【VW パサート オールトラック 新型試乗】身を委ねられる“誠実で忠実な友”…中村孝仁

パサート オールトラックで600kmを走ってみた

2リットルTDIエンジンに湿式7速DSGの組み合わせ

ゴルフの時のような「やられちゃった感」はないが

VW パサート オールトラック TDI 4モーション アドバンス
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パサート オールトラックで600kmを走ってみた

もう6年前の話になるが、VW『ゴルフ オールトラック』に初めて試乗した。その時お値段に対する価値の高さにやられたと書いた。

当時と今ではだいぶ自動車の価値観も変わっているのかもしれないが、当時のゴルフ オールトラックは第5世代(当時最新鋭だった)のハルデックスカップリング4WDシステムに電子制御ッディファレンシャルロックXDSを標準装備。足は専用ダンパーを装備して当時の『ゴルフ ヴァリアント』よりも地上高を25mm引き上げていた。勿論当時からACCやらリアビューカメラなどは標準装備されていてお値段347万円だったから、やられちゃったわけである。

VW パサート オールトラック TDI 4モーション アドバンスVW パサート オールトラック TDI 4モーション アドバンス
翻って、最新の『パサート オールトラック』である。まあ装備品などは当時のゴルフ オールトラックとそれほど変わるものではない。ただしその中身は大いに進化していて、例えばACCにはトラベルアシストなる同一車線内全車速運転支援システムも付いている。これ、要するに車線からのはみ出しを抑制するアシストで、基本的にやってはいけないことだが、コーナリング中の車線維持も行う。

今回は600km強を走ってみた。そして、この存在は心強いし何よりも、単純長距離移動の際や渋滞時には大いに重宝するモノだとわかった。ただし、やはり横からの割り込みには弱く、決して万能ではないから注意が必要だ。

2リットルTDIエンジンに湿式7速DSGの組み合わせ

VW パサート オールトラック TDI 4モーション アドバンスVW パサート オールトラック TDI 4モーション アドバンス
エンジンはパサートの中でもオールトラックに限り、2リットルのTDIユニットのみの設定だ。このエンジン、そのコードネームをEA288と呼ぶが、基本的にはそう新しいエンジンではない。個人的にはディーゼルに一家言持っているつもりで、所有したディーゼルモデルは現在の足を含めて4台。大抵のディーゼルには乗っているつもりである。以前と比べたらだいぶスムーズさを増している印象があるが、これを改良した最新のEA288evoと比べてしまうとやはりだいぶ落ちる。VWではどうやら『ゴルフ8』の登場まで待たねばならないようだ。

とは言うものの、その粘り具合とトルクフルな走りは最近少し力が削がれている他ドイツメーカーのディーゼルと比べたら、パーシャルからの加速感などはやはり侮り難い実力を持っている。それに燃費も中々のもので、WLTCモードで15.0km/リットルというその燃費は、現実的には14km/リットルにわずかに届かないが優秀な値を示した。1760kgという車重を考えたら、立派なもんだ。

今回の変更の目玉としては、このエンジンと組み合わされるトランスミッションが従来の湿式6速DSGから7速DSGに変更されたこと。7速は従来乾式には存在したが、このエンジンに対するトルク容量はないから、恐らく新しくできた湿式のはずである。それにスムーズさも乾式に比べたら遥かに上である。まさにステップATと遜色ないレベルに到達しているのは、やはりVW系のDCTである。

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ゴルフの時のような「やられちゃった感」はないが

足回りだが、ゴルフの場合はヴァリアントとは異なる足を設定しているということだったが、新しいパサートに関する記述はほぼ無い。そこで海外のネタを漁ってみたところ、パサート ヴァリアントの142mmという地上高に対して、オールトラックは173mmあるという記述を見つけた。これを信じるならダンパーは異なると考えるべきだろう。

因みに全高はヴァリアントの1510mmに対し、オールトラックは1535mmであるからゴルフ同様25mm高い。セダンよりも快適に感じられた理由は、重さとこのサスペンションの違いによるものだろうか。

VW パサート オールトラック TDI 4モーション アドバンスVW パサート オールトラック TDI 4モーション アドバンス
室内はとにかく広いし、ラゲッジスペースにしてもとてつもないゆとりがあって、この点に関しては長年のVWの美点といって良いと思う。何しろシートを畳めば最大で1769リットルの容量を持つのだ。畳まなくたって639リットル。だいたいの荷物は楽勝で飲み込む。

とまあ、走りはドラマチックではないけれど、忠実な友としては実に安心して身を委ねられる。それに広い空間で快適この上ない。安心感も高いし、遠出に際して荷物をたっぷり積んでACCとトラベルアシストを使えば疲れ知らずで走り続けられる。満タン時に表示された可能走行距離は何と1010kmである。

とにかくこのクルマ、誠実で忠実な友である。しかし、ゴルフの時のような「やられちゃった感」はない。何しろお値段今や604万9000円もするからだ。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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