【テスラ モデル3 パフォーマンス 550km試乗】ランニングチェンジの進化に驚いた、スーパーチャージャーV3の実力は?

テスラ モデル3 パフォーマンスのフロントビュー。
  • テスラ モデル3 パフォーマンスのフロントビュー。
  • テスラ モデル3 パフォーマンスのリアビュー。
  • テスラ モデル3 パフォーマンスのサイドビュー。
  • Cd値は0.23。この数値はメーカーの風洞によってかなりのバラつきが出るのであまりアテにならないのだが、モデル3は速度低下の小ささからして走行抵抗が非常に小さな印象。
  • プレーンな印象だがボディの抑揚はかなり大きい。
  • 他のグレードとの識別点のひとつがこの矢車形状のホイール。赤に塗装された対向ピストンキャリパーが見える。
  • タイヤはピレリの「P ZERO ELECT」。乗り心地、静粛性、グリップパフォーマンス、インフォメーションとも非常に優れていた。
  • ドア開放。アメリカ車の常でリアドアの開閉角はそれほど大きくない。

アメリカの電気自動車メーカー、テスラのプレミアムDセグメントミッドサイズセダン『モデル3』の最速グレード「パフォーマンス」でショートツーリングを試す機会があったので、インプレッションをお届けする。

◆モデル3 パフォーマンスの長所と短所

『モデルS』、『モデルX』などの大型モデルをリリースしていたテスラがより廉価、かつサイズの小さいモデル3をリリースしたのは2017年だが、世界各地で飛ぶように売れた。現在は同ブランドの最多販売モデルの座こそクロスオーバーSUV『モデルY』に譲っているが、存在感は依然として高い。世界のメーカーがセダン縮小に走る中、モデル3の成功は異例と言うべきもので、レガシーメーカーを嘲笑するような戦術を成功させることで神話を作り上げるという、遠い昔のホンダを彷彿とさせるような戦術でブランドイメージを高めてきたテスラとしては、まさにしてやったりといったところだろう。

モデル3については過去、大容量バッテリーを搭載したAWD(4輪駆動)車の中級グレード「ロングレンジ」で東京から長崎の本土最西端、神崎鼻までドライブを行い、本コーナーで2900kmインプレッションとしてお届けしている。今回ドライブしたのは最速グレードのパフォーマンス。電動AWDや大容量バッテリーなどのパッケージはロングレンジと同じだが、後アクスルの電気モーターの最高出力、最大トルクに違いがあり、0-100km/h加速の公称値3.3秒というスーパースポーツ並みの動力性能を有するのが特徴。

ドライブルートは東京を起点とした北関東一円で総走行距離は574.7km、最遠到達値は群馬県の草津温泉。おおまかな道路比率は市街路2、郊外路4、高速2、山岳路2。路面は全線ドライ。1~2名乗車、エアコンAUTO。今回のドライブの当初目的は充電パフォーマンスをみるためで、短時間ではあるが急速充電を行った。

まずモデル3パフォーマンスの長所と短所を5つずつ列記してみよう。

テスラ モデル3 パフォーマンスのサイドビュー。テスラ モデル3 パフォーマンスのサイドビュー。

■長所
1. ほとんどのクルマを置き去りにする圧巻の動力性能。
2. ロングレンジとは別物のような素晴らしい乗り心地。
3. 新世代チャージャーを使っての充電はまさに爆速。
4. ランニングチェンジで各部の質感が大幅に向上した。
5. 居住感や先進的な操作性は依然として秀逸。

■短所
1. 半自動運転オートパイロットは依然として生煮え。
2. 中級グレードに比べるとさすがに消費電力量が多い。
3. 独自の急速充電器テスラスーパーチャージャーの拠点数が少ない。
4. 補修性の低さは保有コストの点で気になる。
5. 価格が不安定。

◆「ランニングチェンジ」で大きく変わった

白糸ハイランドウェイを走る。アンジュレーション、破損個所だらけの道だが、非常に良い足つきだった。白糸ハイランドウェイを走る。アンジュレーション、破損個所だらけの道だが、非常に良い足つきだった。

