アウディ、新フラッグシップEV『e-tron GT』正式発表…「純粋なスポーツカーとは違う」理由とは

日本時間の2月10日未明、アウディはかねてよりプロトタイプで示してきた『e-tron GT』の市販版を、ついに全世界のメディアに向けてオンラインで発表した。「e-tron GT クワトロ」と「RS e-tron クワトロ」の2車種で、いずれもゼロエミッションのEVとして、「グランツーリスモ」のコンセプトを未来に向かって再解釈したという。

純粋なスポーツカーとは違う「グランツーリスモ」デザイン

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アウディのデザインチーフであるマルク・リヒテはe-tron GTのデザインの出発点を、こう語る。

「グランツーリスモという言葉は、元々は長距離レースに適したスポーツカーに基づくもの。だからGTモデルは純粋なスポーツカーと異なり、より高められた快適性と広いインテリアを備えなくてはなりません。ですから100%EVのグランツーリスモとして、e-tron GTはこのバランスを再解釈しました。パフォーマンスを絶対的アウトプットだけでなく、エフィシェンシーに充てること、それをクリエイティブ面でとくに配慮しました」

極端にロー&ワイドでオーバーハングは短く、2.9mというロングホイールベースのプロポーションをもつ空力ボディのサイズは、全長4.99×全幅1.96×全高1.41m。Cd値はわずか0.24で、EVとしてアーキテクチャやコンポーネントを共有するポルシェ『タイカン』の0.22に僅かに及ばないものの、低められたシングルフレームグリルに、ボンネットとリアトランクリッドの凹面エッジ、強く傾斜したルーフラインはA7スポーツバックより17mmも低いという。

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それでいてトランク容量はリアに405リットル、フロントボンネット下に81リットルを確保している。フラットなリアウインドウ、そしてクワトロ独特の彫刻的なブリスターフェンダーなど、アウディの新しいデザイン・ランゲージも随所にみてとれる。

ちなみにハニカムパターンのラジエーターグリルはアウディとして初めてボディと同色に塗装され、多くのセンサーがグリル内に搭載されている。加えてオプションで選択できるレーザーヘッドライトやリアの大型ディフューザーなど、GTとしての性格もうかがえる細部も多い。

ボディ構造については、パッセンジャーセルとバッテリーハウジングが超高張力鋼、ボディパネルはアルミニウムで、アンダーボディも完全にパネルで覆われる。またフロント両端にはブレーキとラジエーター冷却用の電動開閉式エアインテークを、リアには速度に応じて2段階に展開するスポイラーを備える。

インテリアについては、ドライバーを取り囲むような「モノポスト・デザイン」や、幅広のセンターコンソールというGTならではの文法を採り入れつつ、エクステリア同様、サステナブルであることが最優先されている。具体的にはトリムにレザーを一切用いず、多様なリサイクル素材を用いながら、スポーティかつコンフォートな空間に仕立てられているという。

前後モーターと2速トランスミッションを備える

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パワートレインは、前後車軸それぞれに1基づつモーターを備え、リア側は2速トランスミッションを介して駆動。開発エンジニアによれば、「トルク寄りのショートレシオと、アウトバーンなど高速走行寄りのロングレシオの2速で、ブースト時以外の通常走行の時は2速発進」という。

最大出力とトルクについては、e-tron GT クワトロがシステム総出力として476ps(350kW)・630Nm、RS e-tron クワトロが598ps(440kw)・830Nmとなっている。両者ともフロントの電気モーターは238psで同じだが、リアモーターはe-tron GT クワトロが435ps仕様であるのに対し、RSモデルの方は+21psほどアウトプットを高めた456ps仕様を搭載する。

いずれもローンチコントロール使用時は最大2.5秒のブーストモードが効かせられ、前者が530ps、後者が640psまで出力を伸ばすこともできる。0-100km/h加速は、それぞれ4.1秒と3.3秒、最高速は245km/hと250km/hとアナウンスされている。

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バッテリーの総容量93kWhのうち85kWhが駆動に充てられ、WLTPモードでの最大航続距離はe-tron GTクワトロが487km、RSモデルが472kmという。グランツーリスモという性質上、実効的な速度と走行可能レンジの絶妙の配分にこだわった様子が窺える。

