マセラティのギュンターがフォーミュラE東京大会初代ウイナーに輝く…日産のローランドが2位

東京E-Prixの表彰式。初代優勝者はマキシミリアン・ギュンター。 (c) Formula E
  • 東京E-Prixの表彰式。初代優勝者はマキシミリアン・ギュンター。 (c) Formula E
  • 優勝の#7 ギュンター(マセラティ)。 (c) Formula E
  • 記者たちの質問に笑顔で答える優勝者ギュンター。 (c) Formula E
  • 2位の#22 ローランド(日産)。 (c) Formula E
  • 2位の#22 ローランド(日産)。 (c) Formula E
  • 3位の#1 デニス(アンドレッティ)。 (c) Formula E
  • #37 キャシディ(ジャガー)は後方グリッド発進から入賞を果たした。 (c) Formula E
  • チームの母国戦でポールポジションを獲得したオリバー・ローランド(日産)。 (c) Formula E

3月30日(土)、フォーミュラEのシーズン10・第5戦、日本初開催の「2024 東京E-Prix」が東京ビッグサイト周辺特設コースにて実施され、東京大会初代ウイナーの座をマキシミリアン・ギュンター(マセラティ)が射止めた。日産のオリバー・ローランドが2位。

◆予選では日産のローランドがポールポジションを獲得

前日(29日)にフリー走行1回目があるなどしたが、フォーミュラEは(観客イベントとしては)あくまで単日開催。この日(30日)は朝8時からのフリー走行2回目で幕開けとなり、予選、決勝レースへとタイムスケジュールが進んでいく。好天に恵まれ、(個人差あるだろうが)暑いくらいの一日でもあった。

フリー走行2回目ではタイム水準が(予想通り)前日より上がり、トップタイムベースで約1.5秒の短縮が成された。1番時計は#9 ミッチ・エバンス(JAGUAR TCS RACING)がマークした1分19秒339。全22台がおよそ1.8秒差以内に入っている。

続いては10時20分からの予選だ。まずは11人ずつA、B組にわかれてのグループ予選が行なわれ、ここで各組上位4人に入ると、1対1の対決方式(Duels)のポールポジション争いに進むことができる。この独特の方式の予選を制してポールポジションを獲得したのは、チームの母国レースに臨んでいる#22 オリバー・ローランド(NISSAN FORMULA E TEAM)だった。

グループ予選をA組1位で終えた#22 ローランドは、Duelsに入っても準々決勝、準決勝と、同じ組で自身よりグループ下位だった相手たちを順当に下して決勝進出。決勝の相手は、やはりB組1位から勝ち上がってきた#7 マキシミリアン・ギュンター(MASERATI MSG RACING)となった。この頂上対決に勝利して、#22 ローランドは日産を東京初開催戦のポールポジションへと導いたのである。チームの期待に応える見事な仕事ぶりと評せるだろう。

なお、予選セッション中の最速ラップタイムはDuels準決勝でローランドがマークした1分18秒855(決勝レースではこれより速いタイムは確認されていない)。

ポイントリーダーとしてここを迎えた、日本での活躍歴も長い#37 ニック・キャシディ(JAGUAR TCS RACING)はA組のグループ予選でDuels進出を決めたと思われたのだが、終了後、技術的な違反があったとしてタイムの取り消しに遭い、順位降格、ポールポジション争い(Duels)に加わることができなかった。#37 キャシディは決勝レースを19番グリッドから戦う。

◆ローランドが支配的にレースを進めていくが…

走行セッションの合間には著名ミュージシャンらのライヴも続々と開催、予選と決勝レースの間にはドライバーがピットレーンでオートグラフ・セッションに臨むなど、レースだけじゃないフォーミュラEの側面も東京初開催で多くのファンが実感することになっただろう。

決勝レース前のコース上には、主催サイドの自治体首長である小池百合子都知事のみならず、岸田文雄首相も登場。東京E-Prixというイベントの波及力の高さを感じさせた。

そして午後3時過ぎ、ついに決勝レースがスタート(スタンディングスタート)。

各選手、一時的にパワーレベルを上げられるアタックモードの使用(ターン4にある遠回りのアクティベーションゾーンを通るなどの条件あり)が戦略面のカギにもなる33周の戦いに向けて走り出した(フォーミュラEは途中、セーフティカー導入等の影響があった場合にラップ追加があり、今回は最終的に35周レースとなった。1時間弱でゴール)。