今回のドライブの最大目的は250kW充電器を使用した時の充電受け入れ性をみること。ロングレンジとパフォーマンスはクルマの構造や駆動方式に根本的な違いはないので、違いがあったとしても速いか遅い(遅くはないが)かということくらいだろうと、ライドフィールについては大して関心を抱いていなかった。

ところがドライブを始めてみると充電以外、クルマそのものに関してもいろいろ印象に残った部分が多かった。それはグレード間の差異ではなく、マイナーチェンジなど定期的な変更ではなく、モデルライフの中で適宜行うランニングチェンジによる変化である。

まず、大きな違いとして感じられたのが室内のクオリティや快適性である。2900km試乗をやったときのモデル3はステアリングに2個付いているジョグダイヤル付きの十字キーとボイスコマンドを組み合わせていろいろな車両の操作をハンズフリーで簡単に行うことができるという、いかにもデジタル世代の人材が仕様を考えたという感じのインターフェイスが新鮮かつ便利だった半面、ダッシュボード、室内のトリムなどのマテリアルは安っぽさ丸出し。テスラは見目麗しい飾り付けなど無意味という思想なのかと思ったくらいだった。

今回乗ったパフォーマンスはその点がガラリと変わっていた。以前は射出成型の縫い目もどきがついたハードプラスチックだったところがミシンによるステッチが施されたソフトパッドになっていた。スイッチ類のタッチもプラ感丸出しではなく、剛性感のあるカチッとしたものになった。細部が上質になるとダッシュボードのソフトパッド部の本来の質感が俄然生きてきたという感があった。デザインは変わっていないので写真では見分けがつかないのだが、オーナーの満足度にはかなりの違いが出るのではないかと思われた。

コクピット。初期モデルとデザインは変わっていないが、質感は大きく向上していた。コクピット。初期モデルとデザインは変わっていないが、質感は大きく向上していた。

◆安物ではなくミニマルデザインに、静粛性と乗り心地も劇的進化

モデル3のトップグレード、パフォーマンスでショートツーリングを行った目的はもっぱら最高出力250kWという高い性能を持つ急速充電器「テスラスーパーチャージャーV3」を試してみることだった。シャシーは2900km試乗記をお届けしたロングレンジと基本的に同一構造で、動力性能以外はそれほど大きな違いはないはずと考えていたのだ。が、乗ってみると急速充電以外にも興味深い部分が多々みられた。

驚かされた部分は静的、動的両面の質感が大幅に上がっていたこと。以前のロングレンジの室内はインターフェイスの先進性に関しては一般的なクルマと区別して考える必要があるというくらいに高かったが、マテリアルの質感についてはグローバルDセグメントの中ではビリを争うと思しき低さで、そもそもテスラは加飾に興味がないのかと思ったくらいだった。

ところが今回のパフォーマンスはデザイン不変なまま、タッチや見た目の質感が大幅に向上しており、これなら安物ではなくミニマルデザインと言えるという印象を抱いた。窓ガラスも全周、樹脂層をサンドイッチした二重になっており、静粛性向上に大いに寄与していた。パフォーマンスが特別なのかと思ってドライブ終了時にテスラジャパン関係者にきいてみたが、ランニングチェンジでグレード問わずこういう仕様になったのだという。

もう一点、印象深かったのは静粛性と乗り心地の向上。これも結構な劇的進化であった。2020年時点でも静粛性は高いと思っていたが、現在のものは外部からの騒音の侵入がその場で乗り較べなくてもわかるくらい少なくなっていた。ドライブ後にテスラジャパン関係者にきいてみたところ、ランニングチェンジで全周、樹脂層を挟んだ二重窓になったとのことで、それの貢献度が大であるものと思われた。試乗時は暑い季節ではなかったが、太陽光を浴びたときの熱の伝わり感からグラストップの断熱性能も少なからず向上をみているような印象を受けた。

◆タイヤの恩恵か、弱点だったハーシュネスを克服

タイヤはピレリの「P ZERO ELECT」。乗り心地、静粛性、グリップパフォーマンス、インフォメーションとも非常に優れていた。タイヤはピレリの「P ZERO ELECT」。乗り心地、静粛性、グリップパフォーマンス、インフォメーションとも非常に優れていた。

