【フィアット 500C 3700km試乗】洗練とはおよそかけ離れているが、それがいい[後編]

洗練性という言葉からはおよそかけ離れているが

MTと思って運転すればいい

クルマ任せではダメ?工夫の積み重ねでリッター28kmも

居住性・ユーティリティは絶望的、と思いきや

フィアット500Cツインエアのフロントビュー。
  • フィアット500Cツインエアのフロントビュー。
  • フィアット500Cツインエアのリアビュー。
  • フィアット500Cツインエアのフェイス。
  • フィアット500Cツインエアのテールエンド。
  • 左1本出しの排気管には長円形のマフラーカッターが付く。
  • 給油口のキャップ開閉はノスタルジックなキー挿し方式。
  • タイヤは185/55R15サイズのコンチネンタル「エココンタクト6」。滑りのインフォメーションが豊かで峠でも十分楽しい。
  • 前席。デザインはデビュー当初から高評価爆発だった。初期型は耐経年劣化性に難があったが、今では解消されているという。

欧州Aセグメントミニカークラスのオープントップモデル、フィアット『500C』での3700kmツーリング試乗記。前編『単なるセミオープンカーではない!心の底からシビレるクルマ』では、そのスタイリングや電動オープントップ、走りについてレビューした。後編はまずパワートレインのパフォーマンスから。

◆洗練性という言葉からはおよそかけ離れているが

鳥取・境港の水木ロードにて。一反木綿をあしらった店が見える。鳥取・境港の水木ロードにて。一反木綿をあしらった店が見える。

ロードテスト車のパワートレインは並列2気筒875ccターボ「ツインエア」エンジンにシングルクラッチ式の機械式自動変速機「デュアロジック」の組み合わせ。スペックは最高出力63kW(85ps)/5500rpm、最大トルク145Nm(14,8kgm)/1900rpm。エコモード時はそれぞれ77ps、10.2kgmに抑制される。欧州市場では比出力リッター100ps超となる最高出力105psのホットバージョンもあったが、日本には導入されなかった。前編でも述べたが、イタリアではツインエアはユーロ6.4排出ガス規制の締め付けですでにディスコンになっており、現在は輸出仕様のみとなっている。

このパワートレイン、一般的な評価のモノサシで言えば、洗練性という言葉からおよそかけ離れたものだ。ツインエアは2気筒ゆえの1次振動(縦方向の微振動)がモロに出るし、騒音レベルも決して小さくはない。動力性能的にもホットハッチのような速さがあるわけではない。85psというパワーは車重1040kgに対して余裕しゃくしゃくというわけではなく、パワーウェイトレシオは12.2kg/psと平凡な数値である。

ところがである、この原始的なテイストのツインエアと500Cの取り合わせはなかなかに魅力的なものがあった。“バビイィーン”という2気筒特有のビートを伴うちょっと濁ったサウンドは現代の四輪車においては唯一無二に近いものがあり、オープンエア時にメカニカルサウンドやエキゾーストノートが車内にダイレクトに侵入してくるのを聞くと、それだけで何か特別という気分に浸れる。速力についても絶対的なパワーは大したことはないのだが、意外に回りたがる性格なうえに直結型の有段変速機ということも手伝ってスロットルを踏んだ瞬間のパンチが結構効いており、回転を上げ気味に走ると乗っている本人的には超ゴキゲンという感じである。

このエンジン、決してローテクではない。吸気バルブをカムシャフトではなく油圧で動かす独特の動弁系を持ち、バルブの開閉タイミングやリフト量を自在に制御できるというのが特徴。一般的なオットーサイクルからバルブ早閉じミラーサイクル、バルブ遅閉じミラーサイクル、さらにはアクセルオフ時の気筒休止まで自由自在である。その観点ではツインエアは一応ダウンサイジングターボという位置付けのユニットだが、キャラクター的には並列2気筒を積む往年の名車「NUOVA500」のトリビュートという色合いが強く、それを現代的なパワーと燃費で乗れるというのがコアバリューと言える。

◆MTと思って運転すればいい

クロームメッキメタルをあしらったシフトレバー。操作感はいかにも機械的なフィール。Pレンジがなく、駐車時はMT車のようにRに入れる。クロームメッキメタルをあしらったシフトレバー。操作感はいかにも機械的なフィール。Pレンジがなく、駐車時はMT車のようにRに入れる。

