今回のワンポイント確認は、「腹にひびくドロドロ音と豪快な加速がなによりも魅力の水平対向エンジン搭載のクロストレックは、(ストロング)ハイブリッドになっちゃって大丈夫なの?」である。
◆疑ってやさぐれて申し訳ありませんでした
エンジンをかけた瞬間から、腹の底に響き続けるドロドロ音。アクセルを踏んだ時、『ぐわっ』という効果音の文字を書き入れたくなるほどの加速感。水平対向エンジンは、感性を刺激する。この独特のエンジン音を聞くだけでアドレナリンが噴出してくるのは、私だけではないはずだ。
だというのに、数あるハイブリッドの種類のなかでも走りを能動的に支えるシステムであるハイブリッド、スバルではわかりやすく、ストロングハイブリッドと呼ぶ「S:HEV」にしたら、そのウキウキポイントがすべて消されてしまうのではないか。

だって、スタートスイッチをオンにしても、システムが起動するだけでドロドロ音は聞こえてこないし、走り出しはモーターが支えるので静かにしゅーっと、だし、加速は……どうなの? と、私の脳内は「?」の嵐。終わったな、スバル。正直、心境はやさぐれ状態だった。
そして、試乗。最初の一分で、私は猛省した。疑ってやさぐれて申し訳ありませんでした。水平対向エンジンの高揚感は、しっかり受け継がれていたのである。
◆やだ、なにこれ、気持ちいい

まず、スタートスイッチ。オンにしても、しーんとしているので一瞬、戸惑うものの、アクセルを踏むとすぐに、ドロドロ……と聞きなれた低音が響きはじめ、安心感に包まれる。次に、加速はどうか。すると、前に押し出される感覚は、これまでの身になじんだあのたくましさだ。いや、加えてモーターがアシストするおかげで、質のいい加速感へとスムーズさがプラスされているのである。素直な気持ちを表すと以下のとおり。
やだ、なにこれ、気持ちいい。
疑いが貼れるとオセロの黒が白に一気に変わるように、すべてが好ましく感じられてくる。信号待ちでエンジンが止まったら、車内が静かで居心地がいいし、エンジンが再スタートするときは、モーターが上手につないでくれるので、車速ゼロからのぎくしゃく感がないし。ついでに、EVモードもあるので、早朝に家を出るときも、ご近所への騒音を気にしてそそくさと走り出す必要もない。
◆気になる燃費は

気になる燃費は、700kmちょいの距離を高速9:郊外1:都心部1と走って、メーターの数字はリッターあたり18.1km。カタログ値(18.9km)と遜色ない。実測は、リッターあたり16.3kmだったけれど、これは、新東名高速道路の制限速度120km/h区間をほぼすべてこの速度で走り切ったことで数字が落ちた可能性は否めない。100km/h巡行なら、絶対にもっといい。
さらに心強いのは、燃料タンクが63リットルあること。近年、ガソリンスタンドが減る傾向にあり、山間部方面へと向かうスバリストは気にする点だけれど、ワンタンクの走行距離が長く安心して移動できたことはお伝えしたい。
◆結論
「腹にひびくドロドロ音と豪快な加速がなによりも魅力の水平対向エンジン搭載のクロストレックは、(ストロング)ハイブリッドになっちゃって大丈夫なの?」は、ぜーんぜん大丈夫。むしろ、さらに気持ちよく安心して駆け抜けられるクルマになっちゃった、である。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。