音質チェックに持ち込んだのはすべてCDで、MP3やサンプリング周波数96kHz以上のHDオーディオは使用しなかった。アルバムリストは女性ヴォーカルとして矢野顕子「ELEPHANT HOTEL」、フランスのイザベル・アンテナ「L’alphabet du plaisir」、ジャズロックとしてマーカス・ミラー「The sun don't lie」、ジャズフュージョンとしてラリー・カールトン「Fingerprints」、クラシックとして今年秋にNHK交響楽団の主席指揮者に就任予定のパーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管弦楽団演奏「フォーレ レクイエムおよびラシーヌ讃歌」、カール・リヒター「バッハオルガン曲集」。ちなみに筆者が自宅でリファレンスオーディオとして使っているのは、英モニターオーディオ社のダブルウーファースピーカーとラックスマンのプリメインアンプ「L-570」という、古い機材である。
音符の少ないスローな曲であれば、オーディオにとって一番厳しい中高音についても密度感豊か。好例はラリー・カールトンのアルバムに含まれる「All thru the night」で、gibsonのエレキギターをポルタメントチョーキングを効かせてうたわせる際の弦の震えまでよく表現されていた。JBLといえば、ラインアレーやスタジオモニター用途のイメージが強いブランドで、ヴェルファイアの押しの強さともあいまって、基本バムバム系の音楽に合わせたキャリブレーションがなされているのではないかと考えたが、思ったより落ち着いたサウンドデザインだった。
女性ヴォーカルもそれほど悪くなかった。女声はジャズ、フュージョン系と比べて、中高音の嫌な音が耳に突きやすいのだが、こちらもボリュームをかなり上げても悪さは目立たなかった。イザベル・アンテナは80年代以降のフランス人シンガーとしてはかなり古典的なフランス語の発音をすることで知られているが、アルバム中の「Le poisson des mers du sud(南の海の魚)」でとくに良く聞こえる特徴的な鼻母音や擦過音などをよく描写していた。