ラインナップ続々、国産EV&PHEV! しくみ・航続距離・使い勝手を比べてみた

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ラインナップ続々、国産EV&PHEV! しくみ・航続距離・使い勝手を比べてみた
  • ラインナップ続々、国産EV&PHEV! しくみ・航続距離・使い勝手を比べてみた
  • トヨタ プリウスPHV(参考画像)
  • トヨタ プリウスPHV
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内燃機関(エンジン)の改良だけでは地球温暖化の元凶とされるCO2(二酸化炭素)を減らすことは難しい。そこで21世紀になると、多くの自動車メーカーが電動化へと舵を切った。

ハイブリッド、プラグイン、ピュアEVなど種類豊富に


その第1弾が、エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッド(HV)車だ。これを進化させたのがプラグインハイブリッド(PHVまたはPHEV)である。ハイブリッド車に充電ポートを追加して充電できるようにし、モーターの活躍の場を広げた。

駐車しているときに充電を行い、バッテリーの容量も増やしているからエンジンを使う機会は大幅に減るし、燃費の落ち込みも小さい。トヨタは先代の『プリウス』のときにPHVを投入し、現行モデルにも進化型の『プリウスPHV』を設定した。三菱も『アウトランダー』にPHEVと名付けたプラグインハイブリッドをラインアップする。もっとも新しいのは、ホンダが送り出した『クラリティPHEV』だ。この3車は家庭の電源だけでなく、EV用の急速充電器を使っての充電にも対応している。

プラグインハイブリッドの先にあるのが、EVと呼ばれている電気自動車だ。これは電気をエネルギー源とし、モーターで走行するクルマのことである。CO2などの有害物質をまったく出さないし、快適性も高い。その代表が日産の『リーフ』だ。現行モデルは2代目で、1回の充電による航続距離は約400kmに向上した。リーフで培ってきたモータードライブの楽しさを広げたのが、ノートに採用したe-POWERである。これは1.2リットルの直列3気筒エンジンを使って発電を行い、充電して貯めた電力を使ってモーターを回して走行するシリーズ式ハイブリッド。エンジンは発電するだけで、走行には使用しない。

これに対し、エンジンとモーターの両方を動力として走行に使うのがパラレル式ハイブリッドシステムである。主役はエンジンだが、モーターでアシストを行うし、減速時はエネルギー回生も行う。ふたつの動力源を同時に使ったり、使い分けたりすることもできる。だが、回生で得られた電力しか使えないため、アシストする電力はわずかだ。

シリーズ式とパラレル式を併用して効率を高めたのが、トヨタのハイブリッドシステム「THS II」だ。エンジンとモーター、ミッションとデフが動力分配機構で連結され、発電機を積んでいるから発電やエネルギー回生も行うこともできる。プリウスなど、多くのクルマに採用し、2輪駆動だけでなく電動モーター搭載の4WDも登場した。

運転しやすいサイズと乗り味…プリウスPHV


トヨタ・プリウスPHV(参考画像)
充電してEVの走行距離を延ばせるプリウスPHVも、基本のメカニズムは同じだ。1.8リットルのアトキンソンサイクル4気筒エンジンに2つのモーターを組み合わせている。モーター走行時にも発電でき、通常走行のときの余剰エネルギーや減速時のエネルギーを発電に回し、再利用するから燃費もいい。違うのは、駆動用バッテリー容量を8.8kWhに増量し、EV走行の領域を大幅に増やしたことだ。

満充電でEV走行できる距離は68.2kmと発表されている。実際に走れるのは50kmほどだ。が、出先に充電器があれば帰りもEV走行を楽しむことができる。また、高速道路でもEV走行を可能にした。これもプリウスと違うところだ。バッテリーが空になるとガソリンを使って航続距離を延ばすことができるが、EV感覚は強まっている。急速充電器と200V電源(満充電まで約2時間20分)だけでなく一般家庭用の100V電源を使うことができるのもプリウスPHVの魅力のひとつだ。ただし、充電時間は長くなる。

プリウスPHVはプリウスの上級モデルと位置付けられ、デザインも差別化が図られた。アクセルを強く踏み込んだときは2つ目のモーターも駆動用になるデュアルモータードライブを採用しているから電気がたくさん残っているときは力強い加速を披露する。が、多くの走行シーンで、限りなくプリウスに近い運転感覚だ。日本で使いやすいサイズで背も高くないから誰にでも無理なく運転できる。気になるのはプリウスと違ってFF車だけの設定で、4WDは選べない。また、乗車定員は4名だし、大型バッテリーを積んだためラゲッジルームが狭いのも気になるところだ。

