世界で最も過酷な24時間耐久レースで、技術研鑽に挑むトーヨータイヤ
クルマ好きなら一度は足を運びたい場所がある。それはドイツにある“世界で最も長いコース”として知られている「ニュルブルクリンク(北コース)」だ。しばしば“ニュル”という愛称でよばれるこの地では、大小様々なロードレース、さらには自動車メーカーの開発のコースとして各メーカーやコンストラクター達はコースのほど近くに拠点を構えている。

そのニュルブルクリンクで開催されるのが、“世界で最も過酷な24時間耐久レース”とされている「ADAC RAVENOL 24h Nürburgring」(ニュルブルクリンク 24時間耐久レース)だ。毎年世界中からファンが集うこのニュル24時間耐久レースだが、熱心なファンはレースウィークの月曜日から現地でキャンプを始め、まさにお祭りのような1週間を過ごしてレースを楽しんでいる様子も印象的。

そして2025年のニュル24時間耐久レースは、過去最高の観客動員数を記録し、約28万人もの観客がその地を訪れていたのだから驚くほかない。観客数をみても、まさに世界一のレースといえるだろう。


その頂点を目指して戦い続けている日本のタイヤメーカーが「TOYO TIRES」(トーヨータイヤ)だ。トーヨータイヤは現地でも有力のレースコンストラクターである「Ring Racing」とパートナーシップを組み、「TOYO TIRES with Ring Racing」としてワークス参戦をしている。タイヤはニュルブルクリンク専用スペックに仕上げられた「PROXES Slicks」を全面供給し、チームを足元から支えているのだ。

なぜトーヨータイヤが過酷なモータースポーツの世界に足を踏み入れたのかというと、世界中のタイヤメーカーが凌ぎを削るこのニュル24時間耐久レースで、数あるコンペティターとの戦いを通じてタイヤの開発を行うのが目的だ。そしてその技術は市販タイヤにも活かされ、トーヨータイヤを代表するフラッグシップタイヤ「PROXES Sport 2」にはニュルで開発された技術が注ぎ込まれている。

そんな2025年のニュル24時間耐久レースは6月21日から22日まで開催されたが、史上最高ともいわれるほどの暑さに、様々なアクシデントが発生するサバイバルレースとなった。そんな波乱のレースに果敢に挑んだトーヨータイヤ陣営の戦いをレポートしていく。
TGRドライバーのメンバーが4人揃って初レース!互いに力を合わせて24時間を走りきる

2024年、NLS耐久シリーズでトーヨータイヤは、5年にわたるタイヤ開発が実を結びシーズンを席巻。SP10クラスにトヨタ『GR Supra GT-4 EVO』を2台体制(#170、#171)で参戦し、#170が見事にシリーズチャンピオン(アンドレアス・ギュルデン選手/ティム・サンドラー選手/マルク・ヘネリッチ選手)を獲得した。

さらに2025年は新たに「TGR-DC(TOYOTA GAZOO Racingのドライバー育成プログラム)」から4名の若手ドライバーを迎えて体制を強化。次なる目標は各メーカーのGT4マシンが争う、SP8Tクラスでニュル24時間耐久レースの優勝。ドライバー陣は中村雄一選手、ジュリアーノ・アレジ選手、小高一斗選手、小山美姫選手で、#160に4人が揃っての参戦はNLS耐久シリーズの「ニュルブルクリンク24時間予選レース」が初となる。

早くもNLS耐久シリーズの開幕戦からそのポテンシャルを発揮、NLS1で中山選手と小高選手がクラス2位の表彰台を獲得した。その後はきっちりと完走するリザルトを残しながら、今回のニュル24時間耐久レースへと臨むこととなった。ジュリアーノ選手、小高選手、小山選手はニュブルクリンクの24時間レースは初めての参戦だが、いずれも国内トップカテゴリで輝かしい成績を残したドライバー達の走りに期待が高まる。

