5月24日から5月25日にドイツ・ニュルブルクリンクで開催された、NLS耐久シリーズ「ADAC 24h Nürburgring Qualifiers」(ニュルブルクリンク24時間予選レース、以下ニュル24時間予選レース)にトーヨータイヤは「TOYO TIRES with Ring Racing」として参戦。「PROXES」ブランドアンバサダーの木下隆之選手らの駆る#170が、見事に第1レース:3位、第2レース:2位とNLS3でのクラス優勝からの好調を維持し、連続表彰台を獲得した。

ニュル24時間予選レースは、初日に第1レース、2日目に第2レースが開催され、TOYO TIRESは、SP8TクラスおよびSP10クラスにトヨタ『GR Supra GT4 EVO』でエントリー、装着タイヤはトーヨータイヤ「PROXES Slicks」だ。(SP8Tクラス:排気量2,500cc以上4,000cc以下の市販ターボ車両、SP10クラス:グループGT4カテゴリに該当する市販レーシングカー)

SP8Tクラスにエントリーした#160は、TOYOTA GAZOO Racingから中山雄一選手、ジュリアーノ・アレジ選手、小高一斗選手、小山美姫選手が参戦。初戦はパーミット取得のためにTGRチームから参戦していたジュリアーノ選手と小山選手が、今回からトーヨータイヤ陣営に合流。4人揃っての参戦はニュル24時間予選レースがはじめてとなった。

この4名の選手たちはTGRの若手ドライバーとして、将来にむけて選手の育成を兼ねた「TGR-DC」というプロジェクトでトーヨータイヤとのタッグが2025年シーズンからスタート。初戦NLS1では中山選手と小高選手がいきなりクラス2位の表彰台を獲得し、はやくもポテンシャルを見せている。

さらに今回は選手たちのアドバイザー兼コーチとしてミハエル・クルム氏も駆けつけた。今シーズンはきたるニュル24時間耐久レースについてもクルム氏がサポートに入ることで、選手たちを引っ張っていってくれる頼もしい存在だ。
雨のニュルでコンディションの厳しさを体感・・・!レインタイヤでの初走行で確かな手応えをつかむ

#160は第1レースでは予選中に部品損傷のトラブル、第2レースでは他車からの接触によるレーシングインシデントなど、走行セッションの時間を長く取ることができずレースそのものが厳しい状況に追い込まれながらも、TGR-DCのドライバー達が最後までレースを諦めない執念の走りを見せ、両レースともに完走を果たした。そこでレースを終えた中山選手、ジュリアーノ選手、小高選手、小山選手にそれぞれ話を聞いた。
Q.今回開催された、ニュル24時間予選レースの振り返りをお願いします

今回は4人の正規メンバーで挑む最初のレースになりました。本当にシート合わせレベルから始まりましたが、2日間、4時間ずつのレースの中で、ドライバー4人でお互いにフィードバックしました。ドライビングや問題点を話し合え、課題をクリアできた部分もあり、成長できた2日間でした。サポートに入ってくださったクルムさんは現地を知るドイツ人で、日本語が話せることもあり、ドイツ人のチーム監督とのコミュニケーションの仲介にも入っていただき、全体的にはとてもプラスになったと思います。(中山選手)
今回のニュル24時間予選レースを終えて、とてもポジティブな雰囲気になりました。2日間の2レースともゴールできましたし、色々なコンディションを経験できたと思います。雨についてはみんな厳しいシチューエーションにも遭遇しましたが、ニュル24時間耐久レースを前に体験できたことは幸運だったと思っています。(ジュリアーノ選手)

今年から始まったトーヨータイヤとTGR-DCとのニュルプロジェクトでは開幕戦後、2回目のレース参戦となりました。ニュル24時間耐久レースに向けて、これまでと今回でドライと雨の両方を走れました。今回からジュリアーノ選手と小山選手も加わり、前回のレースからは体制から少し変わりましたが、トーヨータイヤのチームとともにクルム氏も入って僕たちを引っ張ってくれて、ドライビングだけではなく、全体のオペレーションがいい形になっていると感じました。(小高選手)

今回からマシンが早くなったことで、見えている景色も変わったレース走行でした。トーヨータイヤのPROXES Slicksでレースに出たのはTGRチームとして出場したNLS1が初めてだったのですが、今回はパワーが変わってスピードが変わって*ようやくタイヤのことも分かるようになってきています。フィードバックもしやすくなりました。(小山選手)*NLS1ではパーミット取得のため、車両パワーが制限された状態
Q.今回レインタイヤ装着の走行は初めてだったと思います。走ってみたフィーリングや、今後にむけたポイントなどがあれば教えてください

