【注目軽&コンパクト】300km長距離試乗で、その乗り味を堪能

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【注目軽&コンパクト】300km長距離試乗で、その乗り味を堪能
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  • 片岡英明氏
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ショッピングや送迎などの普段使いから、家族や友だちを誘ってのロングドライブまで、幅広い用途に使え、エコ指数も高いのがコンパクトカーだ。が、最近はその下のポジションを受け持つ軽自動車にも魅力的なクルマが増えてきた。経済性の高さは言うに及ばず、走行性能に関しても侮れない実力を秘めている。

そこで市街地だけでなく高速道路と山岳路も走って真の実力をチェックしてみた。走ったのは都内から伊豆にかけての往復300km。トヨタ『アクア』、『パッソ』、ホンダ『N-ONE』、スズキ『アルト』の4モデルに試乗した。

◆長距離ドライブ、室内空間の違いは

4車とも全長は4mを切っている。もっとも全長が長いのは、トヨタのハイブリッド車、アクアだ。全長とホイールベースが長いだけでなく、全幅は小型車サイズいっぱいだし、背も低いので伸びやかさは際立っている。アクアに続くボディサイズのパッソは、軽自動車より全幅が190mmも広いため、安定感のあるフォルムだ。アクアと同じように、全高も立体駐車場を使える高さに抑えた。

軽自動車は、ご存知のようにボディサイズとエンジン排気量が制限されている。N-ONEは大ヒットしたホンダ『N360』をモチーフにしたデザインが売りの軽自動車だ。愛らしい台形フォルムに引かれるが、背は意外と高い。立体駐車場によっては入らないこともある。ベーシックミニの原点にこだわったアルトは、余裕をもって立体駐車場を使える数少ない軽自動車だ。軽自動車は全幅も1480mm以下だから駐車するのもラクだった。

ドアを開け、ドライバーズシートに座ってみる。横長のセンターメーターを採用するアクアは、横方向の広がりを感じさせるインテリアだ。開放感あふれ、他の3車と比べて見栄えも質感も一歩上を行く。ステアリングとシートの調整機構も充実している。ステアリングの下のパネルを大きく削っているため、足元の空間も広く感じられた。ペダル配置も適切だ。アクセルペダルと前輪のホイールハウスは干渉しないし、左側にも十分なスペースが残されている。

シートは大振りだ。『カムリ』と同じ骨格だから大柄な人でも気持ちよく座れる。長時間の乗車でもワインディングロードでも腰のずれがほとんどなく、快適だった。しかも小型車サイズいっぱいに幅を広げているから、大きなシートを装備しても横方向には十分な余裕がある。ドアは厚みがあるし、ドアポケットにはA4の冊子と500mlのペットボトルの両方が収納可能だ。ドアとシートの間隔も広いから、収納した小物類も難なく取り出せる。

水平基調のダッシュボードを採用したパッソは、フロントピラーの傾斜が緩やかだし、室内高も余裕たっぷりだ。大柄な人が座っても開放感があり、車両感覚もつかみやすかった。アクアと同じようにペダル配置は適切で、足の大きな人でも無理なくペダルを操作できる。ベンチタイプのフロントシートは、大きなアームレスト付きだ。クッション性があり、しっかりとしたソファのような造りだから、長時間のドライブでも疲れを誘わなかった。軽自動車のシートのなかには厚みがなく、座ったときに触れる部分が硬く感じられるものが少なくない。その点、パッソは気持ちよく座れる。狭い場所に駐車したときにサイドウォークスルーできるのも便利だ。リアシートは3人掛けだから横方向にも十分な余裕がある。

ドアポケットは大きく、出し入れのしやすさもアクアを上回るほどだった。シートリフターも操作しやすい。パワーウインドーが4つの窓ともワンタッチ昇降式なのも親切な設計だ。手の届きやすいところに収納スペースが多いのも高く評価できるところである。ラゲッジルームは軽自動車より横方向の長さがあるから、大きな荷物も積みやすい。

N-ONEは軽自動車とは思えないくらいインテリアの質感が高く、フロントシートは大振りだった。セミベンチシートで、小振りだが、センターアームレストも付く。自慢のセンタータンクレイアウトを採用するため後席の足元は平らで広い。だが、助手席に座るとタンクの張り出し部分にかかとが当たることがある。リアはパッソと遜色ない広さだし、チップアップ機能もあるなど多彩だ。が、軽自動車の宿命で、座れるのは2人になっている。

