これまでのボルボ『C70』は、『C30』『S40』『V50』との共通性が高く、ファミリーの一員というイメージがいささか強すぎた気がする。そのイメージが、このクルマのスペシャリティ性の足を引っ張っていたように思う。
ところが新しいC70は、だいぶキャラが立った。少し前に出た新型C30に通じる存在感のあるフロントマスクとなり、インテリアの質感もずいぶん増した。ダッシュボードを専用に一連の兄弟車と作り分けるという力の入れようだ。
しかも価格が引き下げられた。最近のボルボが積極的に値下げしているのは大歓迎だ。
そうはいっても540万円スタート、というと簡単に手の出