09 年夏に登場の新型サイバーナビは、外観こそ08モデルをほぼ踏襲しているものの、スマートループの強化やAV機能の向上など、見るべき部分の多いモデルチェンジとなった。進化のポイントと狙いについて、サイバーナビのハードウェア担当枝久保隆之氏、ソフトウェア担当田中健次氏の両名に話を聞く。
◆Hi-Fi機をベンチマークに
----:市販カーナビのトップブランドである『サイバーナビ』の09モデルを開発するに当たり、商品企画担当として実現したかったことは。
枝久保:スマートループに代表される高機能ナビゲーションとしてお客様から評価をいただいているサイバーナビですが、09モデルではAV機能面でもフラッグシップにふさわしい性能を目指しました。
----:高音質/高画質を謳ったモデルが他社から登場してきています。このような背景もあるのでしょうか。
枝久保:ええ。われわれもうかうかしていられない、というわけでハイエンドのカーオーディオ設計陣の力も借りて、Hi-Fi機に匹敵する音質を追求しました。 内部のハードウェアには可能な限り手を入れています。
----:音質向上を目指す上でクリアすべき課題はどういったところでしょうか?
枝久保:サイバーナビは、ブレインユニットと呼ぶHDD部が脱着可能な構造なので、オーディオ機能のパーツを配置するためのスペースが限られます。絶対的なスペースがないのでパーツの流用が利きませんし、オーディオ単体機に比べても発熱の部分でかなり厳しい。アンプ部の発熱がナビ部分などに与える影響も考慮しながら、目指す音質に近づけていきました。
◆特注パーツを一つ一つ聴き比べ
----:パーツの選定には特に気を遣ったとのことですが。
枝久保:そもそも昨年モデルから、内蔵アンプに高性能の半導体素子「MOS FET」、バーブラウン社製D/Aコンバーター、音質劣化を抑制する「ハイボルテージボリューム回路」、さらに浮動小数点演算に対応するテキサス・インスツルメンツ社製の32bitDSPを採用するなど、音質に関わる専用パーツを多数採用しておりますが、今回は電源周りのコンデンサーを音響用のものに変更いたしました。
コンデンサーにおいては、リード線を伝導性・防食性・耐熱性に優れたOFC(Oxygen Free Copper)を採用しています。さらに経を太くするなど変更を加えて、音色の異なる何種類ものものをコンデンサーメーカーに1個1個フルカスタムで作ってもらい、社内で何度も試聴を重ねて、吟味して選択いたしました。先日もオーディオ評論家の方にも試聴していただき、高い評価をいただきました。
◆ATRAC Advanced Losslessに対応、大容量ストレージを高音質再生のために活かす
枝久保:今回はハードの改良だけではなく、原音の音質向上も目指し、CDをハードディスクに録音する「ミュージックサーバー」でのリッピングに「ATRAC Advanced Lossless(AAL)」に対応たことも09モデルのトピックです。
----:サイバーナビのストレージは80GBという他社にはないダントツの容量です。ロスレスリッピングに対応することで、容量的なアドバンテージを高音質に振り分けたということですね。
枝久保:従来からリッピングはATRAC系を採用しておりまして、今回その機能を上げてAALにも対応したというカタチです。CDの音質をまったく損なうことなく、また何十枚もCDを車内に置かずとも手軽に高音質を楽しんでいただければ。また、A2DPプロファイルのBluetoothオーディオ再生にも対応し、ナビ画面上への楽曲タイトルやアーティストの表示も可能です。ケータイでダウンロードした着うたフル/フル+をブレインユニットに転送して再生することもできます。
----:多彩な再生環境があるというのは、ユーザーとしても嬉しいですね。これほどまでの音質へのこだわりは(ハイエンドカーオーディオの)『カロッツェリアX』という印象です。これまでのサイバーの歴史はハード2年ごと、ソフト2年ごとに交互にフルチェンジするという流れだったと認識していますが、今年はその掟を破ってハードもソフトも思い切って変更してきた、ということでしょうか。
枝久保:そうですね。筐体は変えていませんが音響面については、かなり見直しをしております。