【池原照雄の単眼複眼】軽に過大な期待はできない

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◆激化する市場争奪戦

日本固有の規格によるミニカーである軽自動車の市場争奪戦が激化する雲行きだ。トヨタ自動車が9月にダイハツ工業からのOEM調達で参入し、乗用車メーカー全8社が扱うことになった。12月にはかつてのトップメーカーで、巻き返しを狙うホンダが新モデルの第1弾を売り出す。

国内市場の縮小傾向が続くなか、軽の販売比率は高まり、市場を下支えするとの期待がある。また、一定量の国内生産を維持するうえでも軽事業の強化が重要と見られている。だが、このミニカーに日本の自動車産業が抱える諸課題の解決を背負わせるには荷が重すぎる。消耗戦の末、各社の日本での収益力をさらに悪化させるという最悪のシナリオも考えられる。

軽販売のテコ入れを表明しているメーカーの拡大計画や新規参入したトヨタの計画を積み上げると、ざっと年30万台になる。内訳はホンダが15万台、軽の商品企画会社を共同で立ち上げた日産自動車と三菱自動車工業が合計で9万台、トヨタが6万台(当面のダイハツからの調達上限)である。


◆ホンダは倍増の年30万台めざす

少なくとも1990年代以降、軽の商品強化をおざなりにしてきたホンダは、2009年に就任した伊東孝紳社長が再強化策を打ち出し、年末には新開発エンジンを搭載した新モデルを出す。5年後には、昨年実績に15万台規模を上乗せして年30万台に拡大させる計画を打ち出している。

日産と三菱の折半出資による軽の企画会社、NMKV(東京都港区)の遠藤淳一社長兼CEOは、時期は明示していないものの、現状では両社合計で15%程度の軽シェアを「最低でも20%に高め、(ダイハツ、スズキとともに)3強グループの一角を占めたい」と表明している。仮に軽市場が昨年並みの173万台で推移すると、5%のシェアアップ分は9万台強に相当する。

これら4社だけで30万台の販売増計画は、供給過剰圧力となる(実際には市場で敗退した企業が供給を抑制するのだが)。新車の総市場に占める軽の比率は、ダイハツの『ミライース』のようなクルマの登場によって今後も伸びる可能性が高いものの、それにも限度はあろう。


◆国内空洞化抑止への寄与は限定的

軽比率のピークは08年の36.8%(販売台数は187万台)で、日本自動車工業会の需要予測によると今年は35.6%の見込みだ。公共交通機関の不十分な地方では、通勤など日常のパーソナルな足としての軽の存在は欠かせない。しかし、長距離走行や多人数乗りが求められるファミリーカーは登録車に根強いニーズがある。

登録車から軽へのシフトは、軽の圧倒的な税負担の軽さが支えてきた。だが、数年先に消費税の引き上げを伴う税の抜本改正が行われる段階では、そうしたクルマの税体系が温存されるかは不透明だ。

12年春に富士重工業は、軽の全量をダイハツからの調達に切り替え、生産から撤退する。軽を生産するのは、ダイハツ、スズキ、ホンダ、三菱の4社となる。これら各社では国内生産維持に軽が一定の役割を果たすだろうが、業界べースで見れば国内空洞化抑止策として軽に過大な期待はできない。

斜陽の国内マーケットでもしっかり売れる魅力的な登録車の開発や、円高下でも日本からの輸出で採算可能なコスト構造の構築が、空洞化抑止には欠かせないのである。
《池原照雄》

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