【キャデラック エスカレード 新型試乗】コックピットからの眺めは「王様気分」…中村孝仁

そもそもSUV、すなわちスポーツ・ユーティリティー・ビークルという言葉に明確な定義はない。

この言葉が使われ始めたのだって個人的な記憶では1990年代に入ってからのこと。そして遡って現代風SUVの元祖は1984年に登場したジープ『チェロキー』だったと言われているのだ。90年代以降のSUVの猛威はご存じの通りである。

何故これほどまでにSUVが市場を席巻したかについて、当時アメリカの市場調査会社の友人と話をしたことがある。メーカーがこぞってSUVを訴求するのは、その利幅がとてつもなく大きいからだと話していた。何しろ当時はトラックのシャシーにちょっと小洒落たボディを架装したモデルが、トラックより遥かに高い値段で売れる。これに目をつけて高級版を作ったのがフォードの高級版、『リンカーン』であった。これが見事にはまり、最大のライバルであるキャデラックもその市場に参入せざるを得なくなった。

キャデラックというブランドを大切にしてきたGMとしては、はじめのうちはどちらかといえば少し石橋を叩いて渡る節があり、初代の『エスカレード』はお世辞にも特徴のあるモデルとは言えなかった。ところがふたを開けてみると案の定キャデラックの思惑とは裏腹に大ヒットの予感。慌てたGMはたった3年で初代モデルに見切りをつけて本格的なエスカレードの投入と相成るわけである。

過去最大の大変革を遂げた

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すべての世代のエスカレードに試乗した経験があるが、今回の5世代目は過去最大の大変革を遂げたモデルと断言できる。基本的にはボディオンフレームと呼ばれる、独立したフレーム構造を持つもので、これ自体は今もピックアップトラックと変わらない。しかし、リアサスペンションは5リンク構造からマルチリンクに変わり独立懸架に変貌した。

先代と比較してホイールベースも全長も伸びてしまったが、得るものは大きく3列目シートのレッグスペースは40%も拡大し、3列目を使用した状態でのラゲッジスペースの容量は68%も拡大して722リットルにもなった。一見薄っぺらく見えるシートも随分と快適で、驚いたことに2列目シートを折りたたむとそれはダイブダウンして床面にへばりつく。

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さらに前側を支点に起こすこともできるから、実にユーティリティーが高くなった。こんな考え、一昔前のアメリカ車ではあり得なかったことで、キャデラックが大きく変わったことを印象付けた。

ドライブトレーンは大きくは変わっていない。6.2リットルのV8はL86のコードネームを持つ420hp(日本表示は426ps)のエンジン。ただしこれに組み合わされるトランスミッションは、先代後期の8速ATから最新の10速ATに変わった。頻繁なシフトが邪魔をするかと思いきや、全くそんなことはなく実に快適だし静々と走る。

まさに「王様気分」と評したくなる

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さすがに全幅2065mmの車幅は結構気を使い、狭い道路では白線内に入れて走るのに神経をとがらせる必要があるほどだったが、まあこれも慣れの問題。丸一日乗っていれば案外すいすいと走れてしまうものである。それにしても全高1930mm。目線はもちろんそれよりもだいぶ低いところにあるはずなのだが、信号待ちなどで隣を見ると、やってきた中型の8トンほどのトラックの着座位置とほぼ同じだった。

38インチという巨大な有機ELのディスプレイに囲まれた先進的かつ上質な素材に囲まれたコックピットからの眺めは、まさに王様気分と評したくなるものである。どうもチビはこのようなデカいクルマが好みなのか、これに乗ると悦に入る自分に気が付く。

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あれこれ触ってみる場所は数多く、数日の試乗時間ですべてを試すのは困難。それに借りてきた翌日は台風の影響で土砂降りの雨だったから、乗っている時はむしろその天候に気を使ってしまいあまり試せていない。ドライブモードはツーリング、スポーツ、牽引のほかにもう一つ、「ルート外」という無理やり感が強いモードがある。表示されるピクトグラムを見ればそれがオフロードであることは想像がつくのだが、モード選択とは別なところにオフロードという表示がある。残念ながらどうやればこのオフロードモードに行き着くかはわからなかった。もっともドライブモードにしてもツーリングだろうがスポーツだろうが、ほぼ走りの変化はなかった。

ちなみにリアがマルチリンク化したサスペンションにはエアサスが奢られていて、乗降の際には車高が下がるようにできているし、モードを切り替えるとやはり変わるようである。快適さの源はこのエアサスの恩恵もあるかもしれない。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》
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