【AutoStanding】アフターマーケットは納得感を“見せよ”

自動車 ビジネス 企業動向
【AutoStanding】アフターマーケットは納得感を“見せよ”
  • 【AutoStanding】アフターマーケットは納得感を“見せよ”
  • 【AutoStanding】アフターマーケットは納得感を“見せよ”
  • 【AutoStanding】アフターマーケットは納得感を“見せよ”
  • 【AutoStanding】アフターマーケットは納得感を“見せよ”
  • 【AutoStanding】アフターマーケットは納得感を“見せよ”

普通の中古車に対する第三者の保証

プロトコーポレーションは、日本自動車鑑定協会(JAAA)、プロテクション・プラス・ワランティ(以下PPW)とともに「Goo認定保証」なる中古車の「保証」を商品化した。当面、7月までは浜松地区でのテストマーケティングに留めるが、成果を見極めた上でエリアの拡大を目指すとのことである。

これは、「普通の」中古車に対して、「第三者が」保証を付けるという意味で日本初の商品である。

「普通の」という点を強調するのは、これまでも輸入車に対しては第三者が保証を付ける事例が存在したからである。いわゆる「インポータ認定中古車」には通常保証が組み込まれているが、その保証は最終的に損保会社が引き受けていることが多い。つまり、第三者である損保会社が裏保証という商品をインポータに対して販売していることになる。また、認定中古車以外の中古輸入車についても、今回プロトのパートナーになったPPWが一昨年から保証商品を販売している。

また、「第三者が」という意味は、メーカーでも中古車販売事業者でもない純粋な第三者による保証だという点が重要だからである。新車ディーラーが販売している国産の中古車には通常保証が付いているが、これはメーカーの保証である。また、中古車販売専業店(以下、専業店)が販売している中古国産車には、専業店自身による保証しか付いていない(新車登録後3年間の新車保証が残っているものを除く)。

つまり、専業店に置いてある、新車保証期間の切れた、国産の、「普通の」中古車に対して、メーカーでも専業店でもない「第三者が」保証を付ける、という意味では日本で初めてということである。

この保証商品構成と役割分担を、業務フローの順番に見ていくことにする。

第一に、中古車情報メディアであるプロトが自社の雑誌媒体「Goo」、ウェブ媒体「Goo-net」の広告主である専業店の中から、属性と実績に基づき優良店を「Goo認定保証加盟店」として指名する。

次に、「Goo認定保証加盟店」が所定の鑑定料・保証料を払うと、加盟店が保有する国産の中古車に対して、中古車鑑定専門機関JAAAが中古車の鑑定を実施し、鑑定書を発行する。鑑定の対象は、車体・内装・機関・骨格の4分野で、各々にグレード評価を付ける。

そして、鑑定書で一定以上のグレード評価を得た中古車に対して、中古車保証会社PPWが1年間の修理代を保証する、という商品の構成・役割分担になっている。

修理代の保証とは、保証期間中に対象中古車に故障が発生し、加盟店での修理・交換を要した場合に、一定の基準や条件(※)に基づき、PPWが修理に要した部品代や工賃をユーザーに代わって加盟店に支払う、ということを意味する。つまり、「Goo認定保証車」を購入したユーザーは保証期間中、修理代の負担を心配する必要がなくなるということである。

最後に、再びプロトが加盟店を「Goo認定保証加盟店」として、保証対象車を「Goo認定保証車」として、自社の媒体でユーザーに告知する。ユーザーは購入前にどれが信頼できるお店で、どれが安心できるクルマなのかを理解・納得した上で購入することができるようになる。

※ 基準・条件
*保証期間:中古車登録日(メーカー保証期間が残っている場合はメーカー保証が切れた日)から1年間
*保証対象車種:初度登録より10年以内で走行距離10万km以内の国産車で、上述の認定保証プロセスを経たもの
*保証対象部品:内外装部品、油脂類、エンジン・シャシ関連の消耗部品は対象外。134点(初度登録より7年以上)−161点(同7年以内)
*保証限度:修理回数の制限はない。車両本体販売金額を保証期間中の累計修理費の上限とする

