今でも年間に最低でも60台くらいは、試乗車に乗る。しかし、出て来るクルマはマイナーチェンジを含めれば、そんな数では済まない。
多分200台ぐらいはあるのではと想像するが、一人でそんな多くのモデルに乗るのは到底不可能で、いきおい、新しいのに目が行きがち。最近は特に意図して超高性能車の試乗を控えているが、それでも特定のブランドに偏りがちだ。
ジャガーの試乗車が消えて久しいジャガー・ランドローバーにあって、最近一番気になるのが『ディフェンダー』。市場での人気も、恐らくこのクルマが同社の中では一番ではないかと思えるのだが、コンパクトで日本の道路事情にマッチした『イヴォーク』が、もしかしたら、販売成績は一番良いのかもしれない。
レンジローバー イヴォーク PHEV P300eそのイヴォーク、初代は2014年に試乗しており、現行2代目も出てすぐの2019年に試乗したのだが、実はそれ以来乗っていなかった。呆れるほどのサボりなのだが、言い訳をすれば、まず外観は初代以来ほとんど変わっていないこと。エンジンにしても2リットルのガソリン、もしくはディーゼルで、字面の上では何も変わっていなかったのがその理由。
トップモデルのレンジローバーと、人気のディフェンダーは試乗車として追いかけているものの、それ以外のモデルに実はほとんど乗っていないことに改めて気が付き、最新のイヴォークがどう変わっているかをチェックした。
◆手を出しやすくなった2026年モデル
レンジローバー イヴォーク PHEV P300e
今回お借りしたのは「P300e」というPHEVモデル。今浦島の筆者には、へぇ~、PHEVなんてあったんだ…という情けない状態だが、このクルマはすでに2年前に日本上陸を果たしたモデルであった。それでも年次改良がおこなわれていて、2025年はこのP300eの価格が大幅に見直されていたそうだ。
すでに2026年モデルも受注が開始されていて、それによれば、更なる電動化拡充を目指し、P300eにはエントリーグレードのS、およびダイナミックSEのグレードが追加されるという。これによって現行よりもさらに手を出しやすい(?)価格にされている。
現行価格は、ダイナミックHSEが883万円、オートバイオグラフィーが964万円であるが、2026年モデルは、エントリーのSが739万円。ダイナミックSEが779万円。トップモデルのオートバイオグラフィーは916万円である。ここ数年、日本の経済が悪化し、輸入車は年々高くなる中で、比較できるオートバイオグラフィーで48万円の価格引き下げが行われ、P300eが欲しいユーザーにとっては、その階段がいきなり144万円も下がったのだから、装備に関しては不明だが、朗報であることは間違いない。
◆内外装の変化は
レンジローバー イヴォーク PHEV P300eというわけで、すっかりサボっていたイヴォークに久しぶりに試乗。見た目には2019年からほとんど変わっていない。見比べてみるとアンダーグリルから下、すなわちナンバープレートよりも下側が、わずかに変更されてものの、まあ、似たり寄ったりで、外観からはほとんど違いは判らない。余談ながら、初代と比較しても、見た目の違いは希薄だから、このスタイリングは市場に根付いたものといってもよさそうだ。
一方で内装、特にインストルメントパネルを中心としたデザインは、大きく変わっている。全体的にすっきりシンプルに変わり、ナビ画面も拡大している。何よりもエアコンの調整が仙台では独立していたのに対し、現行ではディスプレイに取り込まれ、すべての調整をディスプレイタッチで行うようになっている。
PHEVは急速充電には対応していないが、自宅に充電設備があればその恩恵にあずかることができる。幸い我が家にはその設備があるので、今回およそ500kmほどを走行してみたが、ガソリンの燃費はすこぶる良かった。試乗をしても、残念ながら大抵の場合1日で返却してしまうケースがほとんどらしく、すでに4000km以上走行していた試乗車にも関わらず、充電ケーブルを使用するのは筆者が初だという。丁寧にビニールに包まれた充電ケーブルを取り出して使わせていただいた。
◆出来の良い兄貴を持つだけに…
レンジローバー イヴォーク PHEV P300ePHEVのエンジンは、1.5リットル3気筒。それでもパワーは200psあって、モーターのパワーを加えると、システム総出力は300psを超えるから、イヴォークの中では最強である。高速の移動が多かったが、パーシャルからの加速力は、4人乗車でも十分以上。1人乗車の場合はかなり速いと感じた。
PHEVのお決まりで、バッテリーが枯渇するまでは基本的にEV走行をする。WLTPの表示はEV航続距離が68kmだそうだが、どう頑張ってもいいとこ50kmであった。それでも、横浜の自宅から東京を往復するレベルなら、ほぼガソリンを使わない。
回生ブレーキとのやり取りで極く稀に、止まる寸前にこつんと振動することがあったが、それを除けばスムーズさは抜群といえる。それにレンジローバーのようなゆったり感はないものの、サイズを考えれば十分に快適であった。したがって、このクラスのSUVとしては質感、走りとも十分に満足が行くのだが、兄貴分のレンジローバーの出来が良すぎるだけに、それを考えると評価としては「まぁまぁ」ということになってしまう。
出来の良い兄貴を持った弟は可哀そうである。
レンジローバー イヴォーク PHEV P300e■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。










