「走るオーディオルームを持ちませんか」…ソニックデザインが語りかけるカーオーディオへのこだわり

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新車を買うときに販売店で注文するオプション用品、いわゆるディーラーオプションの分野では「カースピーカーは売れない」というのが長らく定説になっているらしい。

新車の営業マンに訊いてみても「スピーカーですか? 売れないというより、売ろうと考えたことがないですねー」、「お客さんが興味を示さないので、積極的に薦めようとは思いません」といった調子。オーディオ好きにとっては残念な話である。

◆低迷するカーオーディオ界に物申す

そんな中、昨年あたりからじわじわと存在感を発揮し始めているのが、ソニックデザインの「SonicPLUS」という車種別専用スピーカーパッケージである。値段はトヨタ『プリウス』用で5万6000円~9万8000円、メルセデス・ベンツ『Cクラス』用で12万円(いずれもフロントスピーカー1組の値段、取り付け工賃別)と決して安くはないのだが、これが昨今のカースピーカーにあるまじき人気商品になっているという。

人気の理由を分析してみると、まずは同社独自の「エンクロージュア一体型」という方式が理解され始めた点が挙げられる。スピーカーをキャビネットに入れた状態でドアに取り付けるこの方式は、車外への音漏れが少なく内張りなどの共振も抑えられるため、聴いている音楽が外へダダ漏れになって恥ずかしい思いをすることがないし、何より音質(特に中~低音)がクリアになる。とりわけ、停車時にほぼ無音となるハイブリッドカーでは、そのメリットが歴然なのだ。最近はアウディ『A8』の「バング&オルフセン」など、プレミアム純正オーディオのごく一部でエンクロージュア方式を採用する動きが見られるが、ポン付けできるスピーカーとしては依然としてSonicPLUSが世界唯一。その技術的な説得力の高さが、クルマ好きに刺さるポイントなのだろう。


◆徹底した専用設計と平易な作業工程

そして二番目は車種ごとの専用設計となっている点だ。すでに対応車種はトヨタ、メルセデス、BMWの30モデル以上に拡大し、グレード違いを含めた製品数は60機種を超える。すべて実車で音質と取り付けのしやすさの検証を行っており、オーディオの知識があまりないカーディーラーでも専門店並みの取り付けができるよう、止めネジやスピーカー周囲に貼り付ける防振スポンジといった細かなパーツまでがセットで供給されるという。もちろんユーザーにとっても、自分の愛車に適合したSonicPLUSを選ぶだけで、音の良さも取り付けの仕上がりも約束されるという安心感がある。

もちろんブランドの力も見逃せない。もともとソニックデザインはカーオーディオ愛好家の間ではトップランクの評価を得ていたが、ほんの数年前まで一般にはほとんど知られていなかったブランドである。それが、メルセデスとのコラボによる超高級プレミアムオーディオの「Sound Suite(サウンドスイート)」が登場して一躍注目を集めるようになった。実際、「Sound Suiteには手が出ないけれどこれなら買える」とSonicPLUSを求めるメルセデスオーナーは多いそうで(ちなみにメルセデスの新型Eクラスのメーカーオプションに設定されているSound Suiteは175万円のオプション)、SonicPLUSのデモカーを常備するメルセデスのディーラーも増えている。私自身の感覚では、ソニックデザインは中身で勝負の技術屋集団というイメージが強く、オシャレなブランドというのとはちょっと違う気もするのだが、名前だけがひとり歩きしがちなカーオーディオ業界にあって、こういった実のある会社がブランド化していくのは純粋に嬉しい。


◆顧客のニーズに対応するラインナップ

さて、そんなソニックデザインがSonicPLUSの高級版として先ごろ発売したのが今回の主役、「SonicPLUS THE CREST(ソニックプラス ザ クレスト、以下THE CREST)」である。高いほうから順に「トリプルクレスト」「ダブルクレスト」「シングルクレスト」という3つのグレードがあり、価格は上から153万円、83万円、45万円と凄いことになっている。中身のほうはさらに凄くて、ひとつずつハンドメイドされる完全一体鋳造のアルミダイキャスト製エンクロージュアに、これまた高価なプレミアムライン用ユニットという贅を尽くした内容。まずはプリウス/プリウスα専用モデルから発売され、今後少しずつ車種を増やしていくという。お手頃シリーズのはずのSonicPLUSがいきなり100万円オーバー、かつ、プリウス用を用意したその真意を、今日はソニックデザインの兼田さんに伺うことにした。


◆ソニックデザイン担当者「良いものを面倒抜きで取り付けたいという要望に応えた」

内藤:SonicPLUSのシリーズはソニックデザインの製品の中ではお手頃なシリーズだと思っていたのですが、今回のTHE CRESTはいきなりの超高級路線ですね。

兼田:はい。おっしゃるとおり従来のSonicPLUSとはかなり価格帯が違います。でも私たちはもともとSonicPLUSを廉価版とは考えていなくて、「短時間で脱着できる高級スピーカー」という位置付けで展開してきました。だからその意味では、超高級モデルの登場は自然な流れとも言えるんですよ。

内藤:まあ、プリウス用の5万6000円にしろ、メルセデス用の12万円にしろ、カー用品としては決して安い値段ではありませんからね。

兼田:そうなんです。SonicPLUSのお客様は値段ではなく、「良いものを面倒抜きで取り付けたい」とお考えの方が圧倒的に多い。たとえばメルセデス用は取り付け工賃を含めるフロント用だけで15万円ぐらいになりますが、お客様は「ソニックデザインなのに安いね」といってくださるんです。音の違いは聴けば必ずわかっていただけますし、逆に言えば、その違いに価値を認めるお客様に着実に買っていただいているという状態です。