直接のライバルは不在…アウトランダーPHEV


アウトランダーPHEV
アウトランダーPHEVは、日本で唯一のクロスオーバーSUVをベースにした4WD方式のプラグイン・ハイブリッド車である。2018年8月に大掛かりなマイナーチェンジを行い、魅力を増した。前輪と後輪にモーターを組み込んだツインモーター4WDを進化させ、今までより400cc大きい2.4リットルのアトキンソンサイクル4気筒エンジンを積んでいる。また、駆動用バッテリーの容量を13.5kWhに増やし、満充電でEV走行できる距離を65kmに引き上げた。EV走行できる最高速度も最新モデルは135km/hだ。

EV走行の量域を広げたアウトランダーPHEVの売りのひとつが、前後輪のトルク配分や左右輪のトルクベクタリング、4輪ブレーキ制御などによって意のままの走りを可能にするS-AWCの採用である。気持ちいい走りを楽しめるスポーツモードと雪道で安心感のある走りを見せるスノーモードを追加し、路面に関わらず気持ちいい走り、安心感のある走りを実現した。パドルシフトを使ってエネルギー回生を自在にコントロールできるのも特徴といえるだろう。

アップライトな運転姿勢だから視界はいいし、見切りも優れている。また、キャビンは広く、ラゲッジルームも使い勝手がいい。アウトドアユースやアクティブ派、EVに近い走行感覚と安心感のある走りを期待する人には魅力的な4WDモデルと感じるはずだ。デビューは2013年だから新鮮味はない。が、日本車に直接のライバルは存在しないし、内容を見ていくと買い得感は高いと感じられる。

EV走行距離が強み…クラリティPHEV


ホンダ クラリティPHEV(写真はプロトタイプ)
クラリティPHEVはライバル2車よりEV走行距離を大幅に延ばし、エンジンは発電が主目的になるなど、レンジエクステンダー的な性格の強いプラグイン・ハイブリッド車だ。第2世代の2モーターハイブリッドシステム、「スポーツハイブリッドi-MMD」を採用し、そのバッテリーを高出力化するとともに高容積化を図った。搭載するのは、フィットの1.5リットルを進化させたアトキンソンサイクルの4気筒DOHCエンジンである。

リチウムイオンバッテリーの容量は17kWhとEVに迫るし、出力も650Vまで高めた。モーター走行できる領域を大幅に増やしているから、シームレスで力強いEVのような運転感覚だ。EVでの最高速度も160km/hと、今までにない電動プレミアム感を身につけている。EV走行距離はJC08モードで114.6km、WLTCモードでもフル充電で101kmの距離を達成した。実用燃費もプリウスPHVに肉薄する。ただし、北米市場に向けて送り出したPHEVだからボディサイズは大きく、取り回し性は今一歩だ。北米より高い600万円に迫る販売価格も悩みどころである。

自分の生活スタイルに応じて…リーフ&ノート e-POWERで


日産 リーフ(参考画像)
ピュアEVのリーフはCO2などの有害物質をまったく出さないなど、環境性能はプラグイン・ハイブリッド車の一歩上を行く。また、一気にパワーとトルクが湧き上がるから加速も冴えている。アクセルペダルだけで多くの走行シーンをこなせるワンペダルドライブも魅力のひとつだ。静粛性が高いなど、快適性も高いレベルにある。未来感覚のドライブフィールは新鮮だ。だが、充電にかかる時間が長く、走り方や走行コースによって航続距離が大きく変わってしまう。実質的な航続距離は300km以下だ。

遠出をあまりしない、という人や充電施設が近場にある人には魅力的なファミリーカーになる。だが、オーナーになるには、思い切りと割り切りが必要だ。このハードルを下げたのがノートのe-POWERである。エンジンを積んでいるが、これは発電するだけで走行には使用しない。ブレーキングすると回生を行い、電力をバッテリーに蓄えるから街中の走りだと燃費がいい。だが、高速道路などでクルージング状態が続くと電力が足りなくなり、燃費は大きく落ち込む。既存のパワートレーンを使って、手軽にEVの楽しさと力強さを実現したのがe-POWERである。市街地や街中の走りを中心とする使い方をする人には満足度の高いコンパクトカーだ。発進時の瞬発力は鋭し、買い得感も高いレベルにある。

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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