【トヨタ アルファード / ヴェルファイア 試聴】JBLプレミアムサウンドシステム の実力を試した…井元康一郎

試乗記 国産車

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トヨタ自動車が1月に発売した高級ミニバン、3代目『アルファード/ヴェルファイア』にオプションとして用意されたオーディオ「JBLプレミアムサウンドシステム」の実力を試してみた。


◆広大な室内を響かせるための17スピーカー

試乗車はヴェルファイアの「HYBRID ZR"G EDITION"」。グレード的にはビジネスクラスのような大型2列目シートがつく「Exective Lounge」より下だが、元の車両価格は550万円で、ナビゲーション+JBLサウンドシステム、12.1インチサイズのフリップダウン式後席モニターなどを含めた参考価格は645万円と、国産車としては十分にプレステージクラスのレンジに入る。

JBLサウンドシステムは、トヨタ車ではすでに他のモデルでも採用例が増えているなじみのブランドだが、ヴェルファイアのそれはスーパーウーファーまで含めると実に17スピーカーと、とにかく大規模。セダンモデルに比べて格段に大きい容積の室内でサラウンド効果を出すにはそれくらいの個数が必要ということだろう。

音質チェックに持ち込んだのはすべてCDで、MP3やサンプリング周波数96kHz以上のHDオーディオは使用しなかった。アルバムリストは女性ヴォーカルとして矢野顕子「ELEPHANT HOTEL」、フランスのイザベル・アンテナ「L’alphabet du plaisir」、ジャズロックとしてマーカス・ミラー「The sun don't lie」、ジャズフュージョンとしてラリー・カールトン「Fingerprints」、クラシックとして今年秋にNHK交響楽団の主席指揮者に就任予定のパーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ管弦楽団演奏「フォーレ レクイエムおよびラシーヌ讃歌」、カール・リヒター「バッハオルガン曲集」。ちなみに筆者が自宅でリファレンスオーディオとして使っているのは、英モニターオーディオ社のダブルウーファースピーカーとラックスマンのプリメインアンプ「L-570」という、古い機材である。


◆残響の豊かな空間を再現するのが得意

まずはパワー、およびスピーカーの入力耐性について。オーディオのシステム出力は公表されていないが、チャンネルデバイダーでの分岐を考慮しても17ものスピーカーを鳴らさなければならないので、それなりの出力は確保されているものと推測される。パワフルな曲をフルボリュームで鳴らしても音割れしないが、鼓膜に過剰なストレスがかかるほどの音圧ではなく、アフターマーケットのオーディオシステムのようなパワー感はない。

次にジャンル別のインプレッション。最も親和性が高かったのはジャズロック、フュージョン。マーカス・ミラー、ラリー・カールトンとも楽器数が少なく、大半がヴォーカルなしのインストゥルメンタルというパターンの曲については、楽器の音分かれ感、リバーブ(残響)の雰囲気など申し分なかった。

マーカス・ミラーのアルバムの中にはドラムを相当パルシヴに効かせたパワーミュージックもあったが、フルボリュームでも破綻はなかった。ヴェルファイアのスーパーウーファーはそれほど大型のものではないが、アルバム中の「Panther」におけるチョップが効いたベースラインの表現力など、純正オーディオとしては相当良い部類に入る。

音符の少ないスローな曲であれば、オーディオにとって一番厳しい中高音についても密度感豊か。好例はラリー・カールトンのアルバムに含まれる「All thru the night」で、gibsonのエレキギターをポルタメントチョーキングを効かせてうたわせる際の弦の震えまでよく表現されていた。JBLといえば、ラインアレーやスタジオモニター用途のイメージが強いブランドで、ヴェルファイアの押しの強さともあいまって、基本バムバム系の音楽に合わせたキャリブレーションがなされているのではないかと考えたが、思ったより落ち着いたサウンドデザインだった。

女性ヴォーカルもそれほど悪くなかった。女声はジャズ、フュージョン系と比べて、中高音の嫌な音が耳に突きやすいのだが、こちらもボリュームをかなり上げても悪さは目立たなかった。イザベル・アンテナは80年代以降のフランス人シンガーとしてはかなり古典的なフランス語の発音をすることで知られているが、アルバム中の「Le poisson des mers du sud(南の海の魚)」でとくに良く聞こえる特徴的な鼻母音や擦過音などをよく描写していた。

相対的に苦手なのはクラシック。もちろん普通のカーオーディオに比べれば優秀至極で、パッと聴く限りはいい音だな~と感じるはずだ。が、「フォーレ・レクイエム」の第2曲「奉献唱」の主題をチェロ、ヴィオラが重音で奏でるといった、複数の楽器の音波が共鳴し合ってひとつの音を作るような密度の濃いディテールの表現は得意ではない。システム全体のフリクェンシーレンジは低域方向に良く、高域方向では比較的早く限界を迎えるように感じられたが、それが純アコースティックの再生ではネックになるようだった。また、楽器の定位感もあまり明瞭ではなかった。

が、同じクラシックでもパイプオルガンの再生は悪くなかった。音程によってパイプの鳴る位置が異なるような感覚はなかったが、金属管のプリンシパル、木管のゲダクトやブロックフレーテなど、単音系の音については管の中の空気の振動感が伝わってくるほど。これはホームオーディオでも安物では無理な再現力だ。また、オクターヴ以外の音を混ぜてクラリネットのような音を合成するコルネや鋭い音のリード管などフランス発祥の音色も美しく表現できていた。ポップスでもそうだったのだが、残響の豊かな空間を再現するのは得意分野のようだった。


◆2列目、3列目シートで真価を発揮

このJBLプレミアムサウンドシステムの面白い点は、1列目よりも2列目、3列目のほうが音の聴こえ方が格段によかったことだ。筆者は一人でドライブしていたため、走行中はずっと運転席にいた。そこでオーディオをいろいろ試していたときは、「悪くはないけどこれでプレミアムは盛りすぎだろう」と思っていたのだが、クルマを停め、試しに2列目で聴いてみたら、前席における音の抜けの悪さが嘘のような、素晴らしい音場であることに驚かされた。

もちろんJBLと言ってもそれはブランドだけのことで、スピーカーの質自体は量産品レベルの域を脱しないのだが、クルマの開発段階から車内の音響特性を考慮した設計ができたからか、サラウンド感については決して悪くない出来だった。前述のオーディオ評価はすべて2列目で聴くことを前提としたものである。

2列目シートにはオーディオ用のリモコンが置かれており、自分で自由に選曲を行うことができる。が、CDのスロットは前席にしかないため、CDの交換はドライバー、ナビゲーターにやってもらう必要がある。ショーファードリブンでなくとも、家族や友人が2、3列目で楽しむことを考えると、2列目のコンソールにもCD、DVDのヘッドユニットを置けるようにすればよかったのにと思った。AUXでHDオーディオやビデオを楽しむ場合はこの限りではないので、後席メインのときは自分でタブレットPCやノートパソコンを持ち込むといいだろう。

総じてヴェルファイアのJBLプレミアムサウンドシステムは、レクサスのマークレビンソンと比べてもむしろ出来がよく、オーディオに大金をかける気はないが、純正品でそこそこの音を聴きたいというカスタマーにとっては、装備して損はないというレベルには十分達していると思われた。カーナビとセットで56万1600円、安全装備のシースルーモニターまで含めると70万2000円とかなり高価だが、ヴェルファイアの上位モデルを購入する財力を持つユーザー層にとっては、妥当な範囲のプライスタグと言えそうだ。
《井元康一郎》

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