ニュル24時間耐久レースのトーヨータイヤ陣営は、SP-PRO、SP8T、SP10の各クラスにそれぞれ1台ずつ、計3台の車両がエントリー。SP10クラスにはプロクセスアンバサダーを務める木下隆之選手も(#170)で参戦し、同じくクラス優勝を狙う。

さらに昨年のチャンピオンを獲得したアンドレアス・ギュルデン選手/ティム・サンドラー選手/マルク・ヘネリッチ選手組は、#347「ポルシェ911 GT3 Cup MR」(991.2)で参戦。GT-3マシンでの参戦を見据えたタイヤ開発において、初めての24時間耐久レースでタイヤのマイレージや性能を試すことも1つの狙いだ。
暑さによるレースアクシデントで想定外の波乱、その中で「PROXES Slicks」が光を見せる

TOYO TIRES with Ring Racingのニュル24時間耐久レースは、クラッシュ含むレースインシデント、マシントラブルによる修復作業に追われ、さらに想定よりも高い気温というコンディションがセッティングにも影響するなど、残念ながら苦戦を強いられるレース展開となった。さらにはレース中のクラッシュだけでなく、暑さの影響か開始2時間ほどでコースは停電によってあらゆる電子機器やコース上の電子掲示板などがブラックアウトで赤旗中断。

その後、再開後のナイトセッションでも22時頃から暗闇に包まれたニュルでのクラッシュが多発、そこに巻き込まれることはなかったものの前半で勝負権を失ったトーヨータイヤ陣営としては悔しさの残るリザルト(#160:P5、#347、#170:DNF)となってしまった。
一方でニュル24時間耐久レースに初挑戦するドライバー(ジュリアーノ選手、小高選手、小山選手)が見事に完走を果たし、タイヤも24時間耐久レースにむけて投入したスペックが速さを証明したことは、シーズン後半戦に向けた確かな手応えでもある。そこでレースを終えた中山選手、ジュリアーノ選手、小高選手、小山選手、そしてRing Racing代表のUwe監督にそれぞれ話を聞いた。

【中山選手】今シーズンNLSでの2回の参戦を通じて、様々な課題も見えてきており、それを解決しての24 時間レースとなりました。タイヤについては、以前のベースタイヤからもう1つ違うスペックのタイヤを用意していただきました。今回のレースでは、すごく温度が高くなったので、このコンディションに対しては凄くよかったと思います。

温度については、本当にニュルブルクリンクでは考えられないぐらいの暑さで他メーカーもかなり苦戦していました。その中でPROXES Slicksはかなり安定したパフォーマンス持っていたと思います。ライバルと比べるとコンディションによってはまだ伸びしろがあると感じたので、今回持ち帰った課題をしっかり改善していきたいなと思います。

ニュル24時間耐久レースでは夜の涼しい環境からの感触を覚えることができましたし、 結果としてはトラブルが起きてしまい、他の車と順位を争うレースはできなかったことは残念でした。ただし今回多くの時間を走れたので今後に繋がる1戦になったと思います。

【ジュリアーノ選手】初めての 24 時間耐久レースは、まず全体を通して良い経験だったと思います。残念ながら今回結果は出ませんでしたが、チームが頑張って車を修復してレースに復帰することができ、しっかりと走れたことはよかったです。個人的にはデータも取れて、良いフィーリングを掴むこともできました。

タイヤについては、異なるスペックを試して、どのタイヤもフィーリングは良かったです。ニュルの少し涼しいコンディションに合わせたスペックは、この気温では厳しい一面もありましたが、ナイトセッションでのフィーリングとタイムは良かったので、開発はいい方向に行っていると思います。

【小高選手】初めてニュル24 時間耐久レースに参戦して、ドライビングミスによりチームに迷惑をかけてしまい、自分たちが望んでいた結果は残せなかったことは残念でした。しかし前回のニュル24時間予選レースで走った時に感じたタイヤの課題を確認して、それを改善できました。

