【トヨタ ランドクルーザー 新型試乗】乗り心地に懐かしさも、やっぱり個性的な車は楽しい…九島辰也

「小細工なし」のV6ガソリン&ディーゼル

レンジローバーとは違う発想のボンネット形状

山中湖までの往復300km、ドライブモードの違いは明確

スーパーカーでも軽自動車でも個性的なクルマは楽しい

トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ディーゼル)
  • トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ディーゼル)
  • トヨタ ランドクルーザー 新型(取材協力 富士マリオットホテル山中湖)
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  • トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ガソリン)
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  • トヨタ ランドクルーザー 新型(取材協力 富士マリオットホテル山中湖)
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「ランクル」は親しみのあるクルマのひとつにあげられる。80年代今はなき某老舗ヨンク雑誌でバイトしたこともあり、数多く触れてきた。当時は60(ロクマル)、でもって80(ハチマル)と続いた。驚いたのは100の時。フロントサスペンションが独立懸架となり、ステアリングもラック&ピニオンとなった。今考えれば時代の流れに沿った進化に他ならないが、当時は驚いたもんだ。「ランクルお前もか!」的な。

そんな話はともかく、「ランクル300」こと新型『ランドクルーザー』が登場した。200からのモデルサイクルは14年くらい経つが、ちゃんと進化し続けるから素晴らしい。ロシア、中東、オーストラリアといった人気マーケットのニーズをしっかり汲んだ感じだ。ちなみに、北米では販売されない。生産のほとんどが日本なので高い関税がかけられるからだ。小売価格に25%乗せられたらライバルには勝てない。

「小細工なし」のV6ガソリン&ディーゼル

トヨタ ランドクルーザー 新型(取材協力 富士マリオットホテル山中湖)トヨタ ランドクルーザー 新型(取材協力 富士マリオットホテル山中湖)
では新型のハードウェアだが、もちろんラダーフレームを基本骨格とするボディオンフレーム。TNGAのロジックでラダーフレームを新設計した。聞いたところTNGAはフレームの製造方法ではなく概念だそうだ。なので、軽量化、低重心、自然なドラポジを念頭につくられたという。ラダーフレームに載るボディにはアルミパネルを多く採用する。フロントフェンダー、前後ドアパネルなどがそう。接着剤を多用したのも軽量化が目的だ。

エンジンは3.5リットルV6ツインターボのガソリンと3.3リットルV6ツインターボのディーゼルユニットというラインナップ。モーターでスタートをアシストして……といった小細工はない。このディーゼルは新設計でランクル300が初搭載となる。その意味で『プラド』をはじめいろいろと組み合わせるモデルが出てくるであろう。ディーゼルのV8を積んだクルーザー、『ポーナム35』もあったから、トヨタマリンが使うなんて可能性もありそうだ。

トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ガソリン)トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ガソリン)
パワートレインではギアボックスが6速から10速になったのもニュース。オーバードライブ的ギアが一気に増えたことで高速移動が楽になった。実際、今回のテストドライブでも高速道路が多かったのでそれは強く感じた。

おもしろいのは、今回エンジンを載せた状態で45度に傾けられるベンチをつくったという話。クルマが傾いた状態でのオイル回りを確認するためだ。中東の砂漠の斜面はかなりキツいからそうした声に応えたのであろう。ちなみに、ランドローバーは90年代からそれを実施している。秘境でのラリーを前提としたクルマだからだ。

レンジローバーとは違う発想のボンネット形状

トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ディーゼル)トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ディーゼル)
この他ではボンネットの形状が新しい。左右に盛り上がりをつけ、センターを低くする。これはドライバーの前方視界の確保と、衝突時の歩行者保護のため。レンジローバーではボンネットの剛性を保つのと渡河時の水の流れをよくするためだが、ランクルはそれとは異なる観点からオリジナルの形状を生み出した。

