【ホンダ アコード 新型】質に対して大いにこだわる…インテリアデザイナー[インタビュー]

ホンダ アコードインテリア初期のデザインスケッチ
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10代目ホンダ『アコード』のインテリアは、大幅に質感を向上させるとともに使い勝手にもこだわりを持ってデザインされたという。そこでインテリアデザイナーに詳しく話を聞いてみた。

本場に行ってセダンを改めて体験

インテリアのプロジェクトリーダーを担当した本田技術研究所デザインセンタープロダクトデザインスタジオ、アシスタントチーフエンジニアデザイナーの清水陽祐さんは、初めてプロジェクトリーダーを務めたそうだ。

「指名されたのは32歳の時で、それまではセダンというものにほぼ興味がなかった」という。ただし、「幸いにもその前年までアメリカに駐在していたので、アコードの存在は知っていた。なんとなく広くて燃費も良くて、デザインもそこそこ良い一方、すごくまとまっているけれども今ひとつパンチに欠けるというか、すごく良くできているのだが何か心に響くものが自分の中にはなかった」とそのイメージを語る。

そういった状況で新型アコードのインテリアのチーフとなった清水さん。チーフデザイナーの本田技術研究所デザインセンターオートモビルデザイン開発室テクニカルデザインスタジオチーフエンジニアデザイナーの古仲学さんに、「お前はセダンを知っているのかと聞かれ、一応北米ではちょこちょこ乗ってはいたことを話した。しかし、本場のドイツでは乗ったことがないことを告げると、まずはセダンの本場を知らないと作れないといわれ、このプロジェクトが始まってすぐに2週間強くらいドイツに行き、1500kmくらい御三家のクルマをアウトバーンやワインディングなどあらゆる環境の中で経験した」とのこと。

その時の感想は、「正直全然違うと思った」と述べる。「アメリカで乗っているとそこまで感じなかったが、安心感や信頼をこのクルマに持てて初めて運転が楽しいなどの感覚が味わえると思った」。「北米ではと移動手段としての道具のような位置づけもあり、なんとなく広くて開放的でというだけが優先事項としてあったが、そもそもクルマはそれだけではない」ということに気づいたという。ホンダ アコードインテリア初期のデザインスケッチホンダ アコードインテリア初期のデザインスケッチ

動く空間として気持ちの良いもの

その後、試作車が出来上がり乗る機会があった。清水さんは、「これまでのダイナミクス性能をはるかに超える、自分の期待値をはるかに超えるポテンシャルがあったので、それをシンプルに(インテリアの)形に落とし込んでいくことをまず一番やらなければいけないことだと思った」とその時の印象を語る。

具体的には、「“動いている空間を踏まえた気持ちいい空間”。とかく我々はスタティックな状況でデザインしてしまうが、クルマは基本的には動くもの。その動く空間で気持ちの良いものは何だろうというところから色々とインテリアデザインを積み重ねていった」と話す。具体的には、「安心感と、爽快な感覚という少し相反するような2つをクルマの中で両立させるのが大きなところだ」と述べた。

そこで生まれたキーワードは、エレベーション、インプレッション、サティスファクションだ。その中でインプレッションというワードはあまりインテリアでは使われないようにも思う。

清水さんは、「クルマに乗り込んだ瞬間に運転がしたくなるような、運転を楽しめる、安心して運転ができることは重要だ。今回のアコードでは乗り込んだ瞬間に、水平でシンメトリー基調のインパネがあり、そこからしっかりとフードが見えること。また、インテリアのドアライニングの線からフードまでが続いているようなラインで、車両感覚がつかみやすいことなどから安心して運転できる、楽しめそうだねという思いに気づいてもらえればと、インプレッションがキーワードの骨格として用いている」と説明してくれた。ホンダ アコードインテリア最終のデザインスケッチホンダ アコードインテリア最終のデザインスケッチ

“質”へのこだわり

アコードを試乗して最も感じたのは質の高さだった。その点について清水さんは、「素材の部分やスケールなどを高級車まではいかないものの、しっかりとその存在の表現させることで質が高く見えるところを狙っている」とコメント。

その背景として、「若返らないとアコードはおじさんグルマになってしまう。僕自身もなんとなくそういう雰囲気に飲まれていたが、僕の下についた当時入社2から3年目の若いデザイナーが、“若返るのではなくて大人になれるような質の高いものが欲しい”と忖度なくピュアにいわれた」と開発初期を振り返る。そして自身も、「もの選びは、奇抜なものよりも長く使えて質が高く、あわよくば売る時も高く売れるような、そういう質の部分に基準を置いており、それは若い子達もそうなんだ」と気づいた。そこから質に対してはすごくこだわった。