1周が約25km・アップダウンは多い・古い舗装もあるなど、ニュルブルクリンク北コースは本当に難しいコースだと思いました。色んなコンディションに対応できるオールマイティなタイヤが必要だと感じました。さらに今回のように“安定して雨が降る”コンディションだと、ドライで走るだけでも怖いサーキットが、より一層難しいものになってしまいます。それを助けてくれるような、さらなる安心感を持って走れるタイヤ開発に貢献したいですね。(中山選手)
雨で気温も低く、初めて装着したウエットタイヤでウォームアップしきれなかったと感じています。ニュルブルクリンク北コースのように路面からの入力が比較的低くタイヤが暖まりにくいコースでは、チームもドライバーもしっかりと対策を講じて臨む必要があると感じました。(ジュリアーノ選手)
ニュルブルクリンク北コースを雨の中走るのは初めての体験でしたが、気温が低かったこともあり、タイヤのパフォーマンスをしっかり出しきれなかったと思います。ニュル24時間耐久レースは24時間ですから、路面温度の変化もあるでしょうし、小雨から大雨などのコンディション変化も考えられます。その点ではドライだけでなく、ウエットでも複数スペックの必要性に気づけたことは成果だと思っています。(小高選手)
雨の中、最初はダンプコンディションで、みなさんハイドロプレーニングや水捌けの良さなどに注目していたんですが、自分が乗ったタイミングではほとんど雨も降っていない状況で、走りやすいシチュエーションになっていたなと思いました。ただ、ウエットにしてもドライにしても、ちょっとタイヤが柔らかいのかなと感じています。コンパウンド的にはグリップ感がよいので、ニュルブルクリンクのようなバンピーかつハイスピードなコースでは構造的にしっかりしたタイヤが自分的には合っているかなと思っています。(小山選手)
Q.ニュル24時間耐久レースへの意気込みをお聞かせください

今回の予選レースでいろんなシチュエーションに遭遇したことで、いい経験になったと感じます。本番は24時間ですので不安はありますが、何も経験したことがないところに飛び込むのではなくなったので、どんなことが起きても対応できるよう、しっかりとしたイメージを持って臨むことができると思います。
トーヨータイヤやクルムさんのサポートもあり、順調に進んでいることに感謝しています。ニュル24時間耐久レースは1つの区切りではありますけれど、この先クルマ・タイヤ・ドライバーがさらに成長していく通過点だと思っています。まずはみんながしっかり実力を出し切って、全員笑顔でゴールすることを目指したいです。全員が100%出し切った結果かどうかが、大事だと思います。 (中山選手)

マシン、タイヤ含めて、いいポテンシャルを持っています。長いレースの中で出来るだけノーミスにして、まとめることができれば自然と結果は出るはず。様々なシチュエーションを完璧にマネージして、表彰台乗れるよう頑張りたいです。(ジュリアーノ選手)
今回わかったタイヤのことだけでなく、ドライやウエットまでのコンディション変化にも対応できるように、ドライビングの課題をまとめて、24時間耐久レースでベストの結果を目指して頑張ります。(小高選手)

まずはしっかり24時間走り切ることが第1の目標ですね。24時間ということで、みんなもきっといつも走らない時間帯だったり、気温変化や視界の状況もあると思います。チーム全体で見ればいい走りをすることが、タイヤにとってもクルマにとっても、明確なフィードバックができると思いますので頑張ります。(小山選手)
ニュル24時間耐久レース優勝に向けて準備は整った!悲願の6年越しの目標を目指し挑戦が始まる

SP10クラスにエントリーし、前戦「NLS3」でクラス優勝を果たした#170は、好調を維持しながら木下隆之選手/ミハエル・ティシュナー選手/ハイコ・テンゲス選手が安定した走りを披露した。ヘビーウェットで難しいコンディションであった第1レース、濡れた路面から徐々に路面がドライへと回復する第2レース、共に選手たちの巧みな経験で見事な走りを披露。第1レースではクラス3位、第2レースではクラス2位と、連続での表彰台を獲得した。

いよいよ今週末の6月21日にニュル24時間耐久レースの決勝がスタートする。PROXES Slicksのポテンシャルは掴めているだけに、力強い走りをきっと見せてくれるに違いない。過去6年に渡って開発が進められ、2024年にはNLS耐久シリーズでのチャンピオンを獲得したこのタイヤは実績も信頼性も間違いのないものに仕上げられた。#160は表彰台でのフィニッシュ、そして#170は念願のクラス優勝にそれぞれ期待が高まる。
そしてSP8Tクラスには、TGRのワークスチームであるTGRRも参戦。GR Supra GT4 EVO2を要して6年ぶりのチャレンジというライバルの存在にも注意したい。ニュル24時間耐久レースは6月21日16時(現地時間)よりレースがスタート。翌日6月22日16時のゴールまで、24時間走り続けるトーヨータイヤをぜひ応援してほしい!
TOYO TIRES『PROXES』の製品ラインアップはこちら《取材協力:トーヨータイヤ》