【スバル ソルテラ 1000km試乗】電動AWDは雪に強いのか? 圧巻の走行性能と、浮き彫りになった「雪国での実用性」の課題

スバル・ソルテラAWD「ET-HS」のフロントビュー。昨年大幅な性能向上と110万円の値下げが行われ、商品力が向上した
  • スバル・ソルテラAWD「ET-HS」のフロントビュー。昨年大幅な性能向上と110万円の値下げが行われ、商品力が向上した
  • スバル・ソルテラAWDのリアビュー。トヨタとの共同開発車だが、ハードウェア、基本デザインは完全にトヨタ車
  • 深雪路におけるソルテラの弱点は走行性能ではなく空力。巻き上げた粉雪がフロントウインドウに集中的にふりかかるため視界ゼロになるのだ
  • 寒冷地における着氷は過去に冬季ロードテストを行ったBEVの中でもかなり多いほうだった。一度固着するとなかなか除去できない
  • ワイパーの拭き残しが大きく、Aピラー脇に形成された氷の板が視界を狭めた
  • 光る六連星のエンブレムにはデンソーの解氷装置が仕込まれている。が、特別豪雪地帯ではモノの役に立たず
  • スバル広報車の雪国セット。ラダー、ハンドワイパー、スコップ、タイヤソック、融雪剤、ジャンプスタート用ケーブル等々
  • 雪国ではカメラ、センサー類がすぐダウンするため有視界が重要。クロスオーバーならやはりリアワイパーは欲しい

BEV(バッテリー式電気自動車)やシリーズハイブリッドなど、ピュア電気モーター駆動車のメリットに高精度な駆動力制御が可能というものがある。それが光るシーンのひとつが積雪路、氷結路。筆者は過年、2WDのBEVで寒波の襲来を狙って長距離ロードテストを行い、空転をギリギリのところで抑える制御がウィンターロードでいかに役に立つかを実感した。

【画像】豪雪の中を1000km試乗したスバル『ソルテラ』

そこで今季は雪国への適合性がより高い電動AWD(4輪駆動)車を3車種テストしてみた。モデルはスバル『ソルテラAWD』、日産自動車『アリアB9 e-4ORCE』、ボルボ『EX30ツインモーター』の3モデル。

これら3モデル、電動AWDのクロスオーバーBEVという点は共通だが、特性はそれぞれ異なっている。ソルテラは前輪駆動ベースで前輪に高出力のメインモーターを置き、後輪は補助的な役割。アリアは同じく前輪駆動ベースだが前後アクスルに同じ出力の電気モーターを設置。EX30は後輪駆動ベースで後輪モーターが主、前輪が従。

3モデル並走したわけではないのでロードテストのコンディションはバラバラ。ソルテラは強い雪の影響で路上積雪深が非常に大きい区間が長く、アリアは東北への移動を含め走行距離の9割が氷点下で最低値はマイナス11度という寒冷環境、EXは寒波が去った後積雪を求めて標高の高いエリアを駆け巡ったため高低差の累積値は最大…といった具合だった。

スバル・ソルテラAWDのリアビュー。トヨタとの共同開発車だが、ハードウェア、基本デザインは完全にトヨタ車スバル・ソルテラAWDのリアビュー。トヨタとの共同開発車だが、ハードウェア、基本デザインは完全にトヨタ車

最初に乗ったのはスバル・ソルテラ。レビューの前にモデルの概要に簡単に触れておこう。

トヨタとスバルの共同開発車で初出は2022年。開発の分担の詳細は明らかにされていないが、ハードウェアはほぼトヨタ自動車、チューニングをスバルが担当したと推察される。生産は両モデルともトヨタ元町工場(愛知)で、トヨタブランドからは細部のデザイン、装備、足まわりのチューニングなどが若干異なる兄弟モデルが『bZ4X』として販売されている。2025年10月に大規模改良を受け、航続力や急速充電受け入れ性が大幅に増強された。

ボディサイズは全長4690×全幅1860×全高1650mm。ロードテスト車は豪華装備グレードの「ET-HS」で、前に出力167kW(227ps)、後ろに88kW(120ps)の電気モーターを備える。オプションのグラストップを装備しており、車検証重量は2030kg。公称航続距離は622km。スタッドレスタイヤはヨコハマ「アイスガードiG70」。走行ルートは東京起点の東北・北陸周遊で最遠到達地点は山形県の日本海沿いの都市、鶴岡。総走行距離は1059.8km。

