【トヨタ アクア 新型試乗】「死角なし!」と言い切れる3つの理由…中村孝仁

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先代の『アクア』に試乗した時は、正直言って「なんだかなぁ」という印象が強かった。確かにハイブリッドをBセグメントのコンパクトカーにまで波及させた功績は大きかった。

しかし、Bセグメントといえばライバルはツワモノ揃い。VW『ポロ』に始まって日本国内市場にはプジョーやルノーの良くできたモデルがいっぱいあった。日本ブランドにもホンダ『フィット』や日産『ノート』、スズキ『スイフト』等々、挙げればきりがないほど。そんな中にあって初代アクアの持ち味は正直言ってハイブリッドであることだけであった。

で、2代目の出来はというと、甚だ上から目線で恐縮だがほとんど死角らしい死角というか欠点らしい欠点を見出せないほど良くできたBセグのモデルに仕上がっていた。ここまでよくできたモデルに仕上がった背景には3つのポイントがあると思う。

死角のないアクア、3つのポイント

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一つは今回世界でも初採用となったバイポーラ型ニッケル水素電池の採用。そしてもう一つはTNGAの新しいプラットフォームの採用。3つ目は内外装のクォリティーの高さである。

バイポーラ型電池についてくどくど説明するのはやめる。他の試乗記にも語りつくされていると思う。簡単に言うとこれまでの2倍の出力が得られて、アクセルに対するレスポンスが向上しているということだ。後述するが、とにかくこいつが抜群の効果をもたらしていた。

TNGAについてはこれもすでに語りつくされているが、どのTNGA採用車に乗っても、その剛性感の高さとしっかりと路面の凹凸をボディで抑え込む乗り心地の良さ、それに運動性能の高さを味わうことが出来、今回のアクアも言うまでもなくその例外ではなかった。

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3つ目の上質感。今までの日本のコンパクトカーに最も欠けていたのがこの部分で、大人になってエンプティネスターになると、なんとなくコンパクトなクルマに回帰したいと思うのだが、大人が乗るような上質で満足感のあるクォリティーの車には少なくとも初代のアクアが出たころにはお目にかかることはなかった。それが最近はどれもこれも上質をキーワードにしたような車作りが多くなって、つくづく成熟したものだと思う。

もちろん新しいアクアは飛び抜けて上質というわけではないが、十分に満足感のある質感で、小うるさい、いい歳のオヤジやおば様でもとりあえず文句の出ない域に達していると感じた。

「おいおい、速いじゃないか」

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上質の話はこんなところだが、バイポーラ電池を使った動力性能と、TNGAの運動性能には正直ビックリした。これまでのハイブリッド車、特にコンパクトでパワーのないモデルの場合、静々と電気でスタートしてアクセルを踏み込むとエンジンがかかり、そこからさらに踏み込んでいくと、今度は威勢よくエンジンがうなりを上げる。要するにものすごく「頑張ってる感」をみなぎらせて走るわけだ。

今回の場合その「頑張っている感」をみなぎらせるようなシーンはまずない。兎に角どこから踏んでもスーッと加速し「おいおい速いじゃないか」とドライバーをビックリさせる走りを持ち味にしている。カタログにも「驚くほど静かで滑らか」と書かれているが、まさにそれを体現している。

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ドライブモードはエコ、ノーマル、パワー+の3つがチョイスできるが、このパワー+をチョイスすると、トヨタが言うところの「快感ペダル」が作動して、アクセルオフで減速Gを高めてくれる。いわゆるワンペダル的運転を可能にするのだが、日産ほどの顕著な効果はない。それよりもこのパワー+モードをチョイスして加速すると、「おい、マジか」というほどの加速を示す。それも前述しているように勇ましい頑張っている感ゼロでだ。

新しいバッテリーのおかげでEV走行の範囲も広がって、多くの場合アクセルを戻すとすぐにエンジンは切れる。しかもその断続、すなわちエンジンのオンオフはほとんど気にならない。実によくできたハイブリッドだ。

もう燃費でトヨタに勝てるクルマは世界中にない

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もう一つ個人的に感動的だったのはハンドリングの良さ。これはワインディングを攻めて感じるハンドリングの良し悪しではなく、一般道で少し切り足さなくてはならないような奥に行くと曲率が小さくなるようなコーナーで、ハンドルを切り増していった時の感触がとてもよかったことである。こうした日常の使い勝手や運動性能の良さこそ、今求められる最も重要な要素のような気がしてならない。

そして最後に燃費。今回はほぼ24時間の試乗で距離も130kmしか走れなかった。しかもほとんど一般道。給油で入れた燃料はレギュラー5.84リットルである。つまり22.4km/リットル。決してエコ運転をしたわけではなく、むしろほとんどの場合ノーマルもしくはパワー+で走ってこれだ。

因みに満タンにしたあと、走行可能距離は789kmと出た。燃料タンクは満タンで36リットルしか入らない。それでこの数字だからもう燃費でトヨタに勝てるクルマは世界中にないだろう。

もっと長く乗りたいと思ったがなかなか人気車で、そうはいかなかった。それにしてもよくできたコンパクトカーである。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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