組み合わされるデュアロジック変速機は5速MTのギアチェンジとクラッチ操作を自動化したもの。筆者がデュアロジック車に乗ったのは500の日本デビュー直後以来だったが、当時の生煮えな変速フィールとは見違えるほどに洗練されていた。

シングルクラッチ変速機はギアシフト時の失速感が付きものだが、500Cのそれはシフトチェンジ前のアクセル開度の抜け、シフトチェンジ、その後の再加速という一連の流れが大変柔らかい。運転者の意図と加減速Gのズレを詰めればここまで不自然さを解消できるものなのかと感心しきりだった。手動変速の受け入れも良好。シングルクラッチ自動は採用例が少ないため他車との比較が難しいのだが、2014年に乗ったスズキ『アルト』、2016年に乗ったフォルクスワーゲン『up!』より格段に優れていた。

ただし、通常のトルクコンバーター式ATやCVTに比べると洗練性では明確に劣る。何となれば、発進が苦手なのだ。市街地走行比率の高い日本ではこれは見逃せない弱点と言える。普通に走る時は問題はないのだが、慌て気味に発進するとブレーキリリースでアイドリングストップ状態からエンジンが再起動後、半クラッチになりきらないうちにエンジン回転が上がってしまい、ジャダー(ガクガクという振動)が起こる。

それがより顕著に出るのは坂道発進。500Cには一応ヒルスタートアシストが装備されているのだが、その動作がまことに不確かで、普通にブレーキをリリースするとずり下がってしまうことがままある。その状態でクラッチミートが起こるとやはりガクガクとした動きが出る。

ただ、回避法は簡単至極。クルマ側の自動制御をアテにせず、前進、後退とも傾斜地ではMT車のようにサイドブレーキを併用して発進すればいい。ブレーキリリース後、半クラッチになったのを体感しつつアクセルペダルを踏みこととサイドブレーキ併用をやるのとやらないのとでは、変速機にかかるストレスに大差が出るような感触があった。クラッチ摩耗や故障回避のためにもやったほうがよさそうに思われた。

もう一点、ギアを後退に入れるのにしばしば失敗するというのも弱点。一般的なAT車しか乗ったことがないと慌てるかもしれない。これはトラブルではなくMTでリバースギアにうまく噛み合わないことがあるのと同じ現象で、その時には一旦ニュートラルに入れてからもう一度入れ直せば解消する。3700kmドライブの中で二度連続で失敗するケースはなかった。前述の発進時のスロットルワークやサイドブレーキ併用もそうだが、要するにMTと思って運転すればいいのだ。

◆クルマ任せではダメ?工夫の積み重ねでリッター28kmも

薩摩半島南岸をドライブ。ここも絶対オープンと思ったが、同行者がいたため泣く泣くクローズに(笑)薩摩半島南岸をドライブ。ここも絶対オープンと思ったが、同行者がいたため泣く泣くクローズに(笑)

次に燃費。500Cはオクタン価95RONが標準の欧州市場に最適化された仕様となっており、欧州ガソリン車の御多分に漏れず日本ではプレミアムガソリン仕様。500Cに限らずミニカークラスやサブコンパクトクラスにとっては少なからずアゲインストである。ただ、今はガソリン価格が高いためレギュラーとプレミアムの10円前後の価格差の影響は相対的に小さくなっている。レギュラー165円vsプレミアム175円の場合、プレミアム仕様でリッター21.2km走るとレギュラーでリッター20kmと同等の出費という計算になる。

さて、そんな500Cの実走燃費だが、オーバーオールでは十分経済的と言える水準をクリアしていた。実測燃費を給油タームごとに、簡単な状況説明を添えて列記してみる。なお、平均燃費計の値は実測値に対して平均1%程度の過大表示と、信頼性は高かった。

