ヤマハ発動機は「電動技術への新たな挑戦」として、大型バイクへの搭載を想定し開発を進めているプラグインハイブリッド(PHEV)技術を公開した。公式Youtubeチャンネルで16日に公開された動画では、プロトタイプ車両の姿や走行シーンを見ることができるほか、開発者の意気込みが語られている。
ヤマハはモーターサイクルの開発に「FUNの追求」を掲げる。これは伝統的なアプローチながら、「その価値を追い求めることは、低炭素社会の実現に向けたドライブにもなるだろうと考えている」と説明する。今回公開されたPHEV技術は「ヤマハ発動機のEVへの取り組み・第2弾」で、第1弾ではミドルクラスのスクーターへの搭載を想定したシリーズパラレルハイブリッド(SPHEV)技術を紹介していた。

いずれも従来の内燃機関(エンジン)バイクの車体から大きく変えず、エンジン車ならではの高揚感を活かしながら電動化を果たそうというもの。バッテリーとモーターのみのフルEV(BEV)では、エンジン車並みの航続距離を実現するためには大容量のバッテリーを搭載しなければならないが、バイクは四輪車以上に搭載スペースの制約があるほか、大きな重量物の搭載がバイクならではの走る楽しさを阻害してしまうという課題がある。充電インフラの不足を不安に思うユーザーも少なくない。
これに応えるヤマハの回答が、エンジンとモーターを搭載するSPHEVおよびPHEVシステムだ。
今回公開されたPHEVはコンパクトなレイアウトにこだわり、エンジンにモーターとバッテリーを追加しても従来の製品と同等のサイズ感を実現するという。プロトタイプ車両は新型『MT-09』をベースにしていると思われるが、パワートレイン部分を含めサイズはほぼ従来通りと言って良さそうだ。ドライバビリティの特性も維持し、「エンジン車の良さを活かしながら電動車の価値をアドオンしたモーターサイクル」だとヤマハは説明する。走行状況に応じて、低速時にはモーター、高速時にはエンジン、さらなるパワーを解放する際にはハイブリッドと、2つの駆動を自動で切り替えながら走行することができる。

モーター走行からエンジン始動へのつながりもシームレスで違和感がなく、モーターとエンジンのサウンド変化には「心が昂る楽しさがある」とする。動画では実際にそのサウンドの変化する様子を聴くことができる。
パワートレイン開発本部の神崎裕也(崎は“たつさき”)氏は、「大型二輪車は何のために乗るのかと言ったときに、やっぱりFUNの面、走りを楽しみたいというお客さんがいて、そこをスポイルしてしまうと乗る意味がなくなってきてしまうと我々は考えていますので、そこは残した中でEVという新しいもの、特性をアドオンしたときにどういった価値が生まれるか。僕らの意思として、このパッケージの中で収めなければ大型二輪車としてのFUNの部分を消してしまうという風に考えていたので、最初の構想の中でこのパッケージの中に収め切るというところをスタートに始めていた」と、開発にかける想いを語る。

また同じくパワートレイン開発本部の稲満幸浩氏は、「ライダーが思っている、想像以上の加速を出せるっていうところが開放感につながるのかなと思っています。エンジンとモーター、両方で走っているところで楽しさを演出する一面と、モーターだけで静かにまったりと走れるっていう一面。二面性を持っているってところがこの車両の面白さでもある」と、このPHEVの魅力を語っている。
動画のエンディングには“What's coming next”(次は何がくるのか)という文字とともに、これまでの2台とは全く異なるレイアウトで、カーボンファイバーのカウルを装着していると思われる車両の一部が映される。SPHEV、PHEVに続く第3弾は、いよいよBEVか、それとも。市販化の時期なども含め、続報に注目だ。
■電動技術への新たな挑戦(2)プラグインハイブリッド
■電動技術への新たな挑戦(1)シリーズパラレルハイブリッド