災害による鉄道運休区間は566km…「震災」と「水害」で二分

鉄道 企業動向
大船渡線の線路敷地を改築したバス専用道を走る大船渡線BRTのバス。左側の三陸鉄道南リアス線は今年4月に盛~吉浜間で運転を再開し、残る吉浜~釜石間も2014年春には再開の予定だ。
  • 大船渡線の線路敷地を改築したバス専用道を走る大船渡線BRTのバス。左側の三陸鉄道南リアス線は今年4月に盛~吉浜間で運転を再開し、残る吉浜~釜石間も2014年春には再開の予定だ。
  • 気仙沼線柳津~気仙沼間もBRTによる仮復旧が図られたが、鉄道の再開時期は示されていない。
  • 岩泉線の終点・岩泉駅で発車を待つ普通列車(2006年9月)。現在は全線運休中で、廃止の方針が示されている。
  • 津波に飲み込まれた常磐線の新地駅。この駅を含む相馬~浜吉田間は内陸側に線路を移設して2017年春にも再開する予定。
  • 飯田線は平岡~天竜峡間が台風18号の影響で運休中。運転再開までには3カ月程度かかる見込みという。
  • 京阪京津線は台風18号の影響で軌道内に大量の土砂が流入。運転再開は9月27日以降になると見られる。

9月23日現在、災害により運休中の鉄道路線は8社19線21区間で、総延長は566.3kmとなっている。このうち2011年3月の東日本大震災による運休区間は271.2kmで、全体の5割弱。震災による運休区間が徐々に復旧する一方、水害による運休区間が増加している。

2区間26.5kmは近日中に運転を再開する見込みだが、それ以外は運転再開までに数カ月~数年単位の時間がかかるか、あるいは再開の時期が示されていない。利用者が極度に少ない一部の路線は廃止の方針も示されている。

各地の運休区間は以下の通り。福島第一原発の警戒区域などに入っている常磐線広野~原ノ町間を除き、代行バスや並行する路線バスなどによって代替ルートが確保されている。

■三陸鉄道 北リアス線 小本~田野畑(岩手県) 10.5km
東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。復旧作業が現在進められており、2014年4月までに再開する予定。

■JR東日本 岩泉線(全線) 茂市~岩泉(岩手県) 38.4km
2010年7月に土砂崩れが発生し、これに列車が突っ込んで脱線。運休後の調査で岩盤崩壊や落石の恐れがある場所が多数確認されており、利用者も極度に少ないことから、JR東日本は2012年3月に同線を廃止する方針を示した。鉄道の存続を求める沿線自治体との交渉が難航している。

■JR東日本 山田線 宮古~釜石(岩手県) 55.4km
東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。JR東日本はバス高速輸送システム(BRT)による仮復旧の意向を示したが、鉄道の早期再開を求める沿線自治体との間で交渉が難航している。

■三陸鉄道 南リアス線 吉浜~釜石(岩手県) 15.0km
東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。復旧作業が現在進められており、2014年4月までに再開する予定。

■JR東日本 大船渡線 気仙沼~盛(宮城・岩手県) 43.7km
東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。2013年3月から鉄道復旧までの暫定策としてBRTを導入し、線路敷地の一部を活用したバス専用道を整備した。

■JR東日本 気仙沼線 柳津~気仙沼(宮城県) 55.3km
東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。2012年8月から鉄道復旧までの暫定策としてBRTを導入し、線路敷地の一部を活用したバス専用道を整備した。

■JR東日本 石巻線 浦宿~女川(宮城県) 2.5km
東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。運転再開時期は未定だが、女川駅を内陸側に移設した上で再開する方針が示されている。

■JR東日本 仙石線 高城町~陸前小野(宮城県) 11.7km
東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。ルートを内陸側に移設した上で2015年にも再開する予定。

■JR東日本 常磐線 相馬~浜吉田(福島・宮城県) 22.6km
東日本大震災の津波で路盤が流失するなどの被害。ルートを内陸側に移設した上で2017年春にも再開する予定。

■JR東日本 常磐線 広野~竜田~原ノ町(福島県) 54.5km
福島第一原発の警戒区域などに入っているため、被害調査もほとんど進んでいない。ただし広野~竜田間8.5kmは2012年8月から避難指示解除準備区域に移行しており、JR東日本は沿線自治体の帰町判断(2014年春)に合わせて再開する考えを示している。

■JR東日本 只見線 会津川口~只見(福島県) 27.6km
2011年7月の豪雨で橋桁が流失するなどの被害。JR東日本は復旧の可否について「総合的に検討を進め」るとしており、公的支援が受けられない場合の運転再開は困難とみられる。

■JR東海 飯田線 平岡~天竜峡(長野県) 22.4km
台風18号の大雨で線路内に土砂が流入するなどの被害。JR東海は運転再開までに3カ月程度かかる見込みとしている。

■JR東海 名松線 家城~伊勢奥津(三重県) 17.7km
2009年の台風18号により橋台の流失や土砂の流入などが発生。一時は鉄道を廃止する方針が示されていたが、関係自治体が鉄道施設周辺の治山事業などを実施することを条件に復旧の方針に転換した。2016年度の再開が想定されている。

■信楽高原鐵道 信楽線(全線) 貴生川~信楽(滋賀県) 14.7km
台風18号の大雨で橋桁が一部流失。

■京阪電気鉄道 京津線(全線) 御陵~浜大津(京都府・滋賀県) 7.5km
台風18号の大雨で線路内に大量の土砂が流入するなどの被害。再開は9月27日以降か。

■六甲摩耶鉄道 六甲ケーブル線(全線) 六甲ケーブル下~六甲山上(兵庫県) 1.7km
台風18号の大雨の影響で運休中。

■JR西日本 三江線 江津~浜原(島根県) 50.1km
8月に発生した豪雨の影響で橋脚が流失するなどの被害。

■JR西日本 山陰本線 江津~浜田(島根県) 19.0km
8月に発生した豪雨の影響で運休が続いていたが、9月25日始発列車から再開の予定。

■JR西日本 山陰本線 益田~奈古(島根・山口県) 45.7km
7月に発生した豪雨の影響で橋脚の沈下などが発生。運転再開は1年以上先か。

■JR西日本 山口線 地福~益田(山口・島根県) 50.0km
7月に発生した豪雨の影響で橋桁が流失するなどの被害が発生。運転再開は1年以上先か。

■岡本製作所 別府ラクテンチケーブル線(全線) 雲泉寺~乙原(大分県) 0.3km
9月初頭の大雨により道床の基礎部分が沈下。

《草町義和》

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