“プレミアム・スモール・コンパクト・セグメントにおけるエレガントな4ドアクーペ”が、このBMW『2シリーズグランクーペ』の位置づけ。現行モデルはその2代目で、FFが基本の『1シリーズ』とコンポーネントを共用した成り立ちは初代と同様だ。
BMWの“グランクーペ”というと、遡れば『6シリーズ』『4シリーズ』で展開が始まった、4ドアの実用性を備えながらクーペの優雅さ、パーソナル性を加味したバリエーション。その味わいを実現したのが、身近な1シリーズをベースとした、この2シリーズグランクーペという訳だ。
◆全幅1800mmに抑えたコンパクトボディ
BMW 2シリーズ グランクーペ(M235 xDrive Gran Coupe)ところでこの2シリーズグランクーペについてBMWがアピールすることのひとつが、先代同様、全幅が1800mmに抑えられている点。少々乱暴だが現行のMINI『カントリーマン』が1845mmの全幅をもつ(その他のMINIは1755mm)ことに照らせば、確かにコンパクト。実際にもクルマに乗り込んだ際、理屈ではなく肌感覚でコンパクトサイズであることが実感でき、ボディサイズを負担に感じなくて済むところは馴染みやすい。
デザインは先代を基本的に踏襲していて、サッシュレスの前後ドアはグランクーペの特徴のひとつ。非常に細かなチェックながら、ウインドゥグラフィックの後端部分が、アーチを下ろしてきて最後に前方に折り返す(あるいはベルトラインが跳ね上がる)、より純粋なホフマイスター・キンクに戻ったように見える(?)点は、個人的には、やはりBMWらしいと思える部分。
BMW 2シリーズ グランクーペ(M235 xDrive Gran Coupe)
◆キャラクターに合ったシンプルなインテリア
他方でインテリアは眼前に単なる長方形ではく6角形に縁取られたカーブドディスプレイが採用されたほか、シフト操作も新型ではしっかりした造りのスイッチを前後に動かす方式に。インパネまわりは全体にあっさりとシンプルにまとめられ、クルマのキャラクターに合っている。
居住空間はこのクルマがクーペであることを認識させるもので、とくに後席はドア開口を意識しながら頭を移動させての乗り込みと、座った際のやや起こされた背もたれを実感。頭上空間は天井を凹ませてある。
BMW 2シリーズ グランクーペ(M235 xDrive Gran Coupe)◆3タイプを試乗、「M235」はさすがの別格
短時間ずつながら試乗は、「220 Gran Coupe M Sport」、「220d Gran Coupe M Sport」、そして「M235 xDrive Gran Coupe」の3台を試した。総じていえるのは、この新型も先代と同じように2シリーズグランクーペらしい軽快さを保たせながら、よりしなやかな挙動が加味された……といったところか。
印象的なのはシリーズを通して感じられるステアリングを切るとただちに感じられる敏捷なクルマの反応で、決して過敏で気を遣うことはないが、2シリーズグランクーペを走らせる時の気持ちよさの根底がそこにあると思う。
BMW 2シリーズ グランクーペ試乗した3タイプはパワートレインの違いに応じた走りをモノにしており、パワー感でいうと1.5リットル・3気筒ターボの220は軽妙さ、2リットル・4気筒ディーゼルターボの220dは柔軟な懐の深さが味わえた。
その2台に対してM235 xDriveはさすがに別格。一般道では味見程度に留まったが、300ps/40.8kgmの直4ツインスクロールターボ+7速DCTと、xDrive(4WD)、高剛性ボディおよびサスペンションに支えられ、このクルマのスペックは少なくともワインディングロードなど然るべき場所で堪能すべき……と思わせられるものになっている。
BMW 2シリーズ グランクーペ(M235 xDrive Gran Coupe)■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。