◆「納得感の見える化」で中古車の小売を活性化する

中古車情報メディアであるプロトがこの商品の開発にあたって目を付けた点、この商品を必要と考えた理由は自明であろう。

中古車という商品の購入には常に漠然とした不安や不満がつきまとう。専業店からの購入には、「確かに安いが、品質評価は素人にはできない」、「もしかすると品質不良車を掴まされてしまうのではないか」、「その結果、買った後に壊れてしまい、修理費が嵩むのではないか」、「それがいくらになるのか見当も付かない」、「お店は品質を保証すると言っているが、そもそもこのお店自体が信頼できるのか」という不安が頭から離れない。

だから、少々高くても新車ディーラーでメーカー保証付きの中古車を購入する方を選ぶユーザーもいる。だが、今度は「安心料だとはいえ専業店の価格と比べて高すぎるのではないか」、「もしかして安心料以上のものを払わされているのではないか」という不満が残る。

中古車の年間登録台数は新車の600万台を上回る800万台もあるのに、その大半は業者間の転売によるもので、実際にユーザー向けに小売登録されている実需は300万台程度ではないかと言われるほど、中古車の小売現場では出口が詰まっている。その要因の一つに、業者がこうしたユーザーの定性的な不安・不満を信頼・納得できる形で解消できていないことがあると考えられる。

実際にプロトでは、ユーザー調査を通じて、「クルマの信頼性に問題がある」「中古車の走行距離は信用できない」「クルマに詳しくないと買えない」と考えているユーザーが7割以上いることを認識していた。

専業店を広告主として抱える情報メディアであるプロトにとっては、小売という出口が広がらない限り、広告料収益の展望が開けない。だからこそ小売停滞の根源的問題である漠然とした不安・不満を解消しようとした、それもユーザーの信頼を勝ち得ていない専業店自身による保証ではなく第三者に保証させた、というのが「普通の中古車に対する第三者の保証」という商品開発の視点・目的だったと考えられる。

もっとも、この商品の対価を払うのは一義的には専業店であってユーザー自身ではなく、保証料は車両価格に組み込まれてしまうから、ユーザーには不安・不満解消のために最終的に自分が負担したコストがいくらだったのかは分からない。だが、新車ディーラーが提示する価格と、専業店が提示する価格を、同じ条件(信頼)のもとで比較することが可能になり、より納得感のある方を購入することが可能になる。

つまり、「納得感の見える化」にこの商品の価値があり、「納得感の見える化」というマーケティング・コンセプトでプロトやそのパートナーたちはビジネス・チャンスを掴もうとしているのだということが分かる。

◆類似したマーケティング・コンセプトの事例

実は、国内のアフターマーケットでは、プロトと同様に「納得感の見える化」というマーケティング・コンセプトで成功した事例が多い。

1. 中古車買取のガリバー

ガリバー登場以前、ユーザーがクルマを売却しようとしたら、新車ディーラーに下取りに出すか、専業店に売却するかのどちらかの選択肢しかなかった。だが、前者の場合には新車値引きと下取り価格が渾然一体となってしまい、「本当に公正な下取価格を付けてもらっているのか」という不満・疑問がユーザーの側にはあった。

一方で後者の専業店への売却でも、専業店はいつ、いくらで、誰に売れるか分からない状態で買取るわけだから時価での買取にならないこと、リスク料が買取価格に織り込まれる構造にあるが当該リスク料の妥当性が判断できないことに不満が生じやすい。それに加えて、業者ごとの査定価格のバラつきも大きいため、値付けプロセスそのものに疑問を持ちがちである。

こうした不満や疑問に対して、ガリバーは在庫は持たず即時時価で処分すること、処分先は一律オークションとすること、値付けシステムを全国的に標準化すること、により、買取価格に対する「納得感の見える化」によって成功したわけである。

