変わり続けた『シビック』の50年、7代目から最新モデルへの大革新、そして「タイプR」の存在

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  • 1998cc DOHC・i-VTEC K20A エンジン(ホンダ シビックタイプR)

ホンダの世界戦略車として世界中の人たちに愛され、2022年7月12日に50年の節目を迎えた『シビック』。歴代のシビックは、いずれも時代の一歩先を行くファッショナブルなルックスと洗練されたメカニズムをまとって登場し、世界中で人気者になっている。初代モデルから環境性能に目を向け、ライバルに先駆けて安全装備も積極的に採用した。また、日本から発信した刺激的な走りの「タイプR」も、シビックの栄光を語るとき、欠くことのできないキャラクターへと成長している。7代目から現行モデルである11代目までの歴史を振り返る。

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7代目 :ハイブリッドモデルが初登場「スマートシビック」(2000年~)

ホンダ シビック 7代目ホンダ シビック 7代目

大きくコンセプトを変え、パッケージングの革新を行うのは、21世紀が間近に迫った2000年9月に登場する7代目の「スマートシビック」だ。日本仕様はヒューマンパッケージをキャッチフレーズにした5ドアと4ドアセダンのフェリオで、3ドアモデルは消滅した。どちらも独創的なセンタータンクレイアウトを採用し、ボンネットも短く抑えることによってクラスを超えた広さと快適なキャビンを実現している。エンジンは1.5リットルと1.7リットルの直列4気筒SOHC・VTECが主役だ。

ホンダ シビック 7代目 ハイブリッドホンダ シビック 7代目 ハイブリッド

2001年12月、『インサイト』から譲り受けた ホンダ独自のハイブリッドシステム、IMAをフェリオに移植したシビックハイブリッドを仲間に加えている。注目のパワーユニットは、気筒休止システムを組み込んだ1.3リットルの直列4気筒SOHC・VTECだ。モーター走行はしないが、10・15モード燃費29.5km/リットルという優秀な燃費を叩き出した。

ホンダ シビックタイプR(2001年)ホンダ シビックタイプR(2001年)

また、ハイブリッド車の前に第2世代のタイプRを送り込んでいる。イギリスから3ドアモデルを輸入し、心臓は排気量1998ccのK20A型直列4気筒DOHC・i-VTECだ。これに小気味よく決まる6速MTを組み合わせた。サスペンションは新設計のストラットとダブルウイッシュボーンの組み合わせで、これを専用にチューニングしている。

8代目 :大幅なモデルチェンジとともに通称名も消滅(2005年~)

ホンダ シビック 8代目ホンダ シビック 8代目

7代目シビックは海外では好調な販売を記録した。だが、日本では販売が伸び悩んだ。そこで2005年9月にベールを脱いだ8代目は、大胆な戦略に打って出たのである。伝統のハッチバックをカタログから落とし、フェリオのサブネームも消し去った4ドアセダンだけに絞り込んでしまった。ボディサイズは全幅を1755mmまで広げ、ついに3ナンバー枠へと踏み込んでいる。

エンジンは可変吸気量制御を導入した新設計のR18A型直列4気筒SOHC・i-VTECだ。ハイブリッド車は無段変速の電子制御シフトだが、ガソリン車にはクラス初の5速ATを用意している。そして2006年4月にK20A型DOHC・i-VTEC搭載車を仲間に加えた。5速ATにパドルシフトを採用したSマチックの採用がニュースだ。

ホンダ シビックタイプR(2007年)ホンダ シビックタイプR(2007年)

2007年3月にはタイプRを第3世代へとモデルチェンジさせている。初めてセダンボディをまとったFD2型タイプRは、進化型のK20A型直列4気筒DOHC・i-VTEC(225ps/21.9kg-m)を搭載した。サスペンションはサーキットでの走行を意識してハードに締め上げられている。また、ヨーロッパ仕様の8代目シビックをベースにした3ドアのFN2型タイプRも、2009年秋に限定販売の形で登場した。日本向けモデルは少しマイルドだから「タイプRユーロ」を名乗り、グランドツーリングカー的な味わいが強い。