足回りではホイールに目がいく。新型はデフォルトが18インチで20インチも履ける設定にしてある。理由はパワーのあるエンジンに対するブレーキ性能の強化で、大径ブレーキローターを装着するため。インチアップは見た目の迫力を増すので相乗効果に値する。余談だが、中東仕様には昔からある4リットルV6エンジン車をランナップするそうで、そちらは17インチを標準にするらしい。

そういえば、これまで5穴だったのが6穴にハブボルトの数が増えているのも見逃せない。理由は剛性アップだが、ホイールを変えるときは要チェックだ。

トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ディーゼル)トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ディーゼル)

山中湖までの往復300km、ドライブモードの違いは明確

では実際に走るとどうか。と、その前にスタータースイッチがかなり上の方にあることに気づいた。理由は新たに導入した指紋認証システム。指紋を押しやすい場所が選ばれた。ただ、右ハンドルだと左手なのが少し面倒な気がする。右利きだと左ハンドルで右手の人差し指をスッと出したほうがスマートだろう。

今回は都心から山中湖までの往復、およそ300km弱を走った。高速道、一般道、そしてタイトなワインディングでその走りを試すことができた。今回はオフロード走行はできなかったので、4WDローレンジの実力は試せなかった。が、その分ドライブモードをいろいろ変えながら長く走ったのでその印象を伝えよう。

トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ガソリン)トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ガソリン)
まずガソリンエンジンとディーゼルの違いだが、それなりにはあるものの個性が色濃く出ているわけでもない。ガソリンエンジンのセッティングをトルク重視にしているのがその理由で、回転計は7000回転までとディーゼルの6000回転とさほど変わらない。

ただ、アクセルに対するレスポンスが早く軽く吹け上がる分ガソリンの方が軽快さを感じる。が、実際はディーゼルの方がトルクと一緒にタイヤがグイッと動き出すので、マッチングがいい気がした。それにこのディーゼルはかなり繊細なアクセルワークに対応する。まぁ、その辺は好みだろうが、個人的にはディーゼル方が扱いやすく思えた。

トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ディーゼル)トヨタ ランドクルーザー 新型(ZX ディーゼル)
ポジションはエコ/コンフォート/ノーマル/スポーツ/スポーツ+の5つ。ざっくり言ってしまうと、スポーツとスポーツ+は今時の乗り味で、ドイツ系SUVを思い出す。高速道路でもフラフラせず、バシッと走れる感じだ。で、目立ったのがコンフォート。かなりバウンシングが強く船で揺られるような感覚となる。ずっと走っていると船酔いしそうだ。が、どこか懐かしい気がしなくもない。

で、そこを開発者に問うと、「昔ながらのランクルの乗り心地」という返事だった。なるほど、そういうセッティングか。日本ではあまりないだろうが、海外の道路事情ではもしかしたら効果的なのかもしれない。

スーパーカーでも軽自動車でも個性的なクルマは楽しい

九島辰也氏九島辰也氏
なんて感じで徒然なるままに記してきたが、新型ランクルはなかなか良く出来ている。サイズのわりに機敏だし、走り出せばコントロールしやすい。それに見かけも悪くない。とはいえ、今回は「GRスポーツ」もあるし、そもそもまだオフロードを走っていない。これまでジープやランドローバで世界中のオフロードコースを走ってきただけにそこでのパフォーマンスに興味は尽きない。よって、総体的な評価はその後にしたいところ。

ただ、いずれにせよ、こういうクルマがつくり続けられるのは嬉しい限り。ロシア、中東、オーストラリアという特異なマーケットを主戦場とするが、母国日本で売られるのは素晴らしいことだ。スーパーカーでも軽自動車でも個性的なクルマは実に楽しい。

トヨタ ランドクルーザー 新型(取材協力 富士マリオットホテル山中湖)トヨタ ランドクルーザー 新型(取材協力 富士マリオットホテル山中湖)

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★★

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身。

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《九島辰也》

九島辰也

九島辰也|モータージャーナリスト 外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。

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