室外から侵入する騒音の低減と並んで静かになったと思ったのはロードノイズ。荒れ放題の路面がある意味特徴的な軽井沢北方の有料道路、白糸ハイランドウェイのようなところでもガーガーという耳障りな騒音の発生は非常に小さく、低く抑制されたゴーッという音に終始していた。

騒音だけでなくハーシュネスも激減した。2900kmツーリングを行ったロングレンジは全般的に素晴らしい動的質感を示す中で弱点として気になったのがハーシュネスの強さだった。エッジが立った舗装の破損箇所を踏んでもガチンという衝撃にならず、ゴロゴロという感じのスッキリした振動に変換されて室内に伝わってくる。

これは235/35R20サイズのピレリ「P ZERO ELECT」タイヤの恩恵によるところが大きいものと推察された。名前から察しがつくように電動車用に開発されたタイヤだが、静粛性といい当たりの柔らかさといい、いかにも新世代タイヤという印象だった。もちろんグリップも強力だった。ロングレンジも2019年に試験導入されたコンチネンタルタイヤを履く個体を参考試乗した時には十分柔らかだった。とどのつまり、サイドウォールのハードなハンコック「VENTUS S1 evo3」がテスラの足にあまり合っていなかったということなのだろう。

そんなピレリの電動車用ハイパフォーマンスタイヤを履いたパフォーマンスの速力は、プレミアムDセグメントとしても屈指の凄まじさだった。電動AWDのしつけはきわめて精密で、自社生産モデルを初めて世に問うてから10年かそこらという新参メーカーであることをまったく感じさせない。コーナリング中に前後の電気モーターの発生トルクを制御することで車体の姿勢を積極的にコントロールするが、その制御は実にナチュラルかつ妥当性の高いものだった。

他のグレードとの識別点のひとつがこの矢車形状のホイール。赤に塗装された対向ピストンキャリパーが見える。他のグレードとの識別点のひとつがこの矢車形状のホイール。赤に塗装された対向ピストンキャリパーが見える。

◆動力性能は圧倒的、「オートパイロット」の精度は…

ロングレンジのテストドライブの時も感じたのだが、CAE(コンピュータ支援設計)が発達した今日ではクルマをどう動かせば人間にとってより心地良いかという、機械と人間の感覚の橋渡しができるキーマンさえいれば、まるで何十年もスポーツサルーン作りに情熱を傾けてきたかのようなテイストのクルマを作れてしまう時代なのだ。レガシーメーカーにとっては秘伝のタレのようなものばかりに寄りかかっていると早晩存在価値を喪失してしまいかねない。とりわけプレミアム系のメーカーはプレッシャーを感じるところであろう。

動力性能はこれ以上はもうスーパースポーツが発進をミスらなかったときくらいしか出せないというくらいのレベルだった。GPSロガーを使用した実速度ベースの0-100km/h(メーター読み101km/h)加速タイムは3.4秒。カタログスペックとほぼ同じ値を特別なローンチテクニックを使わずともアクセルペダルひとつでポンと出せてしまうのはなかなか大したものである。

一方、テスラが売りとしている半自動運転機能「オートパイロット」はロングレンジ2900km試乗の時よりは進化していたものの、クルマによる自律走行をアテにできるほどの精度は依然として持ち合わせていなかった。アメリカ、カナダなどでモデル3のオートパイロットに運転を任せて車内で寝ていてパトカーに御用というニュースが時折流れてくる。日本とは道路状況が異なるのだろうが、この程度の熟成でよくこのシステムに命を預ける気になるなというのが率直な感想。

普通のADASとして使っていても、高速で大型車を抜いてから走行車線に戻るさい、車間距離を相当長く取れるような状況でないとアラートが鳴ってレーンチェンジを阻止するような動きが出る。600km足らずのドライブでは制御のクセをつかむことは期し難い。機会があれば再チャレンジしてみたいところである。

