本田技術研究所創立50周年企画「自分達が創りたいクルマ」の公募で生まれたのがこの『S660』。市販に先立ち、ミニサーキットでプロトタイプの試乗会が開催された。S660に用意されるエンジンは64馬力のターボ付き3気筒。試乗車はこれにCVTのミッションを組み合わせている。日本ではオープンカー・イコール・スポーツカーというイメージだが、世界に目を向ければオープンカーは決してスポーツカーだけでない。気持よくオープンエアモータリングを楽しむクルマも多く存在している。S660のATはそうした種類のクルマとしてじつにいいフィーリングを持っている。試乗したのがサーキットだったのでATだとフラストレーションが残るのだが、落ち着いてちょっとアクセルを戻し気味で走ってみると、風を感じるドライブができる。車内に風がガバッと入って来ることはなく、適度な量と強さで入って来る。運転席の助手席の間に開閉式の小さなリヤウインドウがあり、後ろ側から入っている風を調整できる。CVTはデフォルトとスポーツという2つのモードを持つ。ノーマルでなく、デフォルトと呼ぶのがいかにも今風。デフォルトモードではエンジン回転数に対して速度が一部遅れるようなセッティング、スポーツにするとより直線的になる特性。アクセルを全開にして加速を楽しんでいると違いはあまり感じることはできない。CVTは7分割されマニュアル状態として使うことが可能。従来の同様の方式に比べてシフトスピードが上がっているとのこと。たしかにパドル操作による遅れがなく、スムーズにマニュアルライクなドライブを楽しめる。S660はターボのブローオフサウンドをあえて聴かせるセッティングだが、MTよりこのATのほうがより「プッシュン音」が大きく聞こえた。しかしながら、私はCVTならそのCVTらしさを受け入れて変速操作というものを捨てて走ったほうがいいと思う。『フィットハイブリッド』などに採用されているDCTを搭載するのも面白い感じがするが、それはスポーツカー方向への進化。2ペダルモデルはCVTのままで、オープンエアを楽しむクルマを突き詰めるのがいいのだろう。■5つ星評価パッケージング:★★★★インテリア/居住性:★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★★諸星陽一|モータージャーナリスト自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。
小さな車体に大きな感動! スペーシアカスタム×carrozzeria Xの勝利方程式[Pro Shop インストール・レビュー]by AUDIO.VISUAL.SECURITY FIST 後編 2025年9月13日