【VW ティグアン 4000km試乗】「SUVの皮を被ったGT」地味ながらフットワークは卓越のきわみ[後編]

2021年に日本デビューしたティグアンの改良モデル。地味っ子SUVというキャラクターは不変だが、細部が若干華やかになった。
  • 2021年に日本デビューしたティグアンの改良モデル。地味っ子SUVというキャラクターは不変だが、細部が若干華やかになった。
  • 改良前のティグアン。きわめて地味だがメカニズム的にはアウディ『Q3』と大して変わらず、高性能だ。
  • 改良版ティグアン。最低地上高180mmはオフロードでは最低限のクリアランス。
  • 改良版ティグアンのロードテスト車はFWD(前輪駆動)のR-Lineだった。ワイドタイヤ+FWDだとオフロードにおいてはさすがにトラクションが少々厳しくなる。
  • 改良前ティグアンのフェイス。どこまで地味に作れるかトライしたという顔。
  • 改良型ティグアンの中級グレード以上には可変配光型のアクティブハイビームが付く。
  • アクティブハイビームに付けられたIQ.LIGHTの文字。自動運転に向かう技術にはIQ.の接頭辞を付ける方針らしい。
  • 改良型ティグアンのフェイス。ラジエータグリルのメッキ部が細く、開口面積はワイドに。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーSUV『ティグアン』の改良前ターボディーゼル「TDI 4MOTION Highline(TDI 4モーション ハイライン)」、改良後のガソリン「TSI R-Line(TSI Rライン)」を計4000kmほど走らせる機会があったのでインプレッションをお届けする。

前編では走行性能や乗り心地について述べた。後編ではパワートレイン、ユーティリティ、電子装備などに触れていきたいと思う。

足まわりとは裏腹に「のんびりクルーズ型」だが

改良版ティグアン。最低地上高180mmはオフロードでは最低限のクリアランス。改良版ティグアン。最低地上高180mmはオフロードでは最低限のクリアランス。

改良型ティグアンの目玉のひとつはガソリン版パワートレインが刷新されたこと。エンジンは従来型の1.4リットル直噴ターボTSIを改良して作られた1.5リットル直噴ターボ。DCT(デュアルクラッチ変速機)も前進6段から前進7段へとステップが増えた。

新エンジンのスペックは最高出力110kW(150ps)、最大トルク250Nm(25.5kgm)、それぞれの発生回転数とも改良前とまったく同一。低負荷時に4気筒のうち2気筒を休止させる機構が組み込まれるのも同じだ。排気量を増やしたのは熱効率向上に寄与する低圧縮高膨張のミラーサイクル運転を行うためである。

7速DCTは『ゴルフ』などの軽量車に使われる乾式クラッチ型ではなく、高容量の湿式クラッチ型。湿式クラッチは乾式に比べて伝達効率で劣る半面、耐久性に優れ、高容量のものを作りやすいという特徴がある。最大トルク250Nmとディーゼルに比べて低トルクでありながら湿式としたのは、低車高ハッチバック車に比べてウェイトが大きいことや、ヨーロッパではトレーラーハウスなどのトーイング(牽引)に使われることが多いことを考慮したものと推察される。

実際にドライブしてみての印象だが、足まわりがさながら「SUVの皮を被ったGT」のごとく逞しかったのとは対照的に、大変まろやかなフィールであった。DCTはスポーツ、ノーマル、エコの3モードを持つが、このうちノーマルとエコは締結されるギア段が高いか低いかの違いはあれど一旦クルーズに入ると締結段を維持しようとする点は同じという、ヨーロッパのユーザー好みの変速プログラムだった。

改良版ティグアンのサイドビュー。至ってプレーンな仕上がりだ。改良版ティグアンのサイドビュー。至ってプレーンな仕上がりだ。

新エンジンはその変速との相性バッチリ。クルーズ状態から加速に移行するさい結構深く踏み込むまでシフトダウンせず、そのギア段のままトルクがすーっと盛り上がってふわりとスピードが上がる。エンジン回転数と車速が比例する有段変速機のリニア感と変速の段付きがないCVTの滑らかさの良いとこ取りをしたような感じである。