ホンダ シビックタイプRユーロ(2007年)ホンダ シビックタイプRユーロ(2007年)

シビックとタイプRは気持ちいい走りのスポーツセダンだった。だが、ミニバンとクロスオーバーSUVの台頭によってシビックの販売は頭打ちになっている。海外での販売は好調だったから、日本市場より海外での販売に力を注ぐことにした。シビックが日本で販売を休止するのは2010年だ。

9代目 :日本ではタイプRのみの限定販売(2011年~)

ホンダ シビックタイプR(2015年)ホンダ シビックタイプR(2015年)

9代目シビックは2011年に北米でベールを脱ぎ、小型車部門でベストセラーに輝いている。安全性能も高かったため日本でも販売が期待されたが、最終的に販売は見送られた。ただし、2015年10月、ヨーロッパ仕様をベースにしたFK2型シビックタイプRの発表がアナウンスされ、ファンを喜ばせている。この第4世代からはレーシングテクノロジーを駆使して開発された日本仕様と同じ共通スペックだ。海外でも買えるようになったが、日本では750台だけの限定発売だった。

10代目 :ハッチバックとセダンの2タイプで完全復活(2015年~)

ホンダ シビック 10代目ホンダ シビック 10代目

第4世代のタイプRが日本で大きく報道されているとき、北米では10代目シビックがベールを脱いでいる。それから2年後の2017年7月、日本仕様のシビックが復活の狼煙を上げた。イギリス生産の5ドアハッチバックとタイプR、埼玉製作所寄居工場生産の4ドアセダンが用意され、9月から発売を開始する。タイプR以外のシビックに搭載されるのは、1.5リットルの直列4気筒DOHC直噴ターボだ。無段変速のCVTに加え、6速MTも選ぶことができた。また、運転支援の安全装備である「ホンダセンシング」も装備する。

第5世代となるFK8型タイプRは、K20C型直列4気筒DOHC・VTECターボを受け継ぎながらポテンシャルを一段と高めた。ニュルブルクリンクの北コースでFF車最速の称号を手にしたのが、このFK8型タイプRだ。直噴ターボは低回転からパンチがあり、しかも高回転まで軽やかに回る。6速MTは小気味よいシフトフィーリングに磨きをかけ、ホンダ車として初めてレブマッチシステムも採用した。2020年10月に登場した限定販売のリミテッドエディションは、気持ちいいハンドリングがとても分かりやすい。

11代目 :半世紀の時を超え、進化を続ける最新モデル(2021年~)

ホンダ シビック 11代目ホンダ シビック 11代目

11代目のシビックは2021年6月にワールドプレミアされ、8月に正式発表されている。新世代ホンダアーキテクチャ採用の第一弾で、日本仕様はハッチバックだけの設定だ。エンジンは1.5リットルのL15C型直列4気筒DOHC直噴ターボを受け継いでいる。だが、シビック生誕50周年の節目となる2022年の4月にハイブリッド車のe:HEVを追加投入すると発表し、7月に発売に踏み切った。e:HEVは2リットルの直列4気筒DOHC直噴エンジンに2つのモーターを組み合わせ、燃費がいいだけでなく走りの実力も非凡だ。新型タイプRの登場もカウントダウンとなった。

ホンダ シビックタイプR(2022年)ホンダ シビックタイプR(2022年)

半世紀にわたってホンダの屋台骨を支えてきたのがシビックだ。今では世界10の工場で生産を行い、170を超える国々で販売されている。50年間の累計販売台数は2800万台に達した。年間の販売台数は平均して50万台を軽く超えているのだから凄さが分かるだろう。電動化へと舵を切る、この先の50年もシビックはファンとともに歩み続け、いくつもの新たな金字塔を打ち立ててくれるはずだ。次の偉業を心待ちにしたい。

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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