【プジョー 3008 新型試乗】全身鋼のような硬さに満ち溢れる。これが新時代のプジョーか…中村孝仁

プジョー 3008 アルカンターラパッケージ
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正直な話をすると、今、日本国内で輸入車に乗るという選択は、1970年代以前の状況に戻ってしまったと感じてしまう。当時は円の力が弱く、それゆえに車両価格は国産モデルの数倍はした時代である。だから、勢い外車に乗る=富裕層と相場は決まっていた。

【画像】プジョー 3008 アルカンターラパッケージ

今、再び円が安くなり、多くの日本人のインカムは増えず、翻ってヨーロッパやアメリカ、果ては中国を見ると、インカムは順当に上昇し、クルマの値段もそれに相応して上昇している。だから、日本人から見ると輸入車が高くなったと感じるのはごく当たり前のことなのである。ゆえに、輸入車の価格を見ると70年代ほどではないにせよ、かなり高額に映る。クルマが新しくなればなるほど新技術が導入されて、それに伴って価格も上昇している。

◆BEVを前提としたプラットフォームの功罪

プジョー『3008』は、グループ内で初めてSTLAと呼ばれる最新のプラットフォームを用いて登場した。このプラットフォームは先代CEOの、カルロス・タバレスの置き土産ともいうべきプラットフォームで、基本はBEVにマッチした構造となっている。

しかもこれが発表された2021年当時は、ヨーロッパ全体がBEV導入に傾倒していた時代であり、しかしそれはわずか4年でその方針が大幅に後退して、それでも最新車両としてデビューしたものである。当時タバレスは、2025年までに(つまり今年)300億ユーロを投資して電動化とソフトウェアの更新に邁進するとぶち上げていた。しかし、ヨーロッパのみならず世界中でBEV化は大幅に後退し、代わってHEV、PHEVが主役の座に躍り出そうな勢いとなっている。

そんなわけだから、新しい3008は従来モデルに比べるとかなり高価になった。特に日本ではその傾向が顕著であり、試乗した「アルカンターラパッケージ」というモデルは、日本に導入される3モデルのうち最も高価なモデル。といっても残りの2車種はいずれも受注生産であって、現実的にすぐに手に入れようと思うと、このアルカンターラパッケージのみということになる。その価格、車両本体価格で558万円~。試乗車はオプションを含んで566万4120円であった。

2009年にデビューした初代が、高いモデルでも300万円台。2代目が誕生した2017年当時でも、ようやく400万に届くレベルの価格帯であったのが、2020年代に入ると突如として価格が上昇し、果たして何度値上げの告知があったか数えられないほどの価格改定があった末に、今の500万円台中盤で落ち着いている。恐らくBEVの価格は600万円越えとなるだろう。

◆高級感あふれる新時代のプジョー

一応はCセグメントのコンパクトクロスオーバーというのが、世界的にこのクルマがカテゴライズされる範疇である。しかし、元々広かった車幅は1895mmと、あと一歩で1900mmに到達するレベルまで拡大された。全長こそ4565mmだから、まだ大きくは感じないが、全幅は日本の交通事情ではかなり大型車の部類に入ると言っても過言ではない。

ということで、価格とサイズ感に関してはあまり褒められる印象がないが、では車両はというかというと、明らかにプレミアムの範疇に入るモデルに仕上がっていると言って良いと思う。インテリアのたたずまいは先代と似たデザインコンセプトだが、個性があるし、高級感もある。そうした点においてはまあ、価格なり。プジョー的にはプレミアムブランドなのだから…というエクスキューズができる。

乗り味としては、プジョーらしからぬ硬質感を持った乗り心地である。決してごつごつとした印象はないのだが、全身鋼のような硬さに満ち溢れ、とりわけ路面の凹凸は全てビシッと一発で揺れを終息させる。感覚的にはドイツ車風であり、一時プジョーも確か『307』時代だったか、そうした傾向があったがその後軌道修正されて、俗に言う猫足が戻ったのだが、STLAプラットフォームと脚のセッティングは、グローバルという名のもとに「らしさ」が消えてしまった印象が強い。まあ、新時代のプジョーなのかもしれない。

◆燃費性能とアイドリングストップに課題

エンジンを含むドライブトレーンは1.2リットル3気筒のピュアテックユニットと、トランスミッションに電動モーターを組み込み、ベルトドライブISGと48Vの電動システムを採用するもの。実はこのシステムは、今日本で売られるステランティスのCセグメント及びBセグメント車両に共通するもので、ブランドをまたいでそれがアルファロメオだろうがプジョーだろうが、あるいはフィアットだろうがシトロエンだろうが皆同じである。

まだシトロエンには乗っていないから不明だが、同じシステムを使うフィアットやアルファロメオは試乗済み。これらと比較した時、3008は何故か燃費が悪い。まあ、走行パターンが最も高速を使わなったことと、距離が短かったことも考慮する必要があると思うが、燃費は8.2km/リットル。フィアットの17.2km/リットルには遠く及ばず、もちろんアルファもフィアットと同等のレベルだから、走行パターンを考慮してもかなり良くない。

それにこのシステム、アイドリングストップはするものの、エンジン停止してからものの数秒で再始動する。3008の場合はそれが顕著で、アイドルストップは精々2~3秒が良いところ。これだと、始動で使う燃料が多くなるから却って燃費の悪化を招くのではないかと思われた。この傾向はフィアットでもアルファでも共通であるから、このシステムの問題点の一つかもしれない。

正直に言うと、プジョーらしくない高級感に溢れた、硬質な乗り心地を提供するモデルだった。でもこれが新時代のプジョーなのかもしれない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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