◆総論

【スバル ソルテラ 1000km試乗】電動AWDは雪に強いのか? 圧巻の走行性能と、浮き彫りになった「雪国での実用性」の課題【スバル ソルテラ 1000km試乗】電動AWDは雪に強いのか? 圧巻の走行性能と、浮き彫りになった「雪国での実用性」の課題

昨年10月にバッテリー容量拡張をはじめ大改修が行われたトヨタbZ4X/スバル・ソルテラ。2023年2月に400kmほどロードテストした初期型は低温環境下の電費が致命的に低く、ウィンタードライブを乗り切ることなど到底期待できないシロモノだったが、改良版は打って代わってバッテリー総容量70kWh台のモデルとしては十分以上の能力を示した。低温時の充電受け入れ性の向上には目覚ましいものがあり、3モデルの中で最も良好だった。本テストは路上積雪深が非常に大きい区間を長く含むハードなドライブとなったが、雪上走行性能も実にたくましいもので、電動AWDのメリットが十分以上に出た。

飛躍的に向上した電動パワートレインのパフォーマンスとは裏腹に冴えなかったのは車内を暖かく保つ能力、視界確保、着氷性といった雪国における実用性。雪国では走行中にクルマから降りる頻度をどれだけ少なくできるかが利便性を大きく左右するが、ソルテラはリアワイパー未装備、フロントワイパーもAピラーまわりの拭き残しが大きく氷がたまりやすいなどの弱点があり、雪落とし、氷落としのためにしょっちゅうクルマから降りる必要があった。パウダースノー区間ではかき分けた空気を上方に跳ね上げるほうが動きが安定するという定石どおりの空力設計が災いし、巻き上げた雪がフロントウインドシールドに押し寄せ、低速で走行していても走行に支障が出るほど視界が遮られるシーンも頻々とあった。

正直、雪国総合性能を謳うスバルが単独でBEVを作るのであればこうはしないだろうという部分だらけという印象で、都市型電動クロスオーバーを志向するトヨタとの共同開発の中でほとんど自社の要望を通すことが出来なかったものと推察された。4月にリリースされる共同開発モデル第2弾の電動ステーションワゴン『bZ4Xツーリング』/『トレイルシーカー』でそのあたりのノウハウがどのくらい反映されているかも興味深いところだ。

◆冬季の航続力と充電

急速充電中。低温時の充電特性は大変優れたもので、初期型とは別物のように進化していた急速充電中。低温時の充電特性は大変優れたもので、初期型とは別物のように進化していた

ではレビューに入って行こう。まずは積雪による走行抵抗増の影響を受けないドライ路面の航続力をみようと考え、東京から茨城の水戸、さらに福島のいわき、相馬と太平洋沿いのいわゆる“浜通り”を走ってみたところ相馬から阿武隈山地を越えて、スタートから356.6km先の福島市の充電スポットにバッテリー充電残3%で滑り込んだ。計算上の100%換算航続距離は368kmとなった。

ソルテラの初期型AWD、スタッドレスタイヤ装着車は気温がプラス1桁の環境で100%換算260km程度しか走れなかった。今回はその時より平均車速がずっと高かったうえ、走行区間の6割が氷点下、阿武隈山地越えではマイナス6度まで低下するというアゲインスト。同じコンディションで走った場合、初期型に5割ないしそれ以上の差をつけたことだろう。

福島市をはじめ、配備数の多い200A(公称出力90kW)充電器で複数回、30分充電してみたところ、投入電力量は36.6kWh~39.0kW、充電率の回復率は47~53%だった。ソルテラ改良版はバッテリーパックの定格電圧が初期型の355Vから391Vに上がり、同じ200Aでもより高い充電器出力が得られるようになったため、投入電力量も1割ほど増えた。

最大電流350A、公称出力150kWの超高速型充電器を使用した時の充電特性を改善したことも改良型のアピールポイント。旅の途中、新潟東部の荒川胎内で150kW充電器でのチャージを試してみた。気温マイナス2度とBEVにとってはやや厳しめの環境での充電だったが、果たしてスコアは素晴らしいものだった。

新潟・荒川胎内の最大電流350A、公称出力150kWの高速充電器を試した。15分で32kWhは400ボルトアーキテクチャのモデルとしては最速クラス新潟・荒川胎内の最大電流350A、公称出力150kWの高速充電器を試した。15分で32kWhは400ボルトアーキテクチャのモデルとしては最速クラス