過渡領域の最高出力は馬力で言うと2000rpmで72ps、3000rpmで105ps、4000rpmで140ps弱。4000rpmラインまでのパフォーマンスは大体2.5リットルに相当する。今のダウンサイジングターボは性能曲線的には大体こういう感じなのだが、このエンジンの優れていたところはアクセルを踏んだ瞬間のブーストの立ち上がりがきわめて素早いことと、スロットルの踏み込み量とトルク増大の割合がぴったり合致していること。こういうチューニングをモノにするのは大変なことで、それがしっかり出来ているエンジンは数少ない。新1.5リットルはそのうちの1台と言って良さそうだった。

絶対的なパフォーマンスは最高出力が150ps止まりなので、大した速さではない。が、合法的に計測できる場所でGPSを使って実速度ベースでの0-100km/h加速を測ったところ、特別なローンチテクニックを使わなかったにもかかわらず9.2秒と、パワーウェイトレシオ10kg/psのラインを切れていないクルマとしては望外に良いリザルトだった。ちなみにビッグマイナーチェンジ前にラインナップされていた2リットルターボディーゼル(最高出力はガソリンと同じ110kW)+AWD(4輪駆動)は実測9.6秒。軽い分だけR-Lineがリードする結果となった。

新ガソリンエンジンの実燃費は

改良型ティグアン。山梨の御坂峠にて。改良型ティグアン。山梨の御坂峠にて。

次は新パワートレインの経済性について。満タン法で燃費を測定したのは東京西部の千歳烏山を出発後、山梨・長野県境付近の清里まで達しつつ甲州を周遊して東京に戻るというトリップ1区間のみ。走行距離432.0kmで給油量は25.54リットル、実測燃費は16.9km/リットルであった。

走ったのは高速道路、一般道、山岳路の混合ルート。普段に比べるとワインディング区間の割合がやや高めだったが、ワインディングの直線でスピードを乗せすぎないなどクルマの運動エネルギーを無駄に捨てる(=フットブレーキやエンジンブレーキをかける)のをなるべく避ける運転に終始したこともあってか、元気に走ったわりには良い数字になった。

先にも述べたが新1.5リットルは改良前の1.4リットルと同様、エンジン負荷が小さい時には4気筒のうち2気筒を停止させる機構が組み込まれており、そうなる領域を上手く活用すると比較的容易に燃費を向上させることができる。よくふんわり加速が燃費にいいと言われるが、このパワートレインの場合は日本的ドライビングスタイルだとむしろ燃費が伸びない。信号の変化や他車の動きなどの見越しをしっかりすることは大前提だが、一気に目標スピードまで加速し、しかる後に2気筒モードに入る低負荷でクルーズする時間を長くしてやったほうがずっと燃費が良くなるという印象だった。

もちろん市街地オンリーだと燃費値は大幅に落ちる。が、1トリップ数kmといったドライブを繰り返すのでなければ、SUVとしては結構良い範疇に入る。ドライブの最後、コールドスタート後に東京都心を20kmほど走るという機会があった。混雑がいつもより激しく平均車速が17km/hしか出ないという有様だったが、信頼性が高めの平均燃費計値は10.9km/リットルと、2桁をキープできた。交通量の少ない夜間では56.2kmを走ってメーター読み15.5km。今後、第8世代ゴルフなどに採用が始まっているマイルドハイブリッドeTSIが搭載されるなどすれば、さらに経済的に走れるようになるだろう。

ディーゼルなら1200km走れる?まだまだ優位性あり

改良前ティグアン。山口の屋代島(周防大島)にて。改良前ティグアン。山口の屋代島(周防大島)にて。

一方のディーゼルはというと、さすがに現時点ではエコ度はまだまだ純ガソリンエンジンよりは上であった。重量1.7トン台のAWDでありながら燃費値はロングランでは20km/リットルを超え、ドライブ条件の良くない市街地でも14km/リットル台。市街地主体でも交通量が少ない時に距離走る場合は19km/リットル前後が期待できた。

