◆リフト1つの小屋からスタート、今では西を代表するショップの1つに
老舗であり、今も最先端チューンを提供し続ける「フェニックスパワー」。古くはドラッグレースや谷田部の最高速アタックに挑み、現在もサーキットでのタイムアタックを行う。代表の横山耕治氏は今も最前線でクルマづくりを行い、そして今、新たなチャレンジを行っている。

1986年7月に福井県でオープンしたのが、フェニックスパワーの前身であるガレージ福井SPL。もともと存在していたガレージ福井というショップの顧客だったという横山氏。だが、そのオーナーが急遽廃業。ならばと、ショップスタッフとともにお店をオープン。名前にSPL(スペシャル)を加えて「ガレージ福井SPL」としてオープンした。
オープンしたお店は6m×6mの小屋にリフトは1つ。スタッフはメカニック数名と横山代表。

「ほんとに小さな土地を借りて、そこに小屋を建てて、トイレもなかった。近所の公園の公衆トイレがうちのお店のトイレだった」というほどの規模だった。そこから4年ほどで現在の福井店の430坪を借り、その小屋もそこに移設したという。

その後、店名をフェニックスパワーに改称。福井店に加えて京都店もオープン。そのどちらもライトチューンや車検整備などから、ハードなチューニングまで行う。エンジンECUの制御は横山代表が行うため、福井店と京都店を往復しながら日々セッティングを行っている。
◆全国有数のチューニングショップが名を連ねる最速集団「CLUB RH9」とは何者なのか?

その歴史の中でひとつのキーとなったのが1996年の「CLUB RH9」の設立である。当時HKS主催のドラッグレース日本一決定戦があり、その上位である9秒台をマークしたお店でグループを作ったのが始まり。RH9とはRecord Holder 9の略で、9秒台の記録を持つお店を意味した。
「当時はショップ同士が正直言って仲が悪かった。あの頃の谷田部の映像とか見てもらえると、ショップ同士で談笑とかしてないでしょ。お互い敵という感じでピリピリとしていたんです。でもそれではダメだと。ショップ同士で情報交換して、壊れないチューニングをユーザーに提供したほうがいいのではないかと」

「こっちのお店でエンジン壊して、あっちに行けば大丈夫という状態では、ユーザーがそもそもチューニングが嫌いになってしまう。ならば、商売ではライバルかもしれないけど、グループを作って情報を共有してハイレベルなチューニングを提供して、みんなに楽しんでもらおうというのがRH9の発端です」
現在では全国37店がRH9に加盟。定期的に勉強会を開催し、チューニング情報を共有している。
「現代のクルマはECUチューンがどんどん難しくなっています。そこでパーツメーカーに最新モデルのECUチューンのポイントをレクチャーしてもらったり、ショップ同士でノウハウの交換をしています。またHKSなどの大手メーカーへの研修会を行い、パーツやセッティングへの理解を深めています。

加盟店同士であればそういった技術レベルの均一化が図れているので、例えばユーザーが遠方に引っ越した場合でも、近くのRH9加盟店を自信を持って紹介することができます。」
◆サーキットで最速の性能を発揮する「PROXES R888RD」、R35GT-R対応サイズでタイムを狙う

そんな技術の見せ場であるのがサーキットでのタイムアタック。約20年前からRH9として走行会&タイムアタックを開催。ショップ同士のタイムを競い合うことで新たなセッティングや技術革新が行われてきた。だが、近年そこで問題になっているのがタイヤの高騰化である。
RH9タイムアタックでは特にR35GT-Rクラスが人気を集める。20インチの極太サイズ(285/35/R20)を使うR35では、タイヤ4本で40万円を超えることもある。もはやホイールよりもタイヤのほうが高いことさえあるほど。1000psオーバーの日産『GT-R』ではタイヤが受ける負荷も大きく、本当にベストタイムが望めるのは1周のみ。筑波サーキットを例にすると、次の周からはベストラップから0.3~0.5秒はタイムが落ちてしまう。でもタイムアタック自体は続けたい。そんなジレンマにとらわれていた。

