新しい『アウトランダーPHEV』に改めて乗り「やるなぁ」と思った。試乗会ではわからなかった発見が多々あったからだ。今や競合SUVは多いが、走りの実力はライバル車の中でも有数といえる。
“基本はEV”であるのが同車の特徴だが、そこに磨きをかけた。スムースで、耳触りなメカノイズが以前より少なく(小さく)なり、力強い走りを堪能させてくれる。充電量が十分なレベルなら、街中でのやや強めかな?と 思える加速から高速走行までモーターで走り切る。(当然だが)通常のハイブリッド車に慣れた感覚なら「こんなに広範囲、長い距離をモーターで走れるのか」と感じるだろう。回生ブレーキと走りながらエンジンに発電をさせた際の充電量の回復は(定量的な表現ではないが)感覚的にはかなり早く、メーターを見ていると、1時間程度の走行で目盛りが下から上のほうへと上った。一方で適宜エンジンに切り替わっての高速走行も快適で十分なアクセルレスポンスを示す。
EV走行中のロードノイズも、さらに抑え込まれた。音が立つはずの舗装路面でも静かに思えるレベルだ。乗り味もゆったりしている。
今回はスケジュールの都合で“充電スタンド”は使わなかったが、電力消費にハラハラすることもあるスマホなどとは違ってバッテリーの残量を気にしないで済むのは(これも当然ながら)通常のEVに対する大きなアドバンテージだ。
エンジンが加わっての走りも、より洗練されたドライバビリティになった。ただ、メーター内のマルチインフォメーションディスプレイの切り替えスイッチは、ステアリングコラム右側のライトスイッチ(レバー)にちょうど隠れる位置にあり、暫く見つけられなかった。これはステアリングスイッチのほうが親切かもしれない。ついでながら、インテリアは質感は十分だが、メカニズムの先進性に対し、デザインの新しさは少し物足りない。
ウエストラインが高めで、やや大柄に感じるボディは、人によっては少し慣れが必要かもしれない。ただし最小回転半径は5.3mで、実際にはかなり小回りが効く印象なのは助かるし、少しシート位置を高くすれば、フード全体が視界に入る。
あえて日常の中で普通に乗って、実用性は十分に高いと実感した。理屈っぽくなくすんなりと乗れるのもいい。乗り味も上級サルーンのようで、満足度は高い。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。