配慮した空間と、子どもが外を見やすい大きな窓が特徴だ。
2000系は2026年1月31日に1編成を導入し、運行開始前にはお披露目会や記念乗車券の発売も予定されている。現在のところ、2027年3月までに10両編成×4本、計40両を導入する計画で、老朽化が進む7000系などを順次置き換える。また、都営地下鉄との直通運転は予定されていない。
◆全ての世代にやさしい車両とは?
若葉台車両基地(東京都稲城市)で10月27日に開催された報道発表会において、京王電鉄取締役常務執行役員鉄道事業本部長の井上晋一氏は「2000系は『ワクワクしてもらえる車両』がキーワードだ。丸いフォルムで安心感や優しさも表現した」と挨拶。
2000系の開発コンセプトは「もっと、安全に、そして安心して、これからもずっと、のっていただける車両を。全ての世代に、やさしく、そして、ワクワクしてもらえる車両を」。外観は円をモチーフとしたラウンド形状とグラフィックスを採用し、やさしさと安心感を表現。内装も同様に柔らかい曲線デザインで統一し、自然で落ち着いた空間を演出している。
京王2000系:ひだまりスペース◆「ひだまりスペース」を新設
車両電気部車両企画担当課長の佐々木昌氏は「やさしさを運ぶ車両を実現した」という。2000系の大きな特徴が、「年齢や性別を問わず対応できる大型フリースペース『ひだまりスペース』の設置だ」。
子育て世代やシニア世代など、年齢や性別、また目的を問わず、安全・快適に鉄道を利用できるよう、京王初となる大型フリースペースを導入した。座席はなく、ベビーカーや車いす利用者に配慮した広い空間と、子どもが外を見やすい大きな窓と低い手すりが特徴だ。車内での動線や機能性も考慮した衝立がスペースの中央に設置される。
1990年代に、JRが東京の山手線などで収納式座席を装備した車両を導入、立ち席で運用した際は「人を貨物扱いする気か」との非難もあったが、2025年発表の2000系ではベビーカーや車いす利用者に配慮してのレイアウトだ。同様のフリースペースは、首都圏では西武鉄道に導入例がある。さらに2000系では、各車両にベビーカー&車いすスペースが設けられている。
ひだまりスペースは10両編成中の5号車(新宿寄り6両目、八王子、高尾山口寄り5両目)に配置される。京王では、ホームの5号車付近にエレベーターを設置する駅が多いからだ。
なおフリースペース「ひだまりスペース」の名称は、2025年5月7日から6月10日にかけて実施された一般投票で決定した。候補「ぬくもりライド」「ひまわりライド」を抑え、最多得票となった。
京王2000系
◆女性がデザインをまとめたのは京王初
佐々木昌氏によると、「やさしさを運ぶ車両」としての特徴のもうひとつが、「ラウンド形状をモチーフとして、楽しさと心を落ち着かせる空間にした」デザインだ。ひだまりスペースも含めて、2000系のデザインをまとめたのは車両電気部車両企画担当の宮園朋菜さん。車両デザインを女性がまとめたのは京王では初めてだという。
宮園さんは発表会には出席したものの、実は育休中の子育て世代だ。「やさしさを運ぶ車両」を開発するために女性が起用されたのではなく、新型車開発のまとめ役として宮園さんが任命され、「やさしさを運ぶ車両」をデザインしたという順番だ。
デザイン検討には、京王グループの感性AI株式会社が提供する「感性AIアナリティクス」が用いられた。まず車内設備について利用者や社員へのアンケートや座談会を実施、その結果をもとに新造車製造コンセプトを決定。さらにそのコンセプトに合わせて車体メーカー(総合車両製作所)が車両デザインを複数製作した。これらの内容を踏まえて、「感性AIアナリティクス」を活用し、コンセプトと最もマッチする車両デザインを選択した。
感性AIアナリティクスは、消費者データを学習したAIが、ネーミング、キャッチコピー、パッケージの印象を瞬時に数値化・分析するイメージ分析AIツールだという。京王では、今回の新型車開発が初めての導入だという。
◆環境性能の向上
駆動装置にはフルSiC(シリコンカーバイド)素子を用いた新型VVVFインバータを採用した。京王では第3世代のVVVFとなる。従来の7000系に比べ約20%の省エネを実現し、VVVF化以前の抵抗制御車に対しては約70%の電力削減効果を持つ。なお京王は2012年に全車VVVF化を完了している。
京王2000系:ひだまりスペースの藤本美貴◆藤本美貴「至れり尽くせり」
発表会には子育て世代代表としてタレントの藤本美貴が登場。2000系を見て「優しさが詰まってるな」と印象を述べた。「女性が開発したせいか、やさしい色合いなど細かいところに配慮が感じられる。安心して乗れる、落ち着いた空間」と評価。
「まだ降る駅ではないのに、子どもが泣き出す」、「隣の人に子どもがちょっかいを出す」といった“子育て世代の電車あるある”を語った。ベビーカーに子どもを乗せて混んでいる電車に乗車した時の、周囲からの冷たい視線も“あるある”だが、「子どもをつぶされたくないので、私は強気でベビーカーに子どもを乗せている。でも、そうはできない人もいるでしょう」と。
そして「ひだまりスペースがそういった人の助けになると素敵だ。電車は人を運んでくれるだけでありがたいのに、2000系は至れり尽くせり。嬉しい」と、評価した。