充電率4%で充電を開始後、15分間の投入電力量は実に32.3kWh。eモビリティパワーが配備している充電器はケーブルの仕様上、15分経過すると電流が200A以下に抑制されてしまうためそこでいったん充電を終了。2本あるプラグのもう1本に差し替えてさらに15分間充電してみたところ、投入電力量23.0kWhが上乗せされ、充電率は79%に回復した。低温環境下において30分で投入電力量55.3kWhというスコアは定格電圧400V以下のBEVではトップグループ。作動も安定しており、150kW機に対応していたものの充電器との相性問題がシビアでしょっちゅうエラーを起こしていた初期型とは雲泥の差だった。

この時に投入された膨大な電力量は、文字通り雪まみれの様相を呈した荒川胎内~米沢~喜多方~会津田島の180.5km区間でほぼすべて使い果たしてしまった。が、見方を変えれば荒川胎内で大量のチャージができていたからこそディープスノーコンディションの中を南会津まで一気に走破できたとも言える。並のBEVであれば到底走破できなかったであろう。充電特性が優れていることが雪国でいかに有り難いかを実感した次第だった。

参考までにレグ毎の走行距離と中継充電を列記しておこう。東京を満充電で出発。

1.東京・恵比寿~福島市(福島県) 走行356.6km 充電率変化100→3% 気温マイナス3度 200A(90kW)充電器30分 投入電力量39.0kWh 充電率3→56%。以下項目同順。
2.福島市~米沢市(山形県) 46.2km 56→32% マイナス3度 125A(50kW)充電器30分 投入電力量不明 充電率32→61%。※備考:米沢での6時間ビバークテスト含む。エアコン20度、内気循環、シートヒーターONの条件で充電率8%分を消費。
3.米沢市~鶴岡市(山形県) 154.5km 61→19% マイナス1度 200A(90kW)充電器15分 16.2kWh 19→36%。※備考:充電途中で他の車両も充電を行ったため電力がシェアされ出力が低下。
4.鶴岡市~荒川胎内市(新潟) 103.7km 36→4% マイナス2度 350A(150kW)充電器15分×2 55.3kWh 4→79%。※備考:充電器出力低下回避のため15分2セット充電。
5.荒川胎内市~南会津(福島) 180.5km 79→6% マイナス8度 200A(90kW)充電器15分×2 38.4kWh 6→56%。※備考:充電器出力低下回避のため15分2セット充電。
6.南会津~宇都宮市(栃木) 101.2km 56→25% 4度 200A(90kW)充電器30分 36.6kWh 25→72%。※備考:充電前のバッテリー温度調節未作動
7.宇都宮市~東京・恵比寿 116.7km 72→42% 到着時4度。

◆信頼性の高い雪上走行性能

ソルテラのセンターコンソール上のコントロールパネル。写真左上にはスタック脱出や泥濘、深雪走行用のXモードスイッチがあるソルテラのセンターコンソール上のコントロールパネル。写真左上にはスタック脱出や泥濘、深雪走行用のXモードスイッチがある

10年に1度との触れ込みの寒気団を当て込んだドライブだったが、気温は3年前に三菱の軽BEV『eKクロスEV』のロードテストを行った時(その時も10年に1度だった)に比べると高く、強い雪雲が北陸寄りに発生したため旅の中盤までは降雪も大したことはなかった。が、全国でも有数の豪雪エリアである山形の月山界隈は十分な積雪量、そして前項で触れた新潟の荒川胎内から南会津、さらに栃木の山間部の湯西川までの区間はそれ以上に豊富な積雪と、南国鹿児島出身の雪国初心者である筆者にとっては十分にプレッシャーのかかる、そしてウィンターテストにはうってつけのコンディションだった。

そんな雪道におけるソルテラの走りはおおむね信頼に富むものだった。精密な駆動力制御が可能な電動AWDはもともと雪道や泥濘路のような路面ミューがきわめて低い状況には強いのだが、ソルテラ、アリア、EX30の3モデルはキャラクターが明確に異なる。ソルテラは最も生活四駆的なキャラクターで、ファントゥドライブな要素は最も少なかった半面、トラクションコントロールによって車体のブレを抑えたり、深雪路でのホイールの空転を極小化するといった実用性は最も高かった。