◆テスラスーパーチャージャーV3を試す

最高出力250kWのテスラスーパーチャージャーV3を試す。最高出力250kWのテスラスーパーチャージャーV3を試す。

2012年のラージクラスセダン・モデルS以降、テスラが金看板としてきたのは航続距離と急速充電受け入れ性の高さ。モデル3ロングレンジの2900kmロードテストにおける最長無充電走行距離は469.7km。東京を出発後、愛知・名古屋、岡山・倉敷と急速充電を2回行った時点でもう福岡に届くだけの航続性能があり、BEV(バッテリー式電気自動車)が苦手とする高速性能も帰路、名古屋から真夜中の新東名の最も速い流れに乗りつつ東京まで余裕で無充電でたどり着けるくらいの高さを示した。

経路充電で最も使える充電器は言うまでもなく専用機のテスラスーパーチャージャーだが、2900km試乗時は最高出力135kWの「V2」が最も速い機材で、最高出力250kWの「V3」が日本に搭乗したのは2020年冬。250kWといえば、その最高出力がずっと続けば1時間に250kWhもの電力量を送り込めることを意味する。リチウムイオン電池はずっと大電流を流し続けることはできないのでそれは非現実的だが、10分の1の6分でも25kWhだ。

そんなテスラスーパーチャージャーV3の実際の挙動をみるというのがこのドライブの最大目的。と言ってもショートドライブゆえ、とりあえず一発勝負とみてドライブを開始。満充電で東京を出発後、国道新4号を北上した後に北関東道経由で軽井沢に達し、そこで昼食。その後、白糸ハイランドウェイ、鬼押ハイウェイなどの観光道路を通りながら標高1200mの草津温泉に到達。共同浴場で久々にピリピリ来る酸性硫黄泉を堪能した。

帰路は高速には乗らず、栃木・佐野でラーメンを食べつつ超高速タイプのテスラスーパーチャージャーV3がある埼玉・鳩ケ谷に向かった。が、スタート後395.7km走行して佐野に到着した時点で航続残予想値が64kmまで低下していたため、不本意ながら佐野アウトレットモールにあるテスラスーパーチャージャーで中継充電することにした。インフォメーションディスプレイ上の電力量消費率は159W/km、日本での一般的な表記に直すと6.3km/kWh、計算上の消費電力量は62.8kWh。

佐野アウトレットモールのスーパーチャージャーは旧世代のV2で公称最高出力は130kW。充電中、ディスプレイに示される入力値は充電開始直後の119kWから最大126kWの間で推移。12分後、入力値122kWでフィニッシュした時の充電電力量は24kWh。電力量消費率6km/kWhなら144km、7km/kWhなら168km、8km/kWhなら192km。旧世代機とはいえ、12分でこれだけの実効速度が出るというのは素晴らしい。

日本のCHAdeMO規格充電器もここ数年で90kW、100kWをうたうものが増加し、150kWを標榜するものも登場している。が、日本の充電器のパワー表示はあくまで最大電圧(450ボルトないし500ボルト)×電流で計算される理論値であって、実際にはそれだけのスピードは出ない。たとえば90kW充電器でも充電電圧が370ボルトなら370ボルト×200アンペア=74kWどまり。性能をうたう以上はそれをきっちり出していただきたいところだ。

◆250kW充電にちょっと感動…だったものの

受電電力250kWの表示はさすがに感動的。CHAdeMO充電器の最速機器(350アンペア/150kW)に対して実効速度で約2倍。受電電力250kWの表示はさすがに感動的。CHAdeMO充電器の最速機器(350アンペア/150kW)に対して実効速度で約2倍。

V3の場合はどうか。バッテリー充電率が高いと充電速度が落ちるので回り道などをして余分に走行し、バッテリー充電率17%で鳩ケ谷のテスラスーパーチャージャーに滑り込んだ。本来はもっと減らしたかったのだが、そういう試験はまた今度と見切ってとりあえず充電してみることにした。プラグをクルマに接続して充電開始するとディスプレイに先の佐野のスーパーチャージャーの倍速、250kWの数値が表示された。ベストエフォートでなく実際の充電で250kW出るというのは掛け値なしにすごい。ちょっと感動である。

このまま倍速充電が続けば大したものなのだが、さすがにそれは甘かった。250kW充電の時間はごく短い。充電率1桁%スタートだともう少し粘る可能性もあるが、17%スタートだと継続時間は1分少々、スタート3分後には200kWを切った。佐野で12分を要した24kWhの充電にかかった時間は8分30秒と、1.4倍速相当。充電率50%でフィニッシュした時の入力値は103kW、充電電力量26kWhだった。

