スズキが単にガタピシ走る軽自動車メーカーだと思っていたら大間違いだ。いまやその質感は驚くほどの進化をみせる。そもそも安いだけのクルマを作るなら、VWが「組もう」と言ってくるはずがないではないか。
2004年登場のスイフト以来、劇的に乗り心地が向上し業界は愕然としたものだが、その流れを受け継いで挑戦した2.4リットルエンジン搭載車『キザシ』。
一気にここまで大きくして大丈夫なのかと案じたけれど、ボディ剛性があり、走りのしっかり感は上手に作りこんできたし、インテリアのまとめかたも悪くない。意外といっては失礼だがリアデザインは秀逸で、特にエキパイの処理の仕方など、おっ? と目をひく洒落っ気すらみせる。
ただし問題はCVTとの組み合わせ。2.4リットルエンジンを選ぶユーザーに対し、がんばったとはいえこのCVTで加速するときのエンジン音が耳につく。ATと組み合わせたほうが静かだったのでは。いや、それでは燃費が。……というスズキの葛藤が見えてくる。
あるいは、もしかしたらこれで出しておいて、次のマイナーチェンジでは、VWグループお得意のDSGを入れてくるのかも? ちょっと気になるスズキの動きである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。