3番グリッドから好加速を見せた#48 エドアルド・モルタラ(MAHINDRA RACING)が首位をうかがうも、#22 ローランドがトップをキープしてレースを始める。#48 モルタラが続き、セカンドグリッド発進だった#7 ギュンターが3番手。レース前半は皆がエネルギーコントロールをしていたのか、僅差のまま長い隊列を形成する展開になった。

中盤になるとレースも動き出してきて、マシンの動きにも徐々に派手さが見られるようになってくる。セクター1の“ジャンプスポット”でも跳び幅がさらに大きく!? 今回のレースは赤旗中断になるような大きなアクシデントはなく、比較的順調に推移した。そしてレース後半、25周目にトップ争いのクライマックスがやってくる。

この段階で2番手を走っていた#7 ギュンターが、“裏ストレート”の後半(ターン9~10)で#22 ローランドをオーバーテイクして首位に浮上。その後、最終盤には#22 ローランドが日産の母国勝利に向けて逆襲をしかけてくるが、#7 ギュンターは耐え切って先頭ゴールを果たした。

◆勝ったのはマセラティのギュンター、日産は母国勝利ならず

東京E-Prix初代ウイナーの座に輝いたのは、#7 ギュンターとマセラティだった。地元・日産のポール・トゥ・ウインというストーリーが惜しくも砕けたところに、レースの難しさと面白さが凝縮されていたような一戦だった。

マキシミリアン・ギュンター(ドイツ、26歳)は今季初優勝。これで今季は5戦を終えて全戦優勝者が違うという群雄割拠の様相となっている。ここから誰が抜け出すか。ギュンターはポイントランキング5位、首位とは15点差の位置だ。

ギュンターは「ここでレースをできたことが素晴らしい。とてもナイスな街であり、ナイスな国だ。その文化が好きだし、とても歓迎してもらうことができた。そして東京最初のウイナーに……。この週末、僕たちのチームが成し遂げたことは、本当に誇れることだと思うよ」との旨を語り、喜びの大きさを示している。

レースを支配的に進めていった#22 ローランドは決勝2位。しかしこれで3戦連続の表彰台(3位、3位、2位)であり、今の安定感はなかなかのものだ。重圧かかるなかでのポール・トゥ・2位は充分以上の成果ともいえるだろう。

決勝3位には前年王者の#1 ジェイク・デニス(ANDRETTI FORMULA E)が入った。#48 モルタラは6番手ゴールの後、失格に。決勝4位は#13 アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(DS PENSKE)、同5位は#94 パスカル・ウェーレイン(TAG HEUER PORSCHE FORMULA E TEAM)。

#37 キャシディはレース終了後の段階で7位か8位という状況(他車のペナルティ等に動向が左右されている模様)。グリッド位置から10ポジション以上アップしての入賞に、「レースには満足しているよ。素晴らしい東京大会だった」と語っている。

◆盛大な表彰式でメモリアルデイに幕

ファンと一体になっての大々的なポディウム・セレモニーもフォーミュラEの特徴だ。3選手には万来のファンから大きな喝采が浴びせられた。この日は「アリアンツ・ファンビレッジ」が無料解放されており、“プラチナ化”した観戦チケットを入手できなかったファンもここでレースのパブリックビューイング等を楽しむことができたようだ(当日発表の総観衆は2万人)。

日本のモータースポーツ史における記念碑的な一日となった2024年3月30日。東京E-Prixは初代優勝者としてマキシミリアン・ギュンターとマセラティの名を刻み、濃厚な一日を終幕したのであった。今後の発展にも期待がかかる。

フォーミュラE・シーズン10は次戦、イタリアのミサノへと転戦(4月13~14日に第6~7戦として連戦開催)。なお、来季シーズン11においても東京戦の実施が企図されており、今度は5月(2025年)の開催になると見込まれている。

(*本稿におけるレース結果等は30日午後5時頃の段階での情報によるもの。一部に手元確認の情報も含まれる)


> フォーミュラE 東京初開催を振り返る
独特の予選方式は新鮮味大、やはり待たれるのは日本人選手の参戦
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《遠藤俊幸》

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