【シトロエン C4ハイブリッド 新型試乗】ハイドロ系ダンパーでも「薄味」なシトロエン…中村孝仁

シトロエン C4ハイブリッド
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ステランティス、BセグメントSUV4兄弟の一角、シトロエン『C4ハイブリッド』。過去、常に個性的なクルマ作りでコアなファン層を日本で築き上げたシトロエンの最新作である。

【画像】シトロエン C4ハイブリッド

既に他のモデルの試乗でも指摘したが、4兄弟、即ちフィアット、プジョー、アルファロメオ、そしてこのシトロエンが、BセグメントのハイブリッドSUVとして投入したモデル群は、いずれもPSA時代のCMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)と、これまたPSA時代の3気筒ピュアテック1.2リットルエンジンに、モーターを組み込んだ6速DCTのドライブトレーンを共有するモデル群だ。

これらのモデル群の中で、ボディサイズが一番大きいのがシトロエンである。それは同時にクルマの性格も表しており、長いホイールベースはとりわけ後席の広さを強調し、ゆったりとしたファミリーサルーン的(SUV的でない)仕上がりを見せて、他のモデル群とはかなり異質な存在となっている。

◆乗り味は「薄味のシトロエン」

シトロエンといえば、やはり気になるのはその乗り心地と快適性だ。この点に関して、4兄弟の中で最もハードな乗り味を見せるアルファロメオから車両を乗り換えた時は、さすがシトロエン!最高の乗り心地…と感じたものである。個人的には過去に4台のシトロエンを乗り継ぎ(今も乗っているが)、そのうちの2台がハイドロ系のサスペンションを持ったモデルで、その極上の快適さにほれ込んでいた、ある意味シトロエン党である私にとって、この乗り心地の良さは、シトロエンをチョイスさせる最も大きな原動力であった。

試乗していないプジョー『2008』はともかくとして、他の3兄弟の中ではこの乗り心地は図抜けて良いものと感じたのだが、数日試乗をして返却の後、某国産車(それも最新の)に乗り換えたところ、実はシトロエンC4の乗り心地は図抜けて良いとは言えないレベルに収まったいたことを痛感し、少なからずショックを受けた。

間違いなく乗り心地は良いのだが、まあ上の部類程度で、極上とは言い難い。同じCMPのプラットフォームではあるけれど、C4にはPHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)という、かつての魔法の絨毯を彷彿させる、ハイドロ系の乗り味を再現したダンパーを組み込んでいるから、他の兄弟たちとは明らか一線を画していることは事実なのだけれど、技術の進化は他の追従を許している印象を否めず、PHCをもってしても、図抜けた快適さを得るには至っていない。そうした意味では「薄味のシトロエン」である。

◆日本車ならあり得ない? アバウトさがチラホラ

パクった側とパクられた側という、少し物騒な表現をさせて頂くなら、PSA側、即ちプジョーとシトロエンはパクった側。そしてフィアット、アルファロメオの元FCA勢は、ある意味ではパクられた側で、その現実はプラットフォームやドライブトレーンに現れていると思うのだけれど、いずれの場合もラテン系で考えることはそう大きく変わっていない。

ここに気質という言葉を重ねてみると、日本じゃまずあり得ないだろ!というアバウトさがクルマに現れている。ほんの一例を紹介すると、ハイブリッドといって、シトロエンのホームページには「モーターファン・illustrated」誌の技術解説が掲載され、「48Vを印加されるとモーターとして働きエンジンを始動させる。また、エンジン停止時の振動抑制を図り、わずかなトルクを発生させて振動をキャンセルする制御も盛り込まれた。(原文そのまま)」とあるが、エンジン停止、そして再始動時の振動はこれで抑制したのか?と思うほど個人的には過大に感じるし、そもそもアイドルストップの時間は短すぎて、信号待ちの間に何度も再始動、再停止を繰り返すのはいかがなものかと思うわけである。

執筆現在試乗している某国産車の場合、よほど長い信号待ちでない限り、アイドルストップはきっちりと信号待ちの間中行われ、エンジンの気筒数が違うから振動もそれなりに抑制されているとはいえ、始動時、停止時の振動は圧倒的に少ない。正直な話、軽自動車の3気筒エンジンの再始動だってここまで振動が出ることはない。つまり、これがラテン系のクルマ作りで、この辺りは正直意に介していないのではないかと感じる。

◆ヨーロッパ製コンパクトカーの良いところ

とまぁ、動力源に関する不満は辛口になってしまうが、ヨーロッパ製コンパクトカーの良いところはその運動性能にあって、ロールはするものの、ヒラリ感とその時の安定感は、やはり一日の長があると(ヨーロッパに)感じさせる。長時間乗っても疲れないというのも大きな特徴で、これはシートも貢献しているのだと思うけれど、特にフランス車が伝統的に強い側面ではないかと感じる。

4兄弟の中で特に目についたのは物入の多さ。コドラの前にはタブレットを固定するトレイに始まり、車検証入れの引き出し、さらにその下にグローブボックスを備え、センターコンソールには、充電トレイの下にちょっとしたものを置くスペースと、さらにその下にも収納ボックスが控えているなど、細かいものを隠すスペースに事欠かない。

価格は448万円(車両本体価格)。試乗車はドラレコやETCなどのオプションを含み、464万0570円であった。試乗した3車(シトロエン、アルファ、フィアット)の中では中間に位置する。

細かい仕様で良いと感じた点は、例えばエアコンの設定スイッチに頻繁に使う可能性の高いスイッチだけを、大きなつまみの物理スイッチで残している点。逆に少しネガと感じたのは、背もたれと座面高は電動でアジャストできるのに、前後スライドだけ手動式となるのはこれもラテン的考え方なのか、個人的には意味不明であった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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