イスラエルのベンチャーと日本企業のWIN-WIN…橋渡し役BEYOND MOBILITYの狙い

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説明会に登壇したBEYOND MOBILITY社マネージングパートナー&Co-Fouderを務めるEyal Rosner氏
  • 説明会に登壇したBEYOND MOBILITY社マネージングパートナー&Co-Fouderを務めるEyal Rosner氏
  • 説明会には自動車メーカーやサプライヤー関係者約30名が出席した
  • BEYOND MOBILITY社が企業の橋渡しとしているサービス「Garage」
  • BEYOND MOBILITY社の守備範囲は自動車など移動体から個人が使うスマートフォンに至るまで幅広い
  • 橋渡しサービス「Garage」と並行して、BEYOND MOBILITY社はベンチャーに対する投資も募集しており、その学は75万ユーロ。春にはすべて調達できそうだという
  • これまでBEYOND MOBILITY社が手掛けた企業は世界のトップ企業がずらりと並ぶ
  • BEYOND MOBILITY社のロゴ
  • 日本でサポート役を務めた住商アビーム自動車研究所の大森真也社長

モービルアイに代表されるイスラエルのモビリティベンチャー企業と日本企業を結びつけることで、互いのシナジー効果を高めようと、リンカーズと住商アビーム自動車総合研究所との共催でイスラエル自動車産業セミナーを2月21日、都内で開催した。

来日したのは自動車産業にフォーカスしたベンチャーキャピタルBEYOND MOBILITY社のマネージングパートナー&Co-Fouderを務めるEyal Rosner氏。首相直下のプロジェクト Fuel Choice Initiative のヘッドを 2012 年より 5 年間務めるなどイスラエル・スタートアップ 界における著名人でもある。

同社は、『Garage』と呼ばれるサービスを通して、イスラエル国内のスマートモビリティでスタートアップしているベンチャー企業や大勢の起業家と、資金調達も含めたサポートをする会社として数多くの実績を持つ。既にBMWやインテル、マイクロソフトといった世界を代表する企業との協業や合弁事業などについて関わってきた。

今回、Rosner氏が来日した狙いは、「世界トップクラスの量産技術を持つ日本企業とイスラエルの“頭脳”であるベンチャー企業を結びつけることで互いのシナジー効果を高められる」ことにある。

Rosner氏によれば、「イスラエルは日本の四国ほどの面積に人口800万人が住み、国の規模としてはかなり小さい」。そんな事情もあり、イスラエルは活躍できる場を以前から国外に求めてきたのだという。

注目すべきは、イスラエルでは起業人が極めて多いということだ。代表者は幅広い年齢層に及び、国民がそうした環境に慣れている。背景には、「イスラエルでは18歳になると男性は3年、女性も2年の徴兵がある。この徴兵時に各人の能力が見極められ、先進技術に対する能力が高いと判断されると、場合によっては徴兵を延長してまでその能力を徹底的に伸ばす」(Rosner氏)ことがあるのだという。

実は自動運転の実現に欠かせないLiDARを始めとする先進テクノロジーは、元を質せば軍事技術から生まれている。イスラエルがこうした先進分野で世界の最先端を走り続けるのはこうした背景があるからなのだ。そして、ここで培ったノウハウを退役後、仕事に活かしたいと考える人が増えるのは自然な話でもある。そのためベンチャービジネスのスタートアップ数は極めて多く、「イスラエルでは年間を通して人口1600人あたり1社が誕生している計算にもなる」(Rosner氏)。という。

一方で、それはリスクでもある。セミナーを開催した住商アビーム自動車総合研究所の大森真也代表によれば、「1年間に1000社が起業し、1000社が消滅する」という不確実性の問題も抱えているという。

そこで重要となってくるのがそれらの新会社を選別する眼力だ。Rosner氏は「弊社は永年の経験と実績の下、求められる企業を的確に探して紹介することができる」ことを強調した。

セミナーには日本国内の日本の自動車メーカーやサプライヤーなどの担当者約30人が出席。Rosner氏のプレゼンの後に寄せられた質問では、イスラエルでの日本企業のイメージを尋ねられると、「現状で日本企業がそうしたベンチャーと積極的に協業しているという話は聞かないし、イスラエル国内でも日本企業への関心度は低いのは事実だ」と話す。それでも化粧品会社でイスラエルへ進出して成功した事例は聞いているという。

また、プレゼンで「サポートについては年間契約で結ぶのが基本となり、それには35万ユーロの費用がかかる」(Rosner氏)とのことだったが、質疑での高額で躊躇する面があるとの指摘には「3~4カ月の期間を限定したトライアルとして検討してもいいのではないか」と柔軟であることを説いていた。

話はイスラエルでの観光にも及び、大森代表は「日本ではエレサレムを巡る争いが絶えない国というイメージが根深いが、首都のテレアビブに出掛けると平穏そのもの。死海やキリストが磔となったとされるゴルゴタの丘など、見るべきスポットも数多い。ぜひ一度イスラエルを訪れてみてはどうか」とのサポートも行った。

この後、出席者はEYAL氏との懇親の場へと移動。開場では閉場時間ギリギリまで多くの出席者がRosner氏と意見を交換。イスラエルが擁するベンチャービジネスに対する出席者の強い関心が窺えた。

《会田肇》

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