もしかしたら「『インサイト』の2+2バージョンか?」という懸念は、幸いにも大きく外れていた。
トヨタ『パッソ』およびダイハツ『ブーン』の開発を指揮した鈴木敏夫チーフエンジニアによれば、デザインテーマは「素の美しさ」。なるほど4つのタイヤがボディの四隅に踏ん張る健康的な2BOXフォルムなのだが、「素」を主張するにしてはちょっとキャラが濃い。
もはや立派に市民権を得たSUVなのだが、やや軟弱路線に迎合している感があるのが気になるところ。そんな風潮に喝をいれるかのように、いかにも三菱らしく、クロカン風味を効かせているように映る。
ハイブリッドでもなく、スライドドアを持つわけでもなく、エグゼなソファ感覚の後席を備えているわけでもないオーソドックスなFRセダンにして、誰もが「部長」に昇格したような豊かな気分(!?)になれる、セダンの良さを再認識させてくれる1台が新型『マークX』だ。
「セダンと同じ全長で、セダン・プラスの機能性をもたせた」の説明は、かつてのアルファロメオ『156スポーツワゴン』と同じではないかと思った。
思わずたじろぐほどの色気が漂っている。抑揚の効いたボディラインや、眼光鋭いフロントマスク、そしてセクシーなヒップラインなどなど……。去勢された草食系男子がはびこるこの世の中で、久しぶりに、男性ホルモンを感じさせてくれるクルマだと思った。
四角いボルボの頃から、イタリアンデザインを纏った2ドアクーペ(『262C』や『780』)はあった。その精神は、クーペとカブリオレが別々に造られた最初の『C70』を経て、2 in 1の現在の姿に。
近年、アメリカのビッグ3各社はワゴンらしいワゴンをほぼラインアップしなくなっていた。従来ワゴンを愛用していた層は軒並みSUVを選ぶようになり、大ヒットしたダッジ『マグナム』すら短期間で生産中止に追い込まれた。
ホンダは『CR-Z』をスポーツカーとまず称されることに抵抗があるらしい。
その顔付きから察すれば、これは紛う事なく「ギャラン・フォルティスの新たなファミリー」——そんな思いでドライバーズ・シートへと乗り込もうと思ったら、想像以上にフロア位置もヒップポイントも高い事にまずビックリ。