内藤:そこで、「もっと高いのはないの?」というリクエストに応えたと(笑)。

兼田:たしかにそれもありますが、当社としては、いわゆるオーディオマニアではないお客様やマーケットに対して、当社がもっとも得意とするハイエンドオーディオの価値をどの程度認めていただけるのか、チャレンジしたかったというのが大きいですね。

内藤:なるほどね。それとびっくりしたのは、どのモデルも推奨取付時間(時間工賃)がわずか3時間というところです。100万円クラスのスピーカーが3時間で付いてしまうというのは、高級カーオーディオ界にとっては驚天動地というか黒船襲来というか……。

兼田:実はそこが最大のポイントでした。たとえば一般的なユニット単体の高級スピーカーですと、スピーカーの取り付け部分やエンクロージュアなどをすべて現物合わせのワンオフで作らなければならないので、期間は数週間から数ヶ月、工賃もフロントだけで50~60万円ぐらい掛かってしまうことは珍しくありません。特に、高価なクルマを長期間預けるというのはお客様から見れば大損失なわけです。当社の単体高級スピーカー「プレミアムライン」はエンクロージュア一体型ですからそこまでの時間や工賃は掛かりませんが、さすがに1日や2日では取り付けられない。ところがTHE CRESTは153万円の最上級機でも3時間。少しお待ちいただければその日のうちに乗って帰れます。

内藤:スピーカー自体は思い切り贅沢に造り込んで、逆に取り付けの手間や費用は極限まで抑える、ということですね。

兼田:まさにそのとおりです。当社の財産であるハイエンドオーディオの技術と、お客様に面倒を掛けずに良い音をスピーディに提供するSonicPLUSのノウハウ、その両方を合体させて生まれたのが、今回のTHE CRESTというわけなのです。

内藤:こうなると、いわゆるカーオーディオマニアとして分類できないお客さんも興味を示しそうですね。

兼田:はい。現在の高級カーオーディオは小さなマーケットですが、SonicPLUSを販売して分かったのは、良い音を楽しみたいというお客様は想像以上に多くて、本当に良いものなら高価でも欲しがる方がたくさんいらっしゃるということです。ところが、取り付けに時間や工賃が掛かりすぎたり、クルマを傷めるんじゃないかという心配があって、その層になかなかリーチできていなかった。THE CRESTは、そういうお客様にも安心して本物のサウンドを楽しんでいただきたい、というメッセージでもあるのです。

内藤:なるほど。良く分かりました。ところでTHE CRESTの第一弾製品は30系プリウスということですが、これにも狙いがありそうですね。まさか「一番売れている車種だから」とか、そういう単純な理由ではないですよね(笑)。
兼田:カーオーディオには、ふたつの考え方があると思います。ひとつは、自分が本当に気に入ったクルマのオーディオを良くしたいという考え方。もうひとつは、本当に良い音を楽しむためにクルマから選ぶという考え方です。これまでのSonicPLUSはどちらかと言えば前者でしたが、THE CREST」は後者も狙っていきたいと思ったわけです。

内藤:ある意味、後者はオーディオマニア的な発想でもありますよね。

兼田:そうですね。平たく言うと、走るオーディオルームを持ちませんか?ということでしょうか。趣味のクルマをお持ちの方でもセカンドカーにプリウス、というパターンは多いですし、一番売れている車種だから中古車も買いやすい。今、30系プリウスの中古は150万円ぐらいで買えるようになっていますから、それを買ってTHE CRESTを取り付けたら、いきなり最高峰のオーディオルームが手に入るわけです。

内藤:そう考えると、なんだかワクワクしてきますね。それと現実的な話になってしまいますが、ソニックデザインの製品は中古市場でも稀少というか、本当に価値が下がらないでしょう。THE CRESTも将来手放すとき高く売れそうですよね。

兼田:メーカーの人間が申し上げることではないかもしれませんが、資産価値はあると思います(笑)。ソニックデザインの製品は脱着が簡単で、長年お使いいただいても音質や性能の低下がほとんどないので、販売店で下取り品が出てくるのを待っているお客様は常にいらっしゃいます。一般に、カースピーカーというのは取り外すと二束三文になってしまいますし、取り外した痕を元に戻すのにも費用が掛かりますが、当社の製品は音質だけでなく、そういう点でもお客様に喜んでいただいています。

内藤:数年後、THE CRESTの中古が出たら争奪戦は必至じゃないですか(笑)。

兼田:実際、そういうお声は早くもいただいています(笑)。特にTHE CRESTのエンクロージュアは完全な手作りで、限られた台数しか供給できませんので……。

内藤:噂によると既にバックオーダー状態とか?

兼田:はい、おかげさまで納品まで数ヶ月お待ちいただいている状態です。

内藤:おおお、それは凄いですね。一番高いの(トリプルクレスト)も売れたんですか?

兼田:有り難いことに、むしろ高いほうからご注文いただいている感じです。

内藤:それは驚きました。いい音への潜在需要というのは想像以上に大きいようですね。


◆音へのこだわりは止まらない

ところで、レスポンスの三浦編集長は愛車のプリウスPHVで既にSonicPLUSのレギュラーモデルを1年以上使い続けている(過去の記事参照)。本人はとても気に入っているようなのだが、今回THE CRESTに交換したという。そこで次回は三浦編集長にバトンを渡し、しっかりエージングが進んだ三浦編集長のSonicPLUSと、新しいTHE CRESTとの比較試聴を敢行する予定である。僕自身、THE CRESTは『デジコア808i(ソニックデザインの高級デジタルプロセッサーアンプ)』を装備したメーカーデモカーで試聴しているが、三浦編集長の愛車では大胆にも、純正オプションのAVナビでTHE CRESTを直接駆動するという。どんな音が聴けるのか、今から楽しみだ。
《内藤 毅》

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