その性能が最もハードに試されたのは山形西部から福島の喜多方までの区間。米沢の手前でカーナビが遠回りの幹線ではなく山の中を通るショートカットルートを行けとリコメンドしてきた。このハイペースな降雪の中で交通量僅少の道を進んだらドツボにハマるのではないかと疑念を抱きつつも、通行止めになっていないのであればモノは試しで行ってやれ、ダメなら引き返せばいいと思って進んだのだ。

果たしてそこは想像通りの状況だった。夕刻以降まったく除雪されず、積雪は浅いところでも10cm。集落を離れた峠区間ではクルマがまったく通行しなかったようで、雪面は野生動物の足跡以外は完全フラット。深いところでは20cmを超える新雪で覆われ、撮影のためにクルマを降りることも難しいくらいだった。パウダースノーだったのでラッセルが必要なところでも車体底面がつかえて走行できないということはなかったが、南国鹿児島出身の筆者にとっては怯むに十分な状況だった。

国道113号新潟・荒川胎内~山形・米沢間にて。この日は大型車の通行量が少なかったこともあり、バージンスノー区間が多かった国道113号新潟・荒川胎内~山形・米沢間にて。この日は大型車の通行量が少なかったこともあり、バージンスノー区間が多かった

これは早々に引き返すことになるだろうと思いつつその雪原に踏み込んでみると、驚くことにソルテラはバンパー下部で雪をかき分けるようなシーンでもほとんどホイールスピンなしにゆっくりと、それでいて着実にもりもりと、ブレることなく前進を続けた。オーバーに言えば障害物を踏み越えて直進する重戦車の如しであった。

ソルテラには「Xモード」というスタックからの脱出用制御が備わっているが、それを必要としなかった。あえてXモードに入れてみたところ、スタックしていないので制御に大きな変化が生じることもなかった。わざと試す勇気はなかったが、車輪が凍結したギャップにハマりこんだりといった時にはこのXモードが役に立つのであろう。

正直なところ、道路が冠雪していなかったロードテスト序盤~中盤においては、高性能BEVらしい速さはあるものの、フィール面ではいささか退屈なクルマというのがソルテラAWDの印象だった。が、新潟の荒川胎内から内陸に向かい、栃木の日光までの、前述の新雪ロードを含むディープスノーコンディション下における安心感の高さはその印象をカバーしてあり余るものだった。

◆雪国における「実用性」は…

深雪路におけるソルテラの弱点は走行性能ではなく空力。巻き上げた粉雪がフロントウインドウに集中的にふりかかるため視界ゼロになるのだ深雪路におけるソルテラの弱点は走行性能ではなく空力。巻き上げた粉雪がフロントウインドウに集中的にふりかかるため視界ゼロになるのだ

雪をかき分けて走るという部分については非常に良いパフォーマンスを見せたソルテラAWD。これで雪国における実用性が高ければ申し分のないウィンターギアになっていたところだが、残念ながらその点はあまり良いものではなかった。

まずは寒冷地において快適性の部分。ソルテラは3モデルの中で最も寒さが身に染みるクルマだった。原因と思われたのはドアまわり。サッシュ(窓枠)の室内部分が鉄板むき出しになっており、かつその部分の断熱も甘いので、冷やされた空気が冷気の流れとなってドライバーの右頬を常時撫でるのだ。助手席側でも同じ現象があったと類推される。ドア本体も窓の下部から腰のあたりは暖かだが、足元が断熱材の切れ目になっているらしく、底冷えを感じさせた。

車体全体がザルのように熱を逃がしてしまうという設計では全然ない。ロードテスト中、気温マイナス4度の山形・米沢で仮眠がてら6時間のビバークテストをやってみたが、そのスコアはわりと優秀だった。内気循環で暖房を20度に設定し、シートヒーターONという条件で充電率44%でスタート。6時間を過ごした後の充電率は36%、変動幅は8%だった。幾度かの充電のスコアから推定した計器上の100→0%の電力量は70kWh前後。それに沿えば6時間の消費電力量は5.6kWhということになる。この数値は車体全体では熱収支がしっかりコントロールされていることを意味する。今後、サッシュとドア下部に断熱材を追加するなどの改良が加えられれば体感的な寒さも解消するだろう。

