なぜチャイルドシートの大切さが保護者に伝わらないのか、その原因は【岩貞るみこの人道車医】

なぜ、保護者にチャイルドシート(CRS)の大事さが伝わらないのか。根本的な問題としてCRSをする意味がきちんと伝わっていないことが挙げられる。

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チャイルドシート(参考画像)
  • チャイルドシート(参考画像)
  • チャイルドシート使用率の推移(JAFと警察庁による調査より)
  • 年齢層別チャイルドシート使用率(JAFと警察庁による調査より)
◆保護者に伝わっていないチャイルドシートの大切さ

警察庁とJAFが合同で行った、2018年のチャイルドシート(以下CRS)使用状況全国調査が発表になった。調査期間は2018年4月20日~30日。調査人数は1万3103人。結果は、使用率66.2%と、昨年の64.1%に比べわずかに向上している。この調査、2002年に開始されたけれど(CRSの着用義務は2000年4月から)、2007年に46.9%と最悪な数字を示して以降、ずっと右肩上がりで微増を続けている。

微増と聞くとほんわりと安心する。でも実際は安心なんかしている場合ではない。なんたって66.2%という低さなのだ。相変わらず、こどもを膝に乗せているという人もいて、「それ、ビルの屋上で手すりの外を歩かせているようなものですよ」と胸ぐらつかんで言いたい気分だ。さらにCRSに正しく座らせているのは、乳児用で49.3%、幼児用で31.3%。CRS自体が取扱説明書どおりしっかりと取り付けられているのは、乳児用で48.3%、幼児用では29.0%という低さだ。愕然とする状況である。CRSを車内に置いて、単に上に座らせているだけでは、こどもの命は守れないというのに。

なぜ、保護者にCRSの大事さが伝わらないのか。根本的な問題としてCRSをする意味がきちんと伝わっていないことが挙げられる。

今の保護者は、CRSなしでクルマに乗っていた世代だ。私も後部座席で寝転んでいた記憶がある。それで生き延びているのだから、CRSなんてなくても大丈夫じゃない? という気持ちになるのもわからんでもない……でも、そうじゃない。アスベストを例にするのはちょっと違うかもしれないけれど、以前は危険性が認識されていなくても、今は危険が証明されているものがある。CRSも、ちゃんと使わないとこどもを守れないことが、はっきりしているのだ。
チャイルドシート使用率の推移(JAFと警察庁による調査より)
◆チャイルドシートは何のためにあるのか

現在の保護者がCRSの必要性を認識できない原因は、「六歳未満は着用義務」という道交法にある(きっぱり!)。だって、7月の今、同じ幼稚園児でも4月生まれの体の小さい子は6歳になったからCRSを使わなくてよくて、10月生まれの大柄な子はまだ5歳だから義務ありって、どう考えたって理解できない。CRSって本当に必要なの?なんのためにするの?と、疑問に思うのも無理はない。

それに現在、高速道路では「乗員は全員、シートベルトの着用」となっている。でも、6歳の子にシートベルトをかけると「ナナメベルトが首にかかる」し「腹のベルトは、おなかの柔らかい部分」にかかって、これで事故のときに大丈夫なのかと、保護者の頭のなかには「?」マークが飛び交う。6歳の誕生日の時報とともにCRS装着義務がなくなるけれど、その瞬間から、大人用に作られたシートベルトが役に立つわけじゃない。だというのに警察庁は、6歳以上のこどもに対する危険はなにも伝えていないのだ。

クルマについているシートベルトが正しく使えるのは、身長140cm以上である(車種によって135~150cm程度の差がある。取扱説明書で確認を)。140cmよりも身長が低ければ、衝突のときにシートベルトでは守れないばかりか、シートベルトが凶器になって体に食い込み、首の骨を折り、脊髄を切断し、臓器破裂を引き起こす(危険性がある)。そして私は救命救急センターの取材を通じて、大人用のシートベルトをさせられて、大変な怪我を負ったこどもたちを何人も知っている。こどもたちには、チャイルドシート(学童用のジュニアシートを含む)が必要なのだ。

◆「警察庁の道交法を変えてほしい」

今、私の思いはこれである。警察庁はなぜ、この状況を見て変えようとしないのか。確かに、2000年のCRS着用義務を開始した時代は、全員に広くCRSを知らしめる必要があった。だから、6歳というわかりやすい年齢区切りにも甘んじた。でも、今は違う。あれから20年近くたち、「正しく使う」時代に入っているのだ。

私の案は、CRSの装着義務は12歳までにすることだ。シートベルトが適用できる身長140cmは(個人差が大きいけれど)、だいたい10歳くらいだから。ただし、12歳以下でも背が高く、大人用のシートベルトで安全が確保できる子はCRSを免除する。こうしたやり方は、北米の州でも採用されている。警察のCRS取締りの現場からは、「こどもをクルマから降ろすのが大変なので、身長による取り締まりはやりたくない」という声が風にのって聞こえてくるような気がするけれど、だったら、座高を測る座高棒(遊園地で、身長制限のある遊具に乗る前に使う身長スケールの座高版)を用意しておけばいいんじゃないでしょうか。

毎年行われているCRS使用調査の目的は「(略)一層の使用率向上を図るとともに、CRSの適正な使用を啓発すること」のはず。CRSが必要なこどもを持つ保護者に接する貴重な機会。毎年、同じことを繰り返してじわじわ上がる装着率を待つだけってのは、手抜きだと思う。自動車工業会(自動車メーカーの集まり)も、装着率の向上を警察任せにしている場合ではないよね。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。
《岩貞るみこ》

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