【VW ID.Buzz 新型試乗】でかくて、重い。のに、期待をはるかに上回る“ファントゥドライブ”な1台…中村孝仁

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人間は、ある期待をもってことに臨んだ時(この場合はクルマに乗る時、である)、それが期待以下だとがっかり具合が増幅し、それが期待以上だと驚きや喜びが増幅するようである。

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まあ、筆者の場合は少なくともそうだ。なかなか物事に予断を持たずに、ニュートラルに対峙することは難しい。そんなわけで、残念ながらいつもこのクルマはこうなんじゃないか…あるいはああなんじゃないか…と、あれこれ考えを巡らせて試乗に臨んでしまう。ニュートラルなケースはごく稀である。

以前に個人的にBEVに対してはそれなりの偏見というか、個人的な拒否感があった話をした。それは、最初に乗ったモデルのトラウマを引きずっているからで、それが個人的に筆者のBEVに対する先入観を増幅させてしまっているからに他ならない。

今回試乗したモデルは、VW『ID.Buzz』である。昔懐かしいVW『タイプ2』を、現代にBEVとして蘇らせたクルマである。とても大きい。全長はともかく、車幅は1985mm。ミラーを含めば楽に2mを超える。車高も1925mmあって、路上駐車できるスペースに止めると、見事に幅の方は少しはみ出す。まあ、この時は止めた場所が悪くて、ガードレールの内側に植栽があって、それがはみ出していたからこうなったわけだが、たとえなくてもおそらくぎりぎりだと思う。

◆EVとの親和性がとても高いクルマ

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それはともかくとして、ID.BuzzはEVとの親和性がとても高いクルマだと思った。基本、カテゴリーとしてはミニバンである。日本の多くのミニバンもそうであると思うが、このジャンルの車両に求められる要素としては、大人数が快適に、A地点からB地点に移動できることで、運動性能やらファントゥドライブの要素を求められることは稀であろう。ならばBEVはエンジンではなくモーターで駆動するために、極めて静粛性が高い。快適であれば、ミニバンの素養としては、まずその条件を満たす。

今のところBEVのミニバンは、少なくとも日本市場ではこのクルマだけで、あとは家族で旅行をするのに航続距離さえ満たされれば、十分に良いクルマといっても過言ではない。だが、冒頭話したように、どうせBEVのミニバンだから、走りや運動性能に期待を持ってはいけない…という予断を持っていたようで、乗り出してすぐに驚かされたのは、その静粛性の圧倒的な高さだった。

BEVだから静かで当たり前は、動力源を音源とする静粛性の話なのだが、このクルマの場合、路面からの音の遮断性が抜群に高い。だから、動力源が静かでさらにロードノイズもほとんど聞こえないから、少し路面の良い道路を走ると、ほぼ無音といって差し支えないほど静かなのである。

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それだけではない。2.5トンを超える超重量級の車重を持ちながら、都内の雑踏をすいすいと抜ける運動性能の良さを持つ。初めは少しサイズを気にしたが、慣れてしまうと元から四角い箱を運転しているようなものだから、車両感覚がつかみやすく、比較的狭い道でも自信をもって抜けていくことができるのである。

286ps、560Nmのモーターは、少なくとも力不足を感じさせるシーンは皆無。やはりかなり積極的に飛ばしたくなるような要素も秘めていて、ワインディングロードを走るような機会には巡り合わなかったものの、でかくて、重いミニバンにもかかわらず、かなり運転が楽しめるクルマと感じられた。

というわけで、このクルマは筆者の期待値をはるかに上回る、ファントゥドライブをも与えてくれたのである。

◆所有欲を掻き立てるデザインが最大の魅力

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使い勝手は、今回お借りしたモデルがショートホイールベース版であったため、抜群に広いというわけには行かないものの、それでも日本の同サイズのミニバン並みのスペースは確保している。これ以上を求める向きは、正直なところ、いわゆるVIP仕様をお望みだと思う。スペース的にはロングホイールベース版ならそれを叶えてくれるかもしれないが、残念ながらID.Buzzには豪華さは微塵もなく、その点に関して言えば日本のミニバンのミニバンに一歩も二歩も劣る。

ただ、がらんどうの背後を気にせず、おひとり様(筆者の試乗はほとんどの場合これ)で運転する場合は、その加減速のフィールや、ハンドリングなどで、今度は日本のミニバンを一歩も二歩もリードするから、どちらを選ぶかは買い手次第である。

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ただ、ID.Buzzにはもう一つの魅力がある。それがスタイリングだ。かつてのタイプ2を彷彿させるデザインは、このクルマの大いなる魅力でもあり、所有欲を掻き立てる源泉でもある。

ネガ要素がないわけではない。その一つが乗降性の悪さで、特に身長の低い人が前席よじ登ろうとすると、それは結構難儀だし、降りる時も同様だった。ステップはあるものの、その第一歩は大柄なドイツ人向きの高さで、小柄なドライバーにはほとんど助にならない。

もう一つは個体差があるのかもしれないが、停車直前のブレーキフィールである。定常的に踏力を変えずに止まろうとすると、時速にしてせいぜい5~6km/h以下のスピードで突然ガツンと止まる。回生とメカニカルブレーキのやり取りがうまくないようで、不意を突かれるから非常に気になった。

電費はさすがに重さのせいもあってあまりよくない。300kmほど走って4.7km/kwhであった。

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■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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