【トヨタ クラウンエステート 試乗】どんなシーンでも無難にこなす、“新しい”エステートのメリット…九島辰也

実態はほぼSUV、その理由は

操作系にクセなし、総合的に扱いやすい仕立て

それぞれ個性が強い16代目クラウン

トヨタ クラウンエステート(HEV)
  • トヨタ クラウンエステート(HEV)
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  • トヨタ クラウンエステート(PHEV)と九島辰也氏
  • トヨタ クラウンエステート(PHEV)
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『クラウン』が70周年を迎えた。スタートは1955年というからかなり前の話だ。これまで続いてきたのだから、まさに戦後の日本のモータリゼーションを牽引してきた一台と言えるだろう。使われ方も多岐に渡っていて、タクシーやパトカーなど公共性のある仕様も多い。ボディ形状もこれまでにクーペやエステート(ステーションワゴン)などが存在した。『ソアラ』は『クラウンクーペ』の新型として生まれた。

そんなクラウンの最も新しいモデルが登場した。16代目のクラウンクロスオーバーをメインとする4兄弟の末っ子、「エステート」である。


◆実態はほぼSUV、その理由は

はじめに言っておくと、このクルマはエステートといっても実態はほぼSUV。全高はクロスオーバー+85mmの1625mmで、4兄弟の中で一番背が高い。イメージ的にはセダンのリアをワゴンにしたステーションワゴンだと思いきやそうではないのだ。

そこを外した理由はいくつかある。16代目クラウンの信条は“新しさ”。オールドスクールな概念でステーションワゴンをつくってはコンセプトがズレてしまう。それに世の中SUVブームであり、その背景には快適な乗り心地や乗り降りのしやすさなどが人気の条件になっている。乗員のヒップポイントが高いと乗降性がいいのは言わずもがな。背が高い方がメリットは多い。

トヨタ クラウンエステート(HEV)トヨタ クラウンエステート(HEV)

物理的な理由もある。それはクラウンセダンのハイブリッド(HEV)はリアシート後方にバッテリーを、FCEVは水素タンクを積むからだ。それによりトランクスルーができないことからワゴンにならなかった。そもそもセダンとクロスオーバーではプラットフォームが異なるのだから、物理的にリアをガッツリ使える後者をベースにするのは当然の話となる。なので、クロスオーバーとエステートはホイールベースと全長が同じ。前述したように全高が+85mmになったと同時に、全幅も+40mmの1880mmになる。これで荷室容量の拡大とタイヤの大径化を実現した。

◆操作系にクセなし、総合的に扱いやすい仕立て

では4兄弟の中でのエステートのキャラクターだが、それは荷物をたくさん積んで高速道路での長距離移動を快適なものにするというもの。パワーソースのセレクトやサスペンションのセッティングがそうで、トヨタの開発陣はこのクルマを“大人のアクティブキャビン”というキャッチコピーで表現する。

パワーソースは2種類で、どちらも2.5リットル直4ガソリンエンジンをベースとする。フロントモーターの出力をクロスオーバーよりも約5割向上させたHEVと、大容量リチウムイオン電池を床下に敷き詰めたPHEVという設定だ。こちらはEV走行モード89kmとなる。駆動方式はどちらもE-Four(4WD)を採用する。

実際に走らせた印象だが、総合的にみてとても扱いやすくできている。ステアリング操作やアクセルの加減速のタッチと反応、ブレーキ操作に取り立てて説明するクセがない。今回の試乗コースは市街地、ワインディング、それと高速道路だったが、どんなシーンでも無難にこなすといった感じだ。ステアリングはセンター付近が軽くその先に重さが出てくるのは良いし、それに反応するコーナーでの姿勢もしっかり保たれる。クイックすぎないレスポンスがしっとりさを表現する。

トヨタ クラウンエステート(HEV)トヨタ クラウンエステート(HEV)

また、コーナーで感じる4WS、すなわちリアステアのセッティングが絶妙。回転半径を明らかに小さくするのだが、そこに不自然さはなく、ドライバーを軽くアシストするように働いてくれる。このリアタイヤが操舵する動きを知らなければ、ドライバーは自分の運転が上手くなった気になるかもしれない。

高速道路ではPHEVの凄さを感じ取れた。EVモードでスタートから30分後高速道での追い越しや追い抜きを繰り返してもなかなかエンジンがかからない。制限速度120km/hの新東名高速を巡航している時の話だ。その後充電がなくなりエンジンがかかった時には「ようやく」といった印象。きっとこの恩恵はオーナーになって実感するだろう。ガソリンスタンドへ行く回数は確実に減りそうだ。

トヨタ クラウンエステート(PHEV)トヨタ クラウンエステート(PHEV)

◆それぞれ個性が強い16代目クラウン

エステート以外のモデルでは、一番印象的だったのがクロスオーバー。2024年4月に年次改良したことで、走りがまるで違った。ハンドリングは軽快で、全てがスムーズに動く。各部にフリクションの無い様はまさに熟成の領域と言えるだろう。もしかしたら今トヨタブランドの中で一番フィーリングの良い走りかもしれない。

トヨタ クラウンクロスオーバートヨタ クラウンクロスオーバー

そしてそれをよりスポーティに振ったのがクラウンスポーツ。リアステアが強めなので、コーナーではまさにクルッと鼻先の向きを変える。この動きが好きという人にはバッチリな仕上がりだ。セダンをこれらとは異なるベクトルのクルマ。操作系はしっとりした味付けとなる。社用車的に使われることを前提にしている感じだ。

トヨタ クラウンスポーツトヨタ クラウンスポーツ

ということで、エステートの追加でコンプリートした16代目クラウン。それぞれ個性が強いので、少しでも迷ったらぜひ試乗してからハンコを押すことをお勧めする。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。

《九島辰也》

九島辰也

九島辰也|モータージャーナリスト 外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。

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