そこで出会ったのがトーヨータイヤだった。そのような事情を把握したトーヨータイヤは、R35 GT-Rサイズの開発を開始。もっと良いタイヤを作ろうという話が進み、その開発の場としてRH9タイムアタックが1つのステージになったのだ。
現在RH9タイムアタックのR35クラスはTOYO TIRES「PROXES R888RD」のワンメイク化がされている。これまでのハイグリップタイヤに比べて価格は数段抑えられている。

「ラジアルタイヤですので、これまでのSタイヤのもっともコンパウンドが柔らかいタイヤよりはグリップは劣ります。でも、びっくりするほどタイヤの温まりもよく、一般の方にも使いやすい特性です。グリップ力もプロドライバーが驚くほど高く、ラジアルとして十分高いものがあります。徐々にユーザーにも浸透してきています」と横山代表は言う。
積極的な技術開発に向けたタイムアタック参戦だが、ショップの負荷は無視できないほどにさまざまなものが高騰化している。そこで新たなタイヤを取り入れタイムアタックを継続、よりハイレベルなチューニングをユーザーに提供することで、ユーザー側は壊れずにサーキットを楽しむコストパフォーマンスを手に入れることができる。そういった新たなチャレンジは続いている。
◆ストリートではRZ34も盛り上がり始める「PROXES Sport 2」はR35GT-R純正サイズを拡充

国産スーパースポーツであるR35GT-Rで、新たなスポーツタイヤとして注目されるR888RDを積極的に取り入れるフェニックスパワー。その他のストリート向けのタイヤもトーヨータイヤを現在テストしている。

「PROXES Sport 2はリーズナブルな価格と性能のバランスが良いですね。街乗りメインにするならすごく良い」と横山代表も太鼓判を押す。R35GT-R向けには、純正サイズ(フロント:255/40/R20、リア:285/35/R20)のプロクセス スポーツ2が新たにラインナップに加わった。サーキット派ではないユーザーには、トータルバランスにすぐれたプロクセス スポーツ2がベストマッチだろう。
そして徐々にユーザーに納車がはじまり、街で見かけることも増えてきた日産『フェアレディZ』(RZ34)。ECUチューンがすでに確立され、ターボエンジンはその効果が大きい。ノーマルの420psから500ps程度まで引き出すことが可能。さらにスポーツ触媒やマフラーなどの排気系チューンを施せば、モアパワーも可能である。

オススメのチューニングは純正の水冷式インタークーラーは熱がこもりやすいので、トラストの空冷前置きインタークーラーの装着とそれに合わせたECUの書き換え。フェニックスパワーの得意とするECUチューンはシャシダイで性能を確認しながら、横山代表が手作業で行う。増大したパワーに合わせてATSカーボンツインクラッチ、OS技研スーパーロックLSDをセットする。
足まわりはアラゴスタ製サスをベースにしたオリジナル仕様。バネレートはフロント28kg/mm リア18kg/mm。ハイレートに思えるがRZ34はレバー比のあるフロント:ダブルウィッシュボーン、リア:マルチリンク式サスペンションの組み合わせでしなやかにストローク。

街乗りでもしっとりとした乗り心地に、扱いやすい純正のようなクラッチと、チャタリング音ゼロのLSDの組み合わせで極めて快適に高級感ある走りを実現。それでいてアクセルを踏み込めばノーマルから数段トルクアップした獰猛な加速を楽しめる。見た目にはシックな仕上がりも、大人なスポーツサルーンとして完成度の高差を感じることができた。
◆今年のRH9走行会は11月19日@筑波と12月4日@鈴鹿を予定!

今年のRH9走行会は2回予定されており、11月19日の筑波サーキット2000と12月4日に鈴鹿サーキットで開催を予定。筑波はショップタイムアタックのみで、鈴鹿はタイムアタックとユーザー走行会も行われる予定だ。

昨年12月のRH9走行会(鈴鹿サーキット)では2:05:246で見事優勝を獲得したフェニックスパワー。今年はいよいよ4秒台へと記録を伸ばすのか、はたまたその記録を凌駕する刺客が現れるのか、鈴鹿サーキットでその真相を確かめたいと思う。