【池原照雄の単眼複眼】来期黒字転換への処方箋

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10社中7社が最終赤字に

自動車メーカー上場10社の2009年3月期業績の最新修正予想が出揃った。トヨタ自動車が59年ぶりの赤字に転落するなど、最終損益(純利益)ではホンダ、スズキ、ダイハツ工業を除く7社が赤字となる。

こうした総崩れ状況は、デフレや労使紛争で業界が混乱していた戦後間もない1949年当時以来だ。現時点で来期(10年3月期)を見通すのは難しいが、まずは赤字からの脱却が最大の命題であり、その処方箋も見えてきた。

各社は秋以降、これまでにホンダが4回、トヨタが3回と、短期間に下方修正の繰り返しを余儀なくされた。世界市場の後退は、津波の前に一瞬、潮がひくような異常なスピードだった。為替相場で「円の独歩高が急激に進んだ」(トヨタの木下光男副社長)ことも日本メーカーの業績を直撃している。

◆市場は底ばいが続く

今期はもともと原材料費の高騰や円高、さらに米国市場の減速といった悪化要因があり、大幅な減益が見込まれていた。期首時点(4 - 5月)ではトヨタ、ホンダ、日産の大手3社は、純利益で2 - 3割程度の減益を予想していた。

それでも、全社が営業利益、純利益ともに黒字見通しであり、10社の単純合計による期首時点の純利益予想は約2兆4000億円。それが最新予想では6320億円の赤字であり、ざっと3兆円もの利益が吹き飛んだ勘定になる。

来期の各社の回復を占ううえでは、米国の市場動向が大きい。年明け後も低空飛行が続いているが、トヨタの木下副社長は「底なしかというと、そうではなく(現状の)底のレベルが続くということだろう」と観測する。

スズキの鈴木修会長兼社長も世界の新車需要は「4 - 6月期に底」としたうえで、その後は「しばらく底のままだろう」と、ほぼ同じ見解だ。各社は、少なくとも年内に際立った回復は困難との構えで来期に臨むことになる。

その前の今期中にやっておくことは、膨らんだ在庫の圧縮と底ばい状態の市場にアジャストするための減産だ。1 - 3月はすさまじい勢いで国内外の減産が進められている。期首時点の生産計画と比較した今期の減産規模は、業界全体でざっと400万台に及ぶ。

◆固定費、変動費の両面からメス

4月以降も前期比での減産は続くものの、在庫調整が一段落すれば1 - 3月期よりは稼動レベルは改善されるだろう。そのうえで、来期の黒字転換のカギを握るのは、固定費および変動費両面の削減による損益分岐点の引き下げだ。

トヨタの場合、来期は10%の固定費削減を打ち出した。金額にして約5000億円という。設備投資を過去3期の1兆5000億円レベルから1兆円を下回る規模に抑制、固定費のひとつの柱である減価償却費を圧縮する。

同時に人件費・労務費についても、国内では一般従業員を含む賞与などの削減、海外ではワークシェアリングの導入などを進める。原材料費や調達部品が大半を占める変動費については、原価低減活動に力点を置く。原材料費は低下しており、来期の数少ないプラス要因となる。

こうした取り組みは各社に共通している。いずれも従業員やサプライヤーなどの痛みを伴うが、赤字からの脱却には不可避だ。予断は許さないものの、少なくとも黒字転換への処方箋はできてきた。

《池原照雄》

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