また、今回再確認して違うスペックのタイヤを持ち込み、それがいい方向に向いていることが確認できたことがよかったですね。そしてニュルでたくさんの時間を走れたことが何よりよかったので、マシンを直してくださったことを含めてチームにとても感謝しています。

【小山選手】ニュル 24 時間耐久レースは初めての経験だったので、今回参戦させてもらうことができて私にとっても貴重な機会になりました。タイヤも複数のスペックを使い、さらに夜から朝にかけて、気温の高い日中と比較しながら、色々なコンディションで走れたので、タイヤのこともよりわかるようになりました。

結果を残すことができなかったのが残念ですが、今後のレースのためにコミュニケーションを取って、チームとの信頼関係が深まったことは良かったと思います。

【Uwe監督】チームの雰囲気も良く、レースの週末に前向きな姿勢で臨みました。しかしながら結果としては、レース中のアクシデントと技術的な問題が発生して、満足のいくニュル24 時間耐久レースとはなりませんでした。エンジントラブルやクラッシュなど、車両の修復に時間を費やしました。
また、高い気温というコンディションの中、ポルシェ、アストンマーティン、メルセデス、 マクラーレンおよび BMWといったライバル車とトップスピードの比較において、GRスープラGT4 EVOはパフォーマンスを存分に発揮できていませんでした。さらに停電の影響でレースにレッドフラッグが出され、その後もクラッシュが続き、良い流れにはならなかったことは残念です。

タイヤの性能については、我々は 6~7 ラップでタイヤのパフォーマンスを維持することができ、持久力は良好でした。他のチームは最初の 2 ラップではタイヤが上手く機能しているようでしたが、その後は一気に落ちている印象だったので我々のタイヤの強さを感じました。
今回は何より気温が高く、冷却、タイヤ、サスペンション管理に課題がありました。振り返ると、多くのインシデントにより、チームがレースよりも車の修理に多くの時間を費やし、結果を出すことができませんでした。それでもファンやゲストからは肯定的な反応があり、暑い天候にも関わらず楽しんでいただけたのが何よりだったと思います。
NLS Lightで3位表彰台を獲得!ニュルブルクリンクで“青を刻む”戦いに注目だ

今回のニュル24時間耐久レースではアクシデントに苦しめられたTOYO TIRES with Ring Racingだが、NLS耐久シリーズではTGRドライバーと新たに加わった選手たちと共に成果を挙げている。
直後の7月に開催されたNLS lightは、NLS耐久シリーズに参戦する若手ドライバーを対象としたレース。今回は小高選手&小山選手の2名が『GR Supra GT-4 EVO』(#160)で参戦し、各車と激しいバトルを繰り広げながらSP8Tクラス3位表彰台で見事にフィニッシュを果たした。

NLS6も同じくSP8Tにジュリアーノ・アレジ選手&小山美姫選手が参戦、クラス6位で完走。VT2-RWDでは『GR Supra』に搭乗する宮園拓真&川畑真人選手がクラス5位で同じく完走を果たした。
特に今回のNLS6からトーヨータイヤの社員ドライバーとして参戦することとなった宮園選手はグランツーリスモのチャンピオンでもあり、リアルレーシングでの戦いに注目だ。合わせて長年トーヨータイヤのドリフトチーム「Team TOYO TIRES DRIFT」で戦う川畑選手とのタッグによって、どのような走りをみせてくれるのか非常に期待が高まる。

次戦は9月13日から14日にかけて「NLS7」「NLS8」の連戦として、引き続き#160:SP8Tクラス、#347号車:SP-PROクラス、#520:VT2-RWDクラスが出場を予定。TGRドライバーからは中山選手と小山選手の2名、さらにVT2-RWDクラスに社員ドライバーの宮園選手&川畑選手の走行が予定されている。トーヨータイヤのニュルブルクリンク挑戦に、ぜひ注目してほしい。
TOYO TIRES『PROXES』の製品ラインアップはこちら《取材協力:トーヨータイヤ》