【BMW 4シリーズ&3シリーズ】差別化を明確に、賛否両論あって良い…プロダクトマネージャー[インタビュー]

BMW M440i xDrive
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BMWの屋台骨、『3シリーズ』にベーシックグレードの「318i」が日本にも追加された。またほぼ時を同じくしてクーペモデルの『4シリーズ』もフルモデルチェンジ。そこでそれぞれの特徴についてプロダクトマネージャーに話を聞いた。

良い意味でバズっている4シリーズ

----:BMW4シリーズがフルモデルチェンジして2代目になりました。今回のポイントは何でしょう。

BMWブランド・マネジメント・ディビジョンプロダクト・マーケティングプロダクト・マネジャーの岩崎格氏:中身と外観の両方がありますが、まず外観ではあのフロント周り(大型で縦型のキドニーグリル)ですね。良くも悪くもすごくインパクトがあり、好き嫌いが綺麗にわかれています。こちらとしては良い意味で“バズって”いるのでありがたいです(笑)。

その外観では、3シリーズとの完全な決別があります。今回の4シリーズは昔からあるBMWのクーペの系譜と、古の『328』や『2002』などの縦型グリルを採用することで、スポーティ&エレガンスと歴史と伝統を現代の姿で構築しなおしたものなのです。一方の3シリーズはよりオーソドックスな方向にシフトしましたので、そこで外観を綺麗にわけられています。

中身ですが、基本的には3シリーズと同じです。エンジンは2リットルと3リットルの両方があり、シャーシーも基本的には一緒で、2850mmのホイールベースも同じです。

しかし、4シリーズはボディの補強をものすごく入れていますので、乗ってみるとすぐに気づくのですが、リアの追従性が非常に高くなりました。もちろん3シリーズ自体も非常に良いのですが、3シリーズにある、良い意味での実用性のためのゆるさみたいなものを取り払ったようなイメージです。具体的にはアンダーフロアにものすごく補強を入れて、フロントをステアしたらリアが即座に追従するという作りにすることで、シャープに仕上げたというのがメカニズム面での違いです。

インテリアに関してはほぼ3シリーズと同様で、そこは兄弟とわかるようにしています。

----:そうすると先代4シリーズよりも3シリーズとは、はるかに差別化されたということですか。

岩崎:そうです。そこはすごく大きいと思います。先代においても3シリーズに対してトレッド幅を広げるなどを行っていましたが、今回は車体そのものも相当手を入れています。また、外観デザインを大きく変えたというところで、完全に別れたといっていいでしょう。

特徴的なデザインを見せることでBMWの話題喚起に

----:そこまでやるということは、先代4シリーズがお客様に高く評価されたからこそ、今回はより差別化しようと考えたわけですね。

岩崎:そういうことです。国内でも4シリーズは比較的評価が高く、非常に端正なデザインでもありましたし、走りももちろん良く、結構コンスタントに売れたクルマでした。

実は、東京モーターショー2019で実車を見た時には、そのデザインに驚いたのですが、実際に導入が開始されて、多くの4シリーズを見ているうちにこれは悪くないと思い始めました。また、我々の仕事はブランディングを預かっていますので、その観点からすると、良くも悪くも話題にはなります。だからこそ、そこをフルに看板として活用しようと。「BMWどうしちゃったの?」でもいいですし、「BMW、すごいの出したね、恰好良いね」でも良いのです。そこは是非ブランディングとして使っていきたいという方針です。

BMWはYouTubeに商品解説を行うデジタルショールームを持っているのですが、面白いのがその中で一番コメントが多いのが4シリーズなのです。他のクルマは数件なのに対し、このクルマは30件以上入っているのです。「これはないでしょう」とか、「いやいやこれはとても気に入った」。「これのグランクーペはまだ出ないのか」とか反響がありますので、これは是非使っていきたい。我々のブランディングのひとつの柱として、たくさんの人に見てもらって注目を集めるクルマとして使っていこうとしています。

----:4シリーズはBMWの柱となる3シリーズではないので、ある程度突飛なことも出来るわけですね。

岩崎:はい、量販は3シリーズであり『5シリーズ』ですし、最近ではSUVもあります。やはりクーペはそもそも日本ではそれほど多くの台数は見込めませんし、その中で(ブランディングとして)どう使うのかと考えると、明らかに先鋭化させてキャラクターを持たせ、とにかく走りだろうというところに持って行った方が上手く使えるのではないかと考えています。