1. 東京・葛飾~愛知・名古屋市西部 (430.6km) 20.4km/リットル
首都高から新東名島田金谷インターまでは高速。その後は一般道。平均車速高。

2. 名古屋~福岡・門司 (834.5km) 22.7km/リットル
琵琶湖から京都、兵庫の内陸部に回り、鳥取道~山陰道経由で九州へ。今回の最長航続。

3. 門司~鹿児島・鹿児島市 (362.1km) 22.5km/リットル
約半分が九州山地の山岳路。ノーマルモード。平均車速中庸。

4. 鹿児島エリア (496.1km) 14.9km/リットル
市街地と郊外が半々。市街地は平均車速10km/h台半ばと激低。

5. 鹿児島市~福岡・門司 (355.1km) 21.5km/リットル
行程中唯一の悪天候。ルーフクローズ、エアコン常時使用。

6. 門司~愛知・豊明 (802.8km) 22.4km/リットル
山陽路。兵庫・加古川から内陸経由で琵琶湖、鈴鹿スカイライン経由。ノーマルモード。

7. 豊明~神奈川・厚木 (328.9km) 28.0km/リットル
国道23号&国道1号BP、箱根新道経由。マニュアルシフトでエコラン。ノーマルモード。

小排気量ミラーサイクルエンジンと伝達効率の高い乾式単板クラッチ&平行歯車方式の変速機という組み合わせなので、基本的には高効率。ただしデュアロジックはCVTやトルクコンバーター式ATほどエンジンの高効率な部分を徹底利用するような高度な制御は盛られておらず、自動変速任せで走る場合、とくに市街地で燃費を大きく落とす傾向があった。

鹿児島市街地走行を含む第4区間とマニュアルシフトで運転した第7区間を除くと燃費のバラツキは小さかった。その中で面白い傾向だと思われたのは、ガソリンを過剰に噴射するオーバーリッチ燃焼を回避するため最大トルクを100Nmに制限するエコモードと最大トルク145Nmを出すノーマルモードで燃費差がほとんど出なかったこと。

ノーマルモードで800kmあまりを走った第6区間はオーバーオールの燃費値こそリッター22.4kmだが、兵庫・加古川から内陸に回り、国道477号線や鈴鹿スカイラインなどのワインディングルートを快走して燃費を落とすまでは燃費計値リッター24km台後半をキープしていた。走行実感からすると、効率が落ちるはずのノーマルモードのほうがかえって燃費が良かったくらいだった。

山口西部の周防灘沿岸をドライブ中。山口西部の周防灘沿岸をドライブ中。

最終の第7区間はエコラン。筆者のエコランはスピードに関してはそれほど落とさない一方、車間距離をきっちり取って速度のふらつきを極小化させるというのが基本。500Cの場合はシフトに関しても普段より工夫を凝らした。3000km超観察を続けたところ、1000rpm台の低負荷領域でバルブ早閉じミラーサイクル制御がとりわけ多用されているような印象を受けていた。

通常のエンジンの場合はその領域ではスロットルボディの閉じ率が高く、ポンピングロスが高めになるのでトロトロ走りのわりには燃費は大して伸びないのだが、吸気時間を短く取ることで吸気量を制限するバルブ早閉じ制御が行われているならポンピングロスはほとんど増えないはず――と読んで、マニュアルシフトを駆使して交通の流れが速い時以外は低回転多用のドライブに徹した。

もうひとつ気を付けた点は信号や交通状況の変化をよく見ること。ツインエアエンジンはエンジンブレーキ時は吸気バルブを全閉にするため、小排気量ゆえのフリクションロスの小ささとあいまって、クラッチを切るのと大して変わらないくらい長距離を空走できる。最近の欧州車によくみられるコースティング制御(トルクコンバーターやクラッチを自動的に切る)に似ているが、燃料カットは機能し続けるため燃料消費の抑制効果はさらに上を行く。リッター28.0kmはそんな工夫の積み重ねで出したものだった。

ロングラン燃費の優秀さとは裏腹に伸びなかったのは市街地燃費。それでも首都圏ではデュアロジック任せでもリッター14km台で走れたが、渋滞と急勾配のオンパレードである鹿児島市街地ではリッター12kmを割り込んだ。エンジンの熱効率や変速機の伝達効率自体は高いので、これはもう変速制御の問題で決まりだろう。鹿児島滞在後半は手動変速で燃費低下をある程度回避していたが、イージードライブの観点ではもちろん本末転倒である。さらにいろいろトライすれば自動でももっと良い運転方法が見つかる可能性はある。

