物流の脱炭素化と中長期的なカーボンニュートラルに積極的に取組むトラックOEMといえば三菱ふそう。「ジャパンモビリティショー2025」では、カール・デッペン代表取締役社長・CEOがキーノート・スピーチを行い、三菱ふそうが掲げる「フューチャー・トゥギャザー」のモットーとは、顧客やドライバー、そして社会全体とのパートナーシップやコラボレーションを通じて、将来の課題に対し、ともに前進するための革新技術とソリューションであることを強調した。
【画像】三菱ふそうの新型水素エンジントラックと燃料電池トラック
その一例が、日本初のEV小型トラック『eキャンター』だ。2年前から発売されているが、今回はスマートボディとデジタルソリューションを融合した「コボディ(コネクテッド・ロード・ボディの略)」というテクノロジーが組み合わされている。
三菱ふそう eキャンター(ジャパンモビリティショー2025)まず荷台は、荷下ろし作業をするドライバーのエルゴノミーを中心とするスマート設計となっている。加えてAIで最適な配送ルートを自動的に計画する「ワイズ・システム」と連携しており、短距離の配送ドライバーの作業時間短縮や負担軽減、配送効率の向上を図る。つまりゼロエミッションというだけでなく、配送ドライバーの仕事をもスマート化するトラックという訳だ。
しかし三菱ふそうのJMS 2025における目玉は、中長距離輸送用のトラックまでもゼロエミッション化してきたことだ。それがワールドプレミアとなった、『H2IC』ならびに『H2FC』だ。コンセプトモデルとのことだが、限りなく市販版に近い完成度で、前者はディーゼルと約80%のエンジンコンポーネントを共有する水素エンジン車であり、後者は液体水素から電気を生成してモーター駆動する燃料電池車だ。
三菱ふそうの燃料電池トラック『H2FC』(左)と水素エンジントラック『H2IC』(右)
では、なぜ水素によるヘビーデューティ・トラックを2種類用意したのか?デッペン代表取締役社長・CEOはスピーチで次のように述べた。
「カーボンニュートラルを達成するのに、万能なソリューションは存在しません。顧客のニーズ、そして社会全体にとって最適なソリューションを見つけ出すには複数技術を検討する必要があります。そして水素の配給網やインフラの成長、グリーン水素の価格といった外的要因は、時間の経過にも大きく影響されるもので、私たちがコントロールできるものではありません。これこそが当社が柔軟な姿勢を保ち、ふたつの水素テクノロジーを並行して開発すると決断した理由です」
地域内の短距離輸送は既存のeキャンターでカバーする一方で、長距離は水素駆動のヘビーデューティ・トラック、2種類のパワートレインで揃える意義は、物流業界の将来にとって小さくない。水素エンジンのH2ICは700kmの航続距離を備え、ドライバーも馴染みやすい内燃機関エンジンで80%のコンポーネントをディーゼルと共有することから信頼性も見込めるとのこと。業界全体に移行を促すと、CEOは力強く説く。
三菱ふそうの燃料電池トラック『H2FC』(ジャパンモビリティショー2025)他方のH2FCはフューエルセルによる異なるアプローチで、燃料電池システムによる高効率・低コストの運用を可能にする。航続距離は最大1200kmで、燃料補給に要する時間は15分、しかも積載を邪魔しないコンパクトな貯蔵タンクを特徴とする。多くのFCVは圧縮ガス貯蔵だが、H2FCはサブクール液化水素を使用する。水素輸送コストの低減、充填作業の簡便さ、インフラのシンプル化が可能になり、ひとつの水素ステーションでより広い範囲をカバーすることにも繋がるという。
「サブクール液化水素の技術自体は、ダイムラー・トラックとリンデ・エンジニアリングが開発したものですが、ISO基準で公開されており、誰もが採用できます。この技術を日本で初めて発表することができたことを、誇りに思います」
サブクール液体水素についての日本でのテクニカル評価については、パートナーの岩谷産業と進めている。広くサプライチェーン、日本の物流業界のプレーヤーにも参加を呼びかけている。いよいよ水素社会の具体化が、トラックによって始まり新しい時代が拓けるのか。三菱ふそうのブースで確かめてみて欲しい。
水素を全面に押し出した三菱ふそうブース(ジャパンモビリティショー2025)