世界では超急速充電規格が続々登場しており、テスラも今後のBEVのメインストリームとなるであろう800ボルトアーキテクチャを視野に入れた新世代充電器「V4」のリリースに取りかかっている。が、電気化学の技術革新の現状を見るに、固体電解質タイプを含めたリチウムイオン電池の性能向上の遅れから、それらの充電規格が出てきてもクルマの側がそれを生かせるような充電受け入れ性を持つのは難しいというのが実情だろう。

充電業者が充電サービス提供で継続的に利益を上げられるよう電気代に経費とマージンを乗せ、利用者のほうもその価格を十分アフォーダブルと認識するようになると思われる「5分で50kW前後」というラインはいまだ、見えないくらい遠いところにある。果てしなく困難だが、その壁を突破できなければBEVはビジネスとしてサスティナビリティを持てない。その突破力を期待できる一極として、テスラにも大いに頑張っていただきたいところだ。

北関東を巡る走行距離574.7kmの小旅行。通算電力量消費率160W/km(6.3km/kWh)は超高性能車というキャラクターを考えればエクセレントの一言。北関東を巡る走行距離574.7kmの小旅行。通算電力量消費率160W/km(6.3km/kWh)は超高性能車というキャラクターを考えればエクセレントの一言。

◆合うか合わないかは「BEVの是非」よりも「地域性」の問題

モデル3パフォーマンスはRWD(後輪駆動)の「スタンダードプラス」、AWDのロングレンジが実用車としてのプレミアムDセグメントであるのに対し、クルマとしての機能ではなく0-100km/h加速の実測値が3.4秒というバカバカしいくらいの速さを付加したモデル。ロングレンジでも0-100km/h加速は4.2秒と十分すぎるほど速かったので、必要ないといえば必要ない。が、テスラというブランドは常識人の鎧である正論、綺麗事をブチ砕くような、本能を直接刺激するクルマを作ることで信奉者を増やしてきた。その観点ではパフォーマンスこそが最もテスラらしいモデル3ということになるし、実際にドライブしていてもそのように感じられた。

絶対性能とともに印象的だったのは、短期間での品質向上の幅。元が低かったので伸びしろが大きいということを考慮しても、これだけこまめに逐次改良を行うというのはなかなかないこと。日本へのローカライズが真面目に行われているとは思えなかったインフォマティックスについても、以前はナビの”今左折です”と音声案内するとき「コンサセツデス」などと発声していたが、ちゃんと「イマサセツデス」に直されていた。今後も品質上がっていけば、弱点として残るのはいずれ衝突などで損傷したときの補修性の悪さ、言い換えると修理費の高額さくらいになっていくだろう。

一方、最大出力250kWのテスラスーパーチャージャーV3を用いた充電については、CHAdeMO充電器と比べるとアドバンテージは圧倒的なものの、充電器側の性能をしっかり生かせているとは到底言い難かったのも事実。これはバッテリー搭載容量がせいぜい100kWh以下というBEV乗用車の限界というべきもの。内部抵抗が安定して小さい、セルにかけられる限界電圧が飛躍的に上がる等、バッテリーに関する大きなブレイクスルーが起こらないかぎり、状況はあまり変わらないだろう。

もっともユーザー目線では現状の性能でもマイカーをBEVにして大丈夫かと心配をそれほどせずにすむだけのものにはなってきているとも思う。それは2900kmドライブをやってみたロングレンジ、そして今回のパフォーマンスとも同じことだ。モデル3が合うか合わないかはBEVの是非より地域性の問題が大きい。関東~東海~関西という日本の“大動脈部”には長距離移動でもそれほど困らないくらいの密度のテスラスーパーチャージャーが設置されているが、九州、東北、北海道、山陰などは希薄も希薄。もちろんアダプターを使用すればCHAdeMO充電器も使えるのだが、それではテスラのうまみがない。今後、充電網がどのように拡充されていくかは興味深いところだ。

テスラ モデル3 パフォーマンスのリアビュー。テスラ モデル3 パフォーマンスのリアビュー。
《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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