3シリーズと共通の安全装備は全て搭載

----:今回のモデルチェンジで日本側から、何らかの要望は何か出しましたか。

岩崎:こちらからは正直特にはありませんでしたが、あえていうなら、ドライバーアシスト系だけです。3シリーズと同じものを全部搭載しました。3シリーズもエントリーグレードの318から全て三眼カメラを投入しています。これによって3シリーズと4シリーズは全て三眼カメラ付きになりました。そこは兄弟であるということですから、最新のものを必ず入れるようにしています。

----:日本で4シリーズはどういうユーザーが購入しているのですか。

岩崎:3シリーズと4シリーズで比べるとわかりやすいと思いますが、間違いなく世代的には40代から50代で子供の手が離れ始めた方。家族構成でいうと4シリーズの方が子供がいない、あるいは手離れした方が多いですね。3シリーズの方はファミリー層が若干多いです。

プロファイル的には、どちらも走りは好き。4シリーズに限っていうと、昔、少しやんちゃをしていたでしょうというようなイメージの方がいらっしゃるようです。例えば80年代から90年代に『スカイライン』や『シルビア』、『180SX』などに乗っていて、クルマは楽しい、2ドアはいいよねといっていた人が、その後長らくセダンやミニバンに乗ってきて、周り回って最後に行き着いたところがここなんだな、という方が結構目立つ気がします。特徴的な話ですね。もっともそういう方でないと乗らないだろうなという気もします。やはり2ドアは贅沢なクルマですから。

----:この4シリーズの最大のウリのポイントは何でしょう。

岩崎:圧倒的に走りです。非常に高いボディ剛性とパワーがあるM440i xDriveはもちろんですが、シャーシーが絶対に負けない420iの200馬力弱の比較的使いやすいエンジンを搭載したクルマもより楽しいのではないでしょうか。そこにアダプティブサスを搭載し、19インチのホイールと大径ブレーキを組んでいくだけで、相当楽しいクルマが出来上がるでしょうね。

一方で「M440i xDrive」はすごく速くて素晴らしいのですが、特に街中では若干持て余すところも正直あります。「420i」だと184馬力、300Nmという出力・トルクですので街中でもそれほど持て余すことはないですし、走ろうと思えば結構ぶん回すことも出来ます。そういう面白さを持っているクルマです。ですから4シリーズ全体としても走りがウリのポイントで間違いはありません。

318iはベストバイ

----:さて、兄弟車の3シリーズの話も伺いたいのですが、今回エントリーグレードとして318iが導入されましたね。

岩崎:3シリーズについては先日YouTubeライブ配信をやったのですが、その中で318iは日本における3シリーズのベストバイだとお話しをしました。パワーは必要にして十分の156馬力で、箱根のターンパイクも十分余裕を持って登ることが出来ます。それだけ十分なパワーでありながら、街中で持て余すこともありません。なおかつ三眼カメラも搭載されていて、3シリーズの良いところは全部持っているのです。

ある方が、“美味い素うどん”みたいなクルマだと表現されていたのですが、まさにそうで、素材が本当に良いのです。318iは是非スタンダードで乗ってもらいたいですね。エンジンをぶん回すとすごくよく走りますし、乗っていてとても気持ちが良いのです。個人的にはこのクルマを押しています。ただのエントリーグレードではない、美味しい素うどんの良さがあります。

----:そうしますと、「320i」と318iのポジショニングがかなり近くなります。棲み分けはどのように考えているのでしょうか。

岩崎:全くその通りで、先代の318iは1.5リットル3気筒でしたので、鼻が軽くて良いなどの特徴がありました。しかし今回は、エンジンは基本同じですから、現在ラインナップをもう少し考える必要があると話をしています。ただしオプションの制約などで、320iでしか選べないアイテムなどもありますので、悩ましいところです。

本当に318iの出来が良く、価格設定も相当頑張って500万円を切りました。本国からはかなりいわれましたが、絶対にダメと押し切ったのです。この価格であれば日本車の上級グレードを購入する方でも手が届きますので、そういった方にこそ検討してもらいたいと思っています。日本車の高いクルマを買うよりも、絶対にこちらの方が良いという自信があります。安全装備もバッチリですから。

318iはただのエントリーモデルではなく、これこそベストバイ3シリーズといえます。タイヤのサイズも、リプレイスを考えると、16インチや17インチでしたら、それほどの価格でもないですが18インチなどになるとそこそこ高くなります。そういった意味でも、5年から10年乗ってもらえるクルマですから、とてもお勧めです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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