アルトは道具感の強いインテリアだが、カジュアル感覚を上手に盛り込んだ。シンプルだが、先代のような安っぽさはない。フロントシートの見栄えはそれなりだ。が、座り心地、ホールド感ともに合格点に達している。パッソやN-ONEと同様に、ちょっと着座位置を高くしたアップライトパッケージだから乗り降りもしやすかった。後席は小振りだが、不満のない広さを確保している。だが、割り切りの強い一体可倒式シートだから、荷物を積むときのシートアレンジには物足りなさを感じた。

◆走りはHVのアクアに軍配、N-ONEは意外に静粛性高し

走りの実力はどうだろう? すべてのステージで余裕ある走りを見せつけたのはハイブリッド車のアクアだ。まったく予備知識のない人でも難なく操作でき、安心感のある運転を楽しむことができる。1.5リットルエンジンに電気モーターを組み合わせているが、エンジン排気量が大きいため、市街地でも登坂路でも力強いトルク感を味わうことができた。しかもモーターの介入が絶妙だから、加速が必要なときはレスポンス良くパワーとトルクが立ち上がる。静粛性の高さも群を抜く。EVモードを使っての走りは快適だし、感動的だ。深夜の帰宅でもEV走行なら近所迷惑にならない。

パッソは1.0リットルの直列3気筒エンジンを積んでいる。無段変速機のCVTとの相性がよく、制御も緻密だから、街中でも高速道路でも軽やかなパワーフィーリングを見せつけた。フレキシブルなエンジン特性で、パワーとトルクの出方も素直だ。ストップ&ゴーの多い街中で扱いやすく、登坂路では力強い。また、3気筒エンジンとは思えないほど滑らかだ。アイドリングストップから再始動したときの振動も上手に抑え込んでいた。プラス330ccの余裕は、動力性能だけでなく快適性と燃費にも現れている。燃費は軽自動車と互角以上だった。

660ccの直列3気筒エンジンを積むN-ONEは、2名までなら自然吸気エンジンでも不満のない動力性能だ。高回転まで軽やかに回り、CVTはパワーとトルクを途切れることなく伝えてくる。クルージング時は軽自動車とは思えないほど静粛性も高かった。

アルトの直列3気筒エンジンも軽やかだ。絶対的な性能はライバルに及ばない。だが、軽量ボディと副変速機付きのCVTに助けられ、街中を中心としたステージでは元気のいい走りを見せつけた。ただし、登坂路や高速道路では今一歩のパンチ力にとどまる。また、積極的に走ると燃費の落ち込みも大きい。ライバルと比べ、遮音も今一歩なので、急加速したときはエンジンノイズなどが耳につく。

◆シーンによって差がつくフットワーク

ハンドリングとフットワークは、アクアが他の3車に差をつけている。マイナーチェンジでボディ剛性を高め、サスペンションを手直しした効果は絶大だ。高速道路だけでなくワインディングロードに乗り入れても、ミズスマシのように軽やかなフットワークを披露した。うねりのある路面でも接地感がよく分かり、コントロール性も高いレベルにある。乗り心地がよくなったことも美点のひとつだ。

パッソはスポーティ度では一歩譲るが、街中を中心とした走りで際立つ存在感を見せた。素直な運転感覚で、取り回し性も優れている。トレッドも広いから、強い風が吹く高速道路や荒れた路面では軽自動車に差をつけた。

ホンダN-ONEとアルトは、なかなかスポーティだ。とくにホンダN-ONEはワインディングロードでもキレのよい走りを見せた。だが、乗り心地や静粛性は上級のコンパクトカーにちょっと及ばない。

アルトも軽やかな走りを身につけ、運転するのが楽しいし、日常の取り回し性も優れている。が、ロングドライブしたときの快適性は今一歩だ。パッセンジャーが増えれば、その差はさらに開く。速いペースでの走りや山岳路などの過酷なステージでは自慢の燃費の落ち込みも大きかった。

今の軽自動車は、優れた経済性だけの我慢グルマではない。高速走行を難なくこなし、キャビンとラゲッジルームの広さも上級のコンパクトカーに肉薄する。しかし、走りの余裕と快適性に関して、さらに上を行っているのがコンパクトカー。ロングドライブで差をつけるだけでなく、同乗者にもやさしい。

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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