同カテゴリーながら似て非なる『ボルト』/『レブル』
ヤマハ『ボルト』と、ホンダ『レブル1100』。アメリカンバイクという同じカテゴリーに属しながら「似ているようで似ていない」この2台。空冷Vツインという、アメリカンの伝統的ともいえるエンジンレイアウトのボルトに対し、レブルは水冷の並列2気筒。しかもそれはアドベンチャーマシンである『アフリカツイン』からの流用。フレームワークもスチール製ダブルクレードルフレームのボルトに対し、ダイアモンドフレームと、やはり似ているところは少ない。

跨ってみても、ニーグリップがちょっとしにくいながら、それも含めて味となっているワイルド系のボルトに対し、人間工学に基づいて設定されたかのようなフィット感良好なレブル。いずれにしても足つきは良好で、多くのライダーにとって取っ付きやすいマシンの大前提は足つきであることをあらためて感じさせた。
走ればさらにその個性の違いがはっきりとする。941ccのボルト。1082ccのレブル。パワーはそれぞれ54hpと87hpとなっており、レブルは3種+任意設定出来るライディングモードを備える。
ボルトは1発1発の爆発をドコドコと感じさせる、これぞアメリカンといった乗り味。対してレブルはもっと洗練されていて、キビキビとレスポンス良い設定。

どちらが良いとか悪いとかではないが、違いは歴然。どちらかといえばボルトはフィーリング重視であり、レブルは性能重視といった印象をもった。
とはいえ、どちらもトルクがあり、パワーも十分。ボルトが使いやすさを犠牲にしているかといえばそんなことはなく、レブルに味わいがないかといえば、これもしっかり否定出来るほどのファン要素も備える。その重視するバランスがちょっと異なるといった具合である。
速さはレブルが圧倒的だが…

速さでいえば、レブルのほうが圧倒的に速くてパワフル。とくにスポーツモードを選択した際には「えっ?これってなんのカテゴリーのバイクだったっけ?」と感じさせるほどで、トラコンの装備も高いブレーキ性能も納得出来るポテンシャル。
今回のテスト車両はクラッチ操作のいらないDCT仕様であったが、アクセル操作だけでその加速が途切れなく続いていくのが痛快でもある。それでいてモード切り替えによってのんびり走ることの出来るキャラクターに変更出来るのも便利で、非常にオールラウンドに使えそうに感じられた。
対するボルトは、そんなもん必要ないじゃん!といった潔い割り切りを感じる。空冷エンジンならではの人間味とでもいえるフィーリングは、純粋にヤマハの考えるアメリカンバイクの気持ち良さを表現しようと作り込んでいるように感じられた。しかし、懐古趣味に浸るだけでなく、アクセルをしっかり開ければこちらも決して遅くはなく、ドコドコした鼓動を感じさせながら、トルクにのった迫力ある加速を味合わせてくれる。

乗り味にも2台の世界観が表れる
ボルトはハンドリングもいい意味でダルさがあって、その世界観が崩れることはない。
通常であればマイナス要素にもなりかねない重さ=手応えといったポジティブな印象であり、ゴロリン、ゴロリンとマシンをバンクさせながら走らせるのも心地良い。スポーツバイクではないのだから、あまりクイックな反応はむしろ好ましくないという判断だろう。
対してレブルはハンドリングにキレがあり、剛性感も高い。ワインディングではネイキッドバイクを操っているかのようにコーナーをクリアしていく。35度というバンク角もキャラクターを考えれば十分過ぎるほどで、アメリカンというジャンルの枠を超えた使い勝手の良いスタンダードなマシンといえるだろう。
スタイリングだけでなく、乗ったフィーリングも大きく異なる2モデル。しかし、それぞれに狙ったであろう世界観はしっかりと表現されているのだ。

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト
AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。