もうひとつの大きなウィークポイントは視界確保だった。前述のようにソルテラはbZ4Xと共にリアワイパーを欠く。それが雪国でどう出るかは興味のあるところだったが、弱い雪であればウインドウの熱線をONにしておけば大きな問題は生じなかった。ドライブ中盤までは案外大丈夫なのかと思ったが、後半、雪の降りが強かったり気温が極端に低かったりという状況になると様相が一変した。少しでも停止しているとあっという間にリアガラスが雪で覆われてしまい、一旦そうなると熱線はまったく無力だった。また熱線が効いている場合でも、熱線はタイマーで一定時間経つとアラートなしにいつの間にかOFFになる。そうなるといとも簡単に着氷してしまい、再び熱線を入れても視界の復活は困難だった。

ワイパーの拭き残しが大きく、Aピラー脇に形成された氷の板が視界を狭めたワイパーの拭き残しが大きく、Aピラー脇に形成された氷の板が視界を狭めた

降車してハンドワイパーやスクレーパーで除去すればいいのだが、そうなる時というのは得てして吹雪いていたり酷寒だったりするもので、ちょっとした時間でもあっという間に自分が雪だるまのようになってしまう。過去の雪国ロードテストでもしみじみ実感したことだが、そういう環境ではなるべくクルマから降りなくてもいいようにするのが親切設計。やはりリアワイパーくらいはあったほうがいい。

ワイパーのAピラーまわりの拭き残しが大きいのも思わぬ視界の妨げになった。寒冷時にはドライバー側のAピラーから5cmくらいの幅で氷の板がどんどん成形されていくのだが、これが想像以上に視界の妨げになり、わりと恐かった。デフロスターを当てたくらいでは全然解氷しないのも問題で、しまいにはワイパーがその氷の板に乗り上げるようになる。それを抜本的に解決するにはスクレーパーで氷を削るしかなく、せっかく落としても少し走るとまた同じ状況になるのも困りものだった。

新雪が厚く降り積もっているところを走った時は、平時にはクルマの走行安定性を高めてくれる空力が障害となった。10km/h少々あたりから跳ね上げた新雪がヘッドランプの光を覆い隠しはじめ、20km/hを少し超えるくらいになると新雪がフロントウインドウにどっと押し寄せてくるようになるのだ。外部から見たわけではないが、バンパー下端がはねた雪とタイヤハウスに巻き込んだ雪がないまぜになってボンネット上に流れ込んでくるようだった。走行能力はバージンスノーをモノともしないものを持っているのに自車が巻き上げる雪による視界不良で走行に著しい支障が出るというのはストレスフルだった。

山形~福島県境の国道121号線大峠にて。寒波襲来とはいえ記録的豪雪というわけでもなかったが、普通に走ってもこのくらいは着雪する山形~福島県境の国道121号線大峠にて。寒波襲来とはいえ記録的豪雪というわけでもなかったが、普通に走ってもこのくらいは着雪する

◆まとめ

スバルは日本メーカーの中でもことのほか“雪国愛”の強いメーカーである。エンジニアに北国出身者が多く、ウィンタードライブの話になるとボルテージが上がるのが常で、南国出身の筆者には想像もできないような面白いエピソードを数多く持ち合わせている。冬になると報道関係者に貸し出す広報車両に雪道でのスタックや雪落としに役立つ七つ道具を搭載し、フロアやカーゴルームのマットも耐水性のあるゴム製のものを装備。ワイパーもウィンターブレード。ここまで用意周到なメーカーはスバルだけだ。

世界に冠たる電動化技術を持つトヨタが車両設計を行い、その走りをスバルがセッティングするという組み合わせは、雪道の走行性能確保に関するかぎり、きわめて有効に機能したと思う。が、雪国での実用性確保についてはスバルが遠慮して意見を出さなかったのかはわからないが、コミュニケーションが上手く行っているようには感じられなかった。

もっともソルテラは両社の共同開発BEVの第一弾。次はもっと上手くやるであろうし、現状でも深雪地帯以外であれば寒冷時の電費の落ち幅が少ないこと、雪上や氷上における操縦安定性の高さなどの美点が生きるだろう。今後の電動化技術の更なる進化が楽しみになるロードテストだった。

【スバル ソルテラ 1000km試乗】電動AWDは雪に強いのか? 圧巻の走行性能と、浮き彫りになった「雪国での実用性」の課題【スバル ソルテラ 1000km試乗】電動AWDは雪に強いのか? 圧巻の走行性能と、浮き彫りになった「雪国での実用性」の課題

■ソルテラの冬季のパフォーマンス採点(5つ星評価)
充電、航続力:★★★★
雪上走行性能:★★★★
雪国での実用性:★
ビバーク耐性:★★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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