具体的には、「エアコンのノブであれば、その金属の回した時の質感や、音の質がどうかというところ。パッと見た瞬間にお客様が意識するかどうかは別にして、これは金属でできているんだなという認知があって、触った時にその認知している金属という印象とフィードバックが合致していれば気持ちいいと思う。そこがプラスチックのフィーリングだと自分の思いと違って違和感がある。そういった違和感を様々なところで極力なくしていくことで質を高めていった」と述べた。ホンダ・アコード

MM思想とアコード

さて、歴代アコードは “MM(マンマキシム・メカミニマム)思想”が重要視して開発されてきた。このアコードではどういったところに反映されているのか。广汽本田汽車研究開発有限会社商品企画室企画造形科科長兼造形係係長の森川鉄司さん(現中国赴任中)は次のように語る。「歴代モデルともセダンとしての最大居住空間をその時代その時代で追い詰めながらパッケージングの広さ感や使いやすさを提案した。そして今回走りとスポーティというコンセプトに従ったMMはどうだろう。そこでセダンにふさわしい人の乗車位置や輪切りを見直した」。

輪切りとはクルマを正面から見た時の断面だ。そこから見えてくるのは隣り合った乗車位置をはじめ、ドライバーとサイドガラス、ドアライニングの間隔などだ。

例えば先代アコードは、「ガラスの傾きをやや立ち気味にしており、これはその時代その時代の最適な輪切りだった。しかし、今回の最新アコードを開発するにあたり、走りと居住空間のベストバランスはどこだろうと探った結果、ガラスはやや寝かせ、そのかわり肩と腰回りのドアライニングの寸法は人の位置を15mm内側にセットすることによって広げている」と説明した。ホンダ・アコード

こだわりの数々

そのほか、インテリアのこだわった部分について清水さんは、「インパネ周りの加飾などだ」という。「実際のケヤキの木をよりリアルに見せられるように2層コートで濃淡と立体感をつけることで、フィルムではあるがより本物に近づけるようにした。更に本物の木目が一番映えて見えるような面の曲率なども気をつけている」という。

また、今回センタークラスターはコックピット感を演出するような傾きは持たせず正面を向いている。これは、「シンメトリーにかなりこだわりたかったからで、クルマのエクステリアは基本的にはシンメトリー。そのイメージで室内に乗った時にシンメトリーであるほうが“軸”が感じられると考えた」と清水さん。例えば、「センタークラスターをドライバー側に傾ければコックピット感は出るのだが、今回のアコードでは、しっかりとした安定した基調の中で、気持ちよく走らせることができるのではないかという目論見があり、シンメトリーのモチーフにこだわった」と説明した。ホンダ・アコード

あえて物理スイッチを

近年、スイッチ類がスクリーンなどによるタッチパネル方式が採用されている中、このアコードの空調関係は物理スイッチが採用されている。これはブラインドタッチなどが可能で安全性も高いものだ。清水さんは、「ホンダでもタッチパネルなども取り入れてはいる。クルマという動いている空間の中での思想として、瞬間認知直感操作といい続けている一方で、新規性を狙って作ったタッチパネルがあるが、原点に立ち戻るということで一番確実かつ時間として最短でできるものとしてダイヤルを採用した」と清水さん。

更にこだわりとして、「ホンダのインテリアデザインとして使い勝手やユーティリティは常にカテゴリトップを取っていかないといけない」とし、「生活臭は出したくないので、そこは気を使ってトレイをつけたりカップホルダーもカッチリと収まっているが、北米でのLカップがきちんと2つ入るなど、日常でのストレスは全くない使い勝手を実現している」とデザインだけでなく使い勝手にまで気を配っていることを語った。本田技術研究所デザインセンターオートモビルデザイン開発室テクニカルデザインスタジオチーフエンジニアデザイナーの古仲学さん(左)と同デザインセンタープロダクトデザインスタジオ アシスタントチーフエンジニア デザイナーの清水陽祐さん(右)本田技術研究所デザインセンターオートモビルデザイン開発室テクニカルデザインスタジオチーフエンジニアデザイナーの古仲学さん(左)と同デザインセンタープロダクトデザインスタジオ アシスタントチーフエンジニア デザイナーの清水陽祐さん(右)

《内田俊一》

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