【マツダ MX-30】将来を見据えたスリートーンと実績ある観音開き…前田育男常務[インタビュー 後編]

マツダ MX-30(東京モーターショー2019)
  • マツダ MX-30(東京モーターショー2019)
  • マツダ 前田育男 常務取締役(デザイン&ブランドスタイル担当)
  • マツダ 前田育男 常務取締役(デザイン&ブランドスタイル担当)と千葉匠氏(右から)
  • マツダ MX-30(東京モーターショー2019)
  • マツダ MX-30(東京モーターショー2019)
  • マツダ MX-30(東京モーターショー2019)
  • マツダ MX-30(東京モーターショー2019)
  • マツダ MX-30(東京モーターショー2019)

マツダ初の電気自動車、『MX-30』はインテリアやカラーのデザインでも従来にないデザインにトライしている。例えばショー展示車のボディカラーは、『CX-3』で初採用したセラミックメタリックを基本に、ピラー周りはガンメタ、ルーフはブラックというスリートーンだ。

「このクルマならやってもよい」と「このクルマだからやりたい」

マツダ MX-30(東京モーターショー2019)近年はコンパクトカーを中心に、ツートーンを設定するのが世界的なトレンド。しかしこれまでマツダ車にツートーンはなかった。伝統的にフォルムのカタマリ感・一体感を重視してきたからだが、「このクルマならやってもよいかなと考えた」と、マツダのデザインを率いる前田育男 常務執行役員。「生産技術のストックにもなりますからね」。

ツートーンは塗装工程でマスキングを行わなくてはいけない。いったんクルマを塗装ラインから外し、手作業でマスキングしてからラインに戻す。膨大な手間がかかるが、MX-30でそのノウハウを蓄積したいというわけだ。

「将来に役立つかな、という思いも少しある」と前田氏。将来を見据えた最初のトライで、ツートーンよりさらに手間のかかるスリートーンにチャレンジしたのは彼らしいところだ。新世代魂動の第1弾となった『マツダ3』ではプレス成形の難しい微妙な曲面を駆使しつつ、生産技術や工場との共創活動を地道に続けてモノにした。

マツダ MX-30(東京モーターショー2019)ドアは観音開き。『RX-8』以来、久しぶりのフリースタイルドアだ。

「普通のリヤドアもトライしたんです」と前田氏。「でも、これは乗る人が自然体ですごせることを狙ったクルマ。普通のドアでは空間に開放感がなくて、そんなふうに見えなかった。開放感を表現するために、どんな手段があるのか? RX-8でフリースタイルドアをやって、技術的なノウハウがある。これなら……、と提案して採用になりました」。

とはいえフリースタイルドアには、フロントドアを開けないとリヤドアを開けられない不便さがある。バッテリーの生産能力などを考慮してMX-30があまり売れすぎないように、あえて不便なフリースタイルドアを採用したという穿った見方もできるのだが……。

それを前田氏は一笑に付し、「マツダは1車種ごとに全力投球ですから、売れなくていいなんて考えない。欧州のCO2規制を考えると、MX-30にはそれなりの需要を期待しています。確かにEVは利益が薄いけれど、あくまで商品コンセプトに即してフリースタイルドアを採用しました」。

開放感を表現するフローティング・コンソール

マツダ MX-30(東京モーターショー2019)インテリアデザインの「売り」は、マツダが事前に公表した写真にもあったセンタコンソールだが、その前にベントグリルの配置について前田氏に聞いてみた。現行『CX-5』以降のマツダ車はメーターの両サイドに、左右対称の位置に左右対称形状のベントグリルを置いてドライバーオリエンテッド感を表現することを原則にしてきたはずだが、MX-30のそれは左右対称ではない。

「従来の原則とは違うことにチャレンジしたい。ドライバーオリエンテッド感をあまり強くせず、空間全体が乗る人を包むようなイメージにしました」。

注目のセンタコンソールは、いわゆるフローティング・スタイル。その裏側の空洞が、インテリアの開放感を強調する。マツダでは初めてのフローティング・コンソールだが、もはや珍しいデザインではないし、せっかくやるならもっと薄型に見せたいところだが…。

「デザイン提案の段階では、もっと薄かったんですよ」と前田氏。当然だろう。EVだから、コンソール上のシフトセレクターは機械的なリンクのないシフト・バイ・ワイヤ。それを活かして薄型のフローティング・コンソールにするのが、普通の発想だ。

「そこがマツダの真面目なところで、コンソールを踏みつけて全体重をかけてても大丈夫な強度を持たせているんです。そのために厚くなったので、乗る人の脚が当たっても痛くないように、コンソールの両サイドにソフトパッドを付けました」。

このコンソールは二段構えのデザイン。フローティング風の上段があり、その下にコルク素材を敷き詰めた下段がある。

コルク加飾が示すマツダのルーツ

マツダ MX-30(東京モーターショー2019)クルマのインテリアの加飾にコルクを使うのは珍しい。コルクは高級感のある素材ではないからだ。しかし弾力があって触感が優しく、日常生活のなかではお馴染みの素材。「自然体」を問うMX-30の商品コンセプトに相応しいと思えるが、それだけではない。

「マツダのルーツは東洋コルク工業。マツダはコルク・メーカーからスタートしたんです」と前田氏。「その後、マツダは重工業にシフトしてコルク事業を売却したのですが、それを買い取った会社がこのMX-30のコルク加飾を作ってくれています」。

インタビューを終えてから調べてみた。マツダは1920年、東洋コルク工業として創業し、27年に東洋工業に改称して軍需で成長しながら3輪トラックを生産。戦時下の1944年にコルク事業を内山コロップ製造処(現・内山工業)に売却した。コルクのシール性に着目した内山工業は戦後、オイルシールなどを開発して自動車産業に貢献。おそらくマツダとも継続的に取引があっただろう。その内山工業が今回のコルク加飾を手掛けているようだ。

ワインの栓でお馴染みのコルクは、コルクの木の樹皮を剥いで作る。樹皮を剥がされたコルクの木は10年ほどで元に戻るので、長い目で見ればサステイナブルな素材だ。しかもMX-30のコルク加飾の場合、ワインの栓を型抜きした残りのコルク樹皮を細かく粉砕し、樹脂を混ぜて加熱加圧成形している。残り物の再利用だから、環境負荷はさらに小さい。

コルクはEVのMX-30に相応しい素材であり、マツダのルーツに根差す素材でもある。MX-30はすでに欧州で受注を始めており、来年後半からデリバリーする計画とのことだが、来年=2020年はマツダの創立100周年。日本の広島で誕生した会社の100周年を日本人が祝うなら、そのルーツに由来するコルク加飾を備えたクルマがそこになくてはいけない。MX-30はきっと2020年末までに日本で発売されるはず……、と思うんだけどね!

《千葉匠》

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