800Vという高規格のリチウムバッテリーは無論、4つの冷却回路とヒートポンプによる温度管理システムが備わり、直流急速充電時のプレコンディショニング機能も備わる。日本仕様も最大150kWの急速充電と8kWの普通充電に対応することが発表されている。

機械式クワトロの5倍の速さで駆動を伝達

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前後重量配分は50:50に近い配分を実現しつつ、サスペンションは前後ともサブフレームからリンクのほとんどが鋳造アルミによるダブルウィッシュボーン式となる。オプションで後輪を最大2.8度操舵するオールホイールステアリングも設定され、50km/h以下では前輪側と逆位相に、50km/h以上では同位相に切れる。

3チャンバー式のアダプティブサスペンションはe-tron GT クワトロにはオプションで、RS仕様には標準装備され、ドライブモード選択に応じてノーマル車高より-22~+20mmの範囲で車高を上下させる。ドライブモードはコンフォート/エフィシェンシー/ダイナミック/インディビジュアルの4モードが選べ、エフィシェンシー・モードのみ前輪の駆動力を優先させ、最高速度も140km/hに抑える。

通常走行時はフルタイムAWDで、クワトロシステムはフル電動化の恩恵として、前後車軸間の駆動トルク配分制御が1/1000秒単位で連続的に可変制御され、例えば高速走行時のリアの初期トラクションは、機械式クワトロドライブと比べて5倍の速さで伝えられるようになったという。

ダイナミックモードではアクセルから足を離すと、通常のコースティングの代わりにエネルギー回生が行われる。回生レベルはステアリングホイールのパドルで選択することも可能。制動時の減速は最大0.3Gまで電気モーターが担い、最大265kWの回生が可能という。

また420mm径という大径ブレーキディスクは鋳鉄だが、e-tron GT クワトロにはオプション、RS e-tron クワトロには標準でタングステンカーバイドコーティングが施され、耐摩耗性や制動力の向上に加え、EVに起きやすいディスクの錆が発生しないメリットがある。他にも双方ともオプションでカーボンファイバーセラミックディスクも選べる。

アウディの次世代フラッグシップに

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他にもGTならではのユニークな試みは、グランツーリスモとして洗練されたADASシステム、そして「e-tronスポーツサウンド」だ。運転支援システムには「ツアー」「シティ」「パーク」という3種類をまとめたアシストパッケージプラスがオプションとなるが、とくに「ツアー」はアダプティブクルーズ時に、標準装備のプレディクティブエフィシェンシーアシストと連動して、エネルギー消費を極力抑えた加減速の制御を行うという。

また後者もオプションながら、ラゲッジコンパートメント内のユニットとアンプが走行状態に応じて生成したデジタルサウンドを、車内と車外に向けて再生するシステムだ。エフィシェンシー・モードでは法規による最低音量に準じた音量を確保しつつ、コンフォートではよりリッチな音質のエクステリア音を響かせ、さらにダイナミックではよりパワフルな音質でエクステリアだけでなくインテリアにも再生音が送られる。オーディオはバング&オルフセンの16スピーカーシステムで、うち2つはAピラー内に配された3Dスピーカーとなる。

e-tron GT クワトロはアウディがドイツ国内で生産する初の電気自動車かつハイパフォーマンスカーとして、全方位的に最新テクノロジーが埋め込まれただけではない。ネッカーズルムにあるベーリンガーホフ工場で、『R8』と共有されるその生産ラインは、100%グリーン電力やバイオガス燃料による熱電供給プラントによって賄われ、カーボンクレジット相殺もあるものの、可能な限りカーボンニュートラルに近い状態で生産される。

アウディの電気自動車のフラッグシップでありながら、すでにアナウンスされたドイツ本国の価格はe-tron GT クワトロが9万9800ユーロ(約1260万円)、RS e-tron クワトロが13万8200ユーロ(約1750万円)。電気自動車だからこそ下げられた重心やデザインが、パフォーマンスや快適性にどう活かされているか、また高速域でのスタビリティや後車軸の挙動に、どのような独自色が込められているか? アウディの次世代を占う要注目の一台といえる。

アウディ マルクス・ドゥスマンCEOとe-tron GTアウディ マルクス・ドゥスマンCEOとe-tron GT

《南陽一浩》

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