が、以前に比べるとガソリンとの実力差は縮まってきている。CO2排出量は燃料によって違いがあり、ガソリンは1リットルあたり2322グラム、軽油は2619グラム。燃費が同じならディーゼルのほうがCO2排出量が高いのだ。ディーゼル車が20km/リットルで走るとして、ガソリン車はおおむね17.7km/リットルでイーブンという計算になる。同条件で運転したわけではないが、TSI+FWD(前輪駆動)でエネルギー効率に意識を振り向けた運転をすれば、TDI+AWDで伸び伸び走る時の排出量に対して1割程度の増に留められる。素晴らしい進化である。

ディーゼルのアドバンテージは燃料コストの安さと実燃費の良さを生かした長大な航続距離だろう。これはティグアンに限らず輸入車全般に言えることだが、ガソリン車は基本的にプレミアム指定。欧州ではレギュラーガソリンのリサーチオクタン価が95なので、どうしてもプレミアム仕様になってしまうのである。軽油との価格差はかなり大きく、ディーゼル排ガス浄化用のアドブルーをちょっと多めに1000kmあたり1リットル(セルフスタンドでおおむね105円)消費したとしても、走行コストはガソリンより相当安くなる。

航続距離も結構大きな差になる。ティグアンの燃料タンク容量は62リットル。ディーゼルの燃費だとロングランでは上手く走ると1200kmくらいのレンジは十分期待できる。実際のドライブでも最長の無給油走行距離は九州・小倉から山陰経由、神奈川・厚木までの1187kmだった。東京~大阪の往復くらいならワンタンクでドライブすることも造作ないことだろう。

ガソリンでも給油間走行距離432kmで燃料は半分も消費していなかったので相当のロングランナーでも不満は出ないであろう水準だが、クルマで日本中どこにでも行ってみたいというタイプの顧客にとってはディーゼルの再登場が望まれるところだろう。

全長4.5m級のショートボディを生かすパッケージング

ドアのスイング角はゴルフに比べるとやや小さい。ドアのスイング角はゴルフに比べるとやや小さい。

実用性に話を移そう。全長4.5m級のティグアンはプジョー『3008』、ボルボ『XC40』、オペル『グランドランド』などより少し長く、シトロエン『C5エアクロスSUV』と同等、トヨタ『RAV4』、スバル『フォレスター』などより短いという立ち位置である。そのパッケージングだが、基本的には詰め詰めの超高効率を狙っている。

後席は左右分割スライド機構付きで荷室と居住区の比率を変えられるようになっており、一番後ろ寄りで固定した時の足下空間の広さは同クラス屈指。そのさいの荷室容量は公表されていないが、見たところ500リットル台前半といったところだろう。奥行きはないが深さがあり、収容力はステーションワゴンとしても十分に満足できるレベルだった。

後席を一番前にスライドさせた時の荷室容量は公称615リットル。この場合は海外旅行用の大型トランクを縦積みできるだけのスペースとなる。そのぶん後席の足下空間は狭くなるが、大人が乗れるスペースは残る。フランス車に比べてスライド幅が小さいのは、着座が難しい位置までスライドさせるならシートバックを倒しても同じだろうという考え方によるものだろう。ちなみにスライド前後端の間で固定することもでき、ショートボディながらアレンジメントはかなりフレキシブルという印象だった。

後席を前方にスライドさせると荷室長を大きく稼げる。空港送迎などにも威力を発揮するだろう。後席を前方にスライドさせると荷室長を大きく稼げる。空港送迎などにも威力を発揮するだろう。

内装の作りは高価格帯のわりには質素。走りのメカニズムや強固なボディにコストを重点配分した影響か、基本的にデコレーションにはコストが割かれていない。たとえばドアトリムは『ゴルフ7』と同じく前席はウレタン系だが後席はハードプラスチックといった具合である。シート表皮もファブリック、本革ともに見た目の豪華さとは無縁だ。

ただし、機能性は優れる。前編のシャシーのくだりで述べたようにTDIでは東京~鹿児島間をドライブ中、かなりタフな山岳路を試したりもした…というより、行ってみたらタフだったというほうが正解なのだが、ゴルフ7のデザインと類似したこのシート、見た目とは裏腹にホールド性が非常によろしい。