2. 中古カー用品買取・販売のアップガレージ

中古車以上に「納得感の見える化」が遅れていたものが中古カー用品である。

趣味性の高いタイヤ・ホイールや製品ライフサイクルがクルマ本体より短いAVN(オーディオ・ビジュアル・カーナビ)は、同じクルマに乗り続けていても買い替えが発生するし、新車代替の際には中古車に付いて一緒に売却されていく。

だが、アップガレージ以前にはこうして売られていく中古のカー用品の価値は実質的にゼロと見なされた。どんなに高機能で新しい製品であっても中古品や中古車の下取・買取査定時には殆ど加点がなく、逆に社外品ということで減点にすらなっていたことにユーザーは漠然とした不満を持っていた。「本来は相応の市場価値があるはずだ」と。

アップガレージは、こうした不満に対して中古カー用品市場を創設し、標準査定システムを導入することで、「納得感の見える化」を実現したのである。同時に、アップガレージは価格対品質が保証されるのであれば新品でなくても購入したいという潜在需要に対しても、品質保証による「納得感の見える化」でその顕在化に成功した。

3. デント・スクラッチ・リペア(軽板金)のカーコンビニ倶楽部

事故でなくてもクルマには日常の使用中にちょっとした窪み・凹み(デント)や擦り傷・引っかき傷(スクラッチ)が頻繁に発生するものである。

しかし、カーコンビニ倶楽部(カーコン)以前には、こうしたデントやスクラッチは、カー用品店で購入してきたパテやタッチアップペイントでユーザー自ら補修するか、ディーラーや鈑金工場に修理を頼むか、の選択しかなかった。前者には当然ながら素人品質に対する不安や不満があり、後者にはどれだけの時間を要し、どれだけの料金になるのか分からないという不安や不満があった。どちらも嫌だとなると我慢して乗り続ける以外なかった。

カーコンは、独自の工法を使って作業を標準化して料金を明示したことにより、「納得感の見える化」を実現したのである。現在では、自動車メーカー、カー・ディテイリング業者も多数新規参入し、サービス・市場として定着している。

4. 見せる車検のオートウェーブ

大手カー用品チェーンのオートウェーブは、車検・整備やディテイリングなどの料金表を各店に掲示するとともに、サービスショップを全てガラス張りにして作業工程が全て顧客から見えるようにしている。

それ以前は、作業が終了してみるまで費用がどのくらい掛かるのか分からないという不安、不必要な作業や部品交換をされているのではないか、逆に必要な作業や部品交換が手抜きされているのではないかという不安を感じるユーザーも多かった。

オートウェーブは、見積もり−作業指示−作業実施−納品−代金請求−代金支払という一連のプロセスを全て透明で一貫したものにして「納得感の見える化」を実現したのである。

◆「納得感の見える化」はアフターマーケット全体のキーワード

アフターマーケットに「納得感の見える化」のマーケティング・コンセプト、つまり「透明性」を売り物にした成功事例が多いのはどうしたわけだろうか。顧客に嬉しさやありがたみを提供することがマーケティングの基本だが、顧客が感じる嬉しさとしては、「透明性」以外にも「低コスト」、「利便」、「高機能」、「高品質」など様々あるにもかかわらず、である。

それだけアフターマーケットには「透明性」が欠けていたということの証左であるが、他方、それだけに「透明性」の提供、「納得感の見える化」によって成功者となれるチャンスが豊富にある宝島だと見ることもできる。

少子高齢化・人口減少時代を迎え、国内のアフターマーケット業界には閉塞感が漂っており、自動車業界特化型コンサルティング会社たる住商アビーム自動車総研でも海外進出や事業多角化の相談を多数いただくが、国内市場でも「納得感の見える化」によるビジネス・チャンスはまだまだ存在すると考えられる。

新車販売が低迷し、車齢や保有期間が長期化しても、保有台数が維持される限りアフターマーケットの市場基盤は減少しない。既存事業の成長性や収益性を冷徹に見直すことは当然必要だが、既存事業を安易に放棄する前に、自社の事業や自社が属する業界の中にまだ「納得感の見える化」ができていないプロセスや領域は残っていないか、今一度見回してみてはどうだろうか。

《》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集