◆居住性・ユーティリティは絶望的、と思いきや

前席。デザインはデビュー当初から高評価爆発だった。初期型は耐経年劣化性に難があったが、今では解消されているという。前席。デザインはデビュー当初から高評価爆発だった。初期型は耐経年劣化性に難があったが、今では解消されているという。

丸くて小さい2ドアボディ、しかもカブリオという500Cは実用性についてはいかにも絶望的という印象を受けるが、いざ乗ってみるとこれが結構使えるクルマだった。後席へは前席を倒して乗り込むことになるが、ドア開口部が長いため2ドアクーペ車のように身をよじって中に潜り込むという感じではない。

いざ乗ってしまうとレッグスペースは意外に豊かであるうえ、後方に4人分の小旅行ぶんの荷物と遊び道具を積むくらいの荷室がちゃんと残る。ロードテスト車は後席が左右分割可倒となっており、3人乗り、2人乗りならさらにフレキシブルに荷物を積むことも可能であるように思われた。スペース効率自体はエンジンルームがきわめて小容量に設計されている日本の軽自動車に敵うはずもないが、このルックスでこんなに使えるというギャップ萌えは500Cの大きな魅力のひとつであろう。

面白かったのはオープンエアドライブ時の後席の開放感。キャンバストップだと頭上前方は開けているが、頭の側方から後方はクローズドと変わらない。500Cもキャンバストップモードだと同じことだが、リアウインドウまで畳むフルオープンモードにすると景色が一変する。サイドウインドウは開かないものの、頭の後ろまでが青空で包まれ、採光性も桁違い。感覚的には大型の4座ロードスターの後席に乗っているのと大して変わらないという印象で、これも“こんなに小さいクルマなのに”というギャップ萌え要素だった。

屋根やドアの枠が開放感を損なうかと思いきや、そんな印象は微塵も抱かなかった。屋根やドアの枠が開放感を損なうかと思いきや、そんな印象は微塵も抱かなかった。

インテリアはマテリアル全般、とくに樹脂部品に関しては日本の軽自動車にも負けるクオリティ感だが、それをまったく感じさせないのは外装と同等以上に高い評価を受けたインテリアデザインの素晴らしさと、ステアリングとシフトレバーだけはクラスを超越してハイクオリティというメリハリの付けかたの上手さゆえだろう。

ドライバーズシートは何か座布団にでも座っているような感触だが、人間工学設計は優秀で、長時間ドライブでも体重でウレタンが過剰に潰れて大腿部が痛くなったりということがなく、柔らかさが快感にすらなってくる。ホールド性は座面については優秀な半面、上体に関してはいささか緩いという印象だったが、車内幅が軽自動車並みにナローな500Cはドアに寄りかかり気味に運転できるため不都合はまったく感じられなかった。

計器類やインフォテイメントシステムは簡素。500シリーズにはアナログ式、デジタル式の2種類の計器が用意されているが、ロードテスト車はデジタル。表示面積は狭いが情報表示のメニューは悪くなく、不満を覚えるようなことはなかった。なお、これはあくまで筆者の個人的趣味だが、言語切り替えが日本語と英語だけになったのは少々残念。2015年に5速MTの500Sのレビューをお届けした時は日本語対応されていなかった代わりにマルチ言語対応だったことから「Velocità Media(平均車速)」「Consumo Istantaneo(瞬間燃費)」などイタリア語表示にして勝手に悦に入っていた。イタリアのメーカーが作ったクルマなら言語もイタリア語であってほしいというタイプのユーザーにとっては若干興醒めな部分であろう。

センタークラスタ上部にディスプレイオーディオが標準装備。筆者はこれさえあれば高価なナビ専用機など不要と考えるクチだ。センタークラスタ上部にディスプレイオーディオが標準装備。筆者はこれさえあれば高価なナビ専用機など不要と考えるクチだ。

インフォティメントシステムはディスプレイオーディオがセンタークラスタ上に標準装備される。画面は7インチと小さいが、Google AndroidAutoとApple CarPlayの両方に対応しており、吊るしで買ったクルマがカーナビいらずで運用できる。高機能なカーナビ専用機が欲しいユーザー向けに一応オプションのナビが用意されているが、画面サイズは7インチで変わらない。