とくに優れていたのは座面のサイドサポートで、コーナリング中に体が振られるのを実に適切に受け止めてくれた。腰の定まりがいいとその時点で上半身のブレも格段に少なくなるのはシートの人間工学のセオリーのひとつなのだが、なるほどそうなんだなとその当たり前のことに感服させられた次第だった。ツーリングの途中、複数乗車時に後席に座ってみたが、後席も体幹のブレが少ない着座姿勢が自然に取れるような感じであった。このあたりの出来が悪いとヨーロッパ市場ではすぐに悪評が立ち、ライバルとの販売合戦で後れを取りかねないので、さすがにしっかり作ってある。

液晶メーターは高機能化。ただし見やすさは改良前のほうが上

インパネのカーナビ画面は縮尺調整などが直感的に行える、大変優れたものだった。ナビ画面をほぼ全面表示させることもできる。インパネのカーナビ画面は縮尺調整などが直感的に行える、大変優れたものだった。ナビ画面をほぼ全面表示させることもできる。

新旧ティグアンのロードテスト車はどちらも液晶メーターパネルが装備されていたが、形状や機能は改良の前後で異なる。サイズは改良後のほうが小さく、通常のメーターやハンズフリー電話の通話リスト、オーディオセレクトなど、トラディショナルな情報を表示させているときの視認性は改良前のほうが上であるように感じられた。

半面、表示のバリエーションは改良後のほうが格段に豊富。最も印象的だったのはディスプレイのほぼ全面にカーナビの地図され、速度計など運転に関わる情報の表示は画面の縁辺部に最小限表示されるモード。日本ではインパネにナビゲーションを表示させることは安全運転に支障を来すということで認められなかった時代が長く続いた。が、動いているときにカーナビの画面を一瞥だにしないなどということは、実際のドライブではあり得ない。

目線を移す時、インパネとセンタークラスタのどっちにカーナビ画面があったほうが安全かは愚問の類で、改良前の液晶インパネにもカーナビを表示する機能はあったし、大変重宝した。が、インパネ全面にカーナビ画面が出ると見やすさは格別。チラ見する時間は本当に瞬時という感じで、圧倒的にこれのほうが安全だろうという印象だった。

ちなみにインパネのマップのスケール変更などは新旧ともステアリングスイッチで直感的に行うことができた。予備知識がないまま乗ってもドライブ中あれこれ触っているうちにクルマのことが自然とわかってくる作りはフォルクスワーゲン車の特徴のひとつだ。

ただ、操作系で違和感があったのはR-Lineの静電方式のステアリングスイッチ。触れただけで反応するうえスライダー機能も実装されているので、筆者のようにステアリングを回す時にパッドに手のひらが当たる傾向があるドライバーだといつの間にかクルマやオーディオの設定が変わってしまったりといったことが頻々と起こる。個人的にはR-Line以外のグレードに付く機械式スイッチのほうが好ましく感じられた。

ヘッドランプの高機能化でナイトセッションの安全性が向上

アクティブハイビームに付けられたIQ.LIGHTの文字。自動運転に向かう技術にはIQ.の接頭辞を付ける方針らしい。アクティブハイビームに付けられたIQ.LIGHTの文字。自動運転に向かう技術にはIQ.の接頭辞を付ける方針らしい。

ADAS(先進運転支援システム)のパッケージは全車速・前車追従クルーズコントロール、レーンキープアシスト、路外逸脱防止、レーンチェンジアシスト等々、このクラスとしては標準的。フォルクスワーゲンは2018年末から同社のADASに「IQ.DRIVE」という名称を付け、自動運転につなげていく意思表示としている。個別機能もいろいろ名前が変わっているが、その多くは改良前と基本的には改良前と変わらないように思われた。

改良でADASに新たに追加されたのはドライバーが失神したときに非常停止させる機能。ドライバーが意識を失ったと思われる場合、アラートを出し、それでも反応がないときは自動停止させて被害の拡大を防ぐという。といって、ドライブ中にわざと失神したフリをして性能を試したりはしなかったので、機能は確認できていないが・・・。

