選考基準は人によってそれぞれだろうが、筆者はシンプルに「その年をもっとも象徴するクルマ」が受賞するべきだと思っている。やがて何年後かに振り返ったときに、その年の自動車業界の様子や社会情勢が目に浮かぶようなクルマだ。
その点、2009年を象徴するのは「エコカー」とりわけハイブリッドカーで、中でも『プリウス』がもっとも注目度が高かったのは明白。クルマ自体も、燃費や動力性能といった期待される部分を着実に進化させつつ、予想を超える低価格で発売されたことを大いに評価し、迷わず10点を入れた。次いで『インサイト』にもそれなりに多く配点をし、i-stopの『アクセラ』にも少し点数を投じた。あと2台は個人的な好みで配点した。
『i-MiEV』が画期的であることは重々承知しているが、まだ一般に普及していないので、特別賞のみに推した。
選考結果は概ね妥当だったんじゃないかと思う。ただ、特別賞の「ベストバリュー」は難しかった。実際、同賞には10車種が挙がり、票が割れてギリギリで受賞したのが『レガシィ』だ。「バリュー」の解釈にはいろいろあるだろうが、筆者は、同クラスにおけるコストパフォーマンスの高さと、クルマに期待される本質をちゃんと受け継いだという意味ではアリかなと思い票を投じた。
それにしても、インサイトがここまで善戦するとは予想外だったのだが、プリウスとこれほど大接戦で本賞を争った車種に、何も「賞」と名の付くものが与えられないのは可哀想だ。
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年富山県生まれ。学習院大学卒業後、自動車メディアの世界へ。自動車情報ビデオマガジン、自動車専門誌の記者を経て、フリーランスとして活動を開始。最新モデルからヒストリックカー、カスタマイズ事情からモータースポーツ、軽自動車から輸入高級車まで、幅広い守備範囲を自負する。現在はウェブ媒体を中心に執筆中。「プロのクルマ好き」として、常に読者にとって役に立つ情報を提供できるよう心がけている。