筆者のような紙地図世代の中高年は地図上に自車位置が表示されるだけで十分に便利と思うだろうし、スマホナビを使い慣れているデジタルネイティブな若年層も自動車メーカーや家電メーカーの精度の低いボイスコマンドにイラつかされるくらいならディスプレイオーディオのほうがいいと思うことだろう。ロードテスト車にはビーツ・エレクトロニクス社のスピーカーが装備されていたが、サウンドは繊細さはないもののダイナミックレンジが広くかつパワフルとなかなかゴキゲン。オープンエアドライブ時にSpotifyなどで音楽を楽しむにはこれで十分だろう。

◆まとめ

鳥取・境港に碇泊していた海上保安庁の巡視船「おき」とランデヴー撮影。鳥取・境港に碇泊していた海上保安庁の巡視船「おき」とランデヴー撮影。

衝突軽減ブレーキや運転支援システムをまるっきり欠く500Cは、今の時代においては誰にでも手放しでおススメできるモデルではない。が、そのリスクを背負いながらあえて乗るというのであれば、メーター読み85km/hまでトップを自在に開閉可能という特質がきっと唯一無二のカーライフをもたらしてくれるだろう。

筆者は2013年以来、下はスズキの軽ベーシック『アルト』から上はメルセデスベンツの巨大SUV『GLS』まで、100車種以上のクルマについてロングドライブを試してみた。それらのクルマはそれぞれに素晴らしい一面を持っていたが、評価のパラメーターに“シビレ度合い”というものがあるのなら、この500Cが無差別級でブッチギリのナンバーワン。ドライブを終えてクルマを返す時、こんなにも名残惜しい気持ちになるものなのかと自分でも驚くほどだった。

そんな500C、高速でも走行中にオープントップを開閉可能、後席がワンマイルシートでないフル4シーターのミニカーという時点でライバルは不在なのだが、あえて挙げるとすると何を捨てるかで2パターンに分かれる。

4人乗りを諦めるということであれば、2人乗りの小型オープン2シーター全般が競合となるだろう。最右翼はダイハツの軽オープン『コペン』。ミニサイズの車体ゆえ車外の気流が乗員のすぐそばにあり、またそこからの風の巻き込みも心地良いといったオープンエアの快楽に限れば500Cと互角。ドアや屋根の枠が残らない完全オープンという点は500Cに対するアドバンテージ。クラスは上だがホイールベースが短いという観点ではマツダ『ロードスター』も視野に入るだろう。過去を紐解くと日産『マイクラC+C』という実質2人乗りの魅力的なミニオープンカーもあったが、欧州でバリオルーフオープンが衰退の一途を辿る中、消滅した。

幌を畳んだ状態では後方視界がやや制限される。対岸に東京ビッグサイトが見える。幌を畳んだ状態では後方視界がやや制限される。対岸に東京ビッグサイトが見える。

2つ目の道はオープントップを捨て、キャンバストップで妥協すること。昔は例を挙げればきりがないほどだった。昭和時代はマツダのOEMによるフォード『フェスティバ』がキャンバストップ1発で人気を博していたし、軽自動車でもスズキの初代『アルトラパン』に設定されていた。現代においてはもうルノー『トゥインゴ』一択。オープンエアの楽しさや荷物の積載性では500Cに負けるが、4ドアの利便性はあるしドライビングも楽しい。

10年ほど前までは3つ目の選択肢としてCセグメントのフル4シーターオープンにするという選択肢があったのだが、これもグラストップに取って代わられてほとんど絶滅状態。今はオープンといえば高価なプレミアムセグメントばかりだ。どこのメーカーも電動化対応に大わらわ。遊びでしかないオープントップなど、いの一番にリストラ対象という何とも世知辛い状況だ。その中でカブリオを作り続け、あまつさえ進化させているフィアットはDNAに遊びが組み込まれているのだろうか。

日本ではリース、サブスクのみというのが何とも残念なところではあるが、バッテリー式電気自動車の『500e』にもカブリオが存在する。それは一体どんな味わいなのだろうかと、ちょっぴり興味が出た次第だった。

フィアット500Cツインエアのリアビュー。フィアット500Cツインエアのリアビュー。
《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集