ドライブ中に実感できた最大の変化はADASよりヘッドランプだった。旧型のハイ/ロービーム自動切換え式から先行車、対向車を避けてハイビーム照射するアクティブハイビームに進化したのだが、これが配光、明るさとも同社のDセグメントセダン『パサート』並みに優れていて、山岳路のナイトセッションでは野生生物の早期発見、コーナリング奥の見渡しなどに有用だった。ヘッドランプの性能はツーリングを行ううえで最重要項目のひとつなので、これがついているグレードを選びたくなるところだ。

まとめ

改良型ティグアンのフェイス。ラジエータグリルのメッキ部が細く、開口面積はワイドに。改良型ティグアンのフェイス。ラジエータグリルのメッキ部が細く、開口面積はワイドに。

地味でとても速そうには見えないデザインながら、その実フットワークは卓越のきわみという「SUVの皮を被ったGT」的性格のティグアン。が、ヨーロッパのユーザーはもともとヴァカンスで大旅行をするのが好きだし、移動の自由の権利に執心する人たちだ。別に目立たなくていい、あるいは目立たないほうがいいからドライブは楽しみたいし、状況が許せばビシビシと速く走りたいという人が多い。

本国には「R」以外の高出力エンジンモデルもあるが、制限速度100km/hの山岳路を速く走るのに必要なのはパワーではなく足。まさに彼らの好みにぴったり合わせたモデルというのが、ロードテストでの総合印象であることは前編で述べたとおりだ。環境意識が高いと言われるEUだが、エネルギー効率で軽量・低車高モデルに宿命的に劣るSUVでこんなに素晴らしい性能のモデルが登場し、ユーザーがそれを大歓迎してスマッシュヒットとなる。いっそ清々しいくらいの言行不一致ぶりである。

公道の速度レンジが欧州より格段に遅い日本では、ティグアンのシャシー、ボディは率直に言って無駄だらけだ。それを承知で高価なティグアンを選ぶ理由となりそうなのは、まず足まわりの性能に裏打ちされたロングドライブ時の疲労の少なさ。見切りの良いボディゆえの取り回しの良さ。牽引免許があればガソリンFWDモデルでもブレーキ付きトレーラー1.8トンを引っ張れるトーイング能力。あとはフォルクスワーゲンの走りに対する哲学を味わいたいという人向けだろうか。

改良版ティグアンのロードテスト車はFWD(前輪駆動)のR-Lineだった。ワイドタイヤ+FWDだとオフロードにおいてはさすがにトラクションが少々厳しくなる。改良版ティグアンのロードテスト車はFWD(前輪駆動)のR-Lineだった。ワイドタイヤ+FWDだとオフロードにおいてはさすがにトラクションが少々厳しくなる。

競合モデルだが、走りの点ではノンプレミアムのライバルはあまりいない。エンジンパワーが低いだけで足だけプレミアムセグメントという感じであることを勘案すると、走行性能とスペースユーティリティを高い次元で両立させているプレミアムセグメントのボルボ『XC40』が最右翼だろう。

スペースユーティリティという観点で見ると、モロにぶつかってきそうなのはボディサイズがほとんど同じで広大な荷室を持つシトロエンC5エアクロスSUV。走行性能ではティグアンに分があるが、C5エアクロスSUVはティグアンにはないディーゼルが選べることと、価格が安いという強味がある。面白い勝負になるだろう。C5エアクロスSUVより小型でスペース的にも若干ビハインドがあるが、同じグループのプジョー3008も競合相手になりそうだ。

日本車のクロスオーバーSUVはどれも悪路走破性にリソースを割いたものがほとんどで、ティグアンとは方向性も価格帯も全然違うような気がするが、ユーティリティ的にはスバル・フォレスター、トヨタRAV4あたりはもちろんライバルとなり得る。日産が『エクストレイル』をフルモデルチェンジすれば、それも名乗りを上げそうだ。

逆にスペースではまったく比較対象にならないが、アンダーパワーの動力系に卓越した足という組み合わせで競合相手となり得るのはファクトリーチューンモデルのトヨタ『CH-R GR SPORT』。今は存在しないが、RAV4あるいは『ハリアー』にボディ、シャシーを強化したGR SPORTが追加されたら、なお良いライバルとなるだろう。

改良型ティグアン。御坂峠の天下茶屋にて。改良型ティグアン。御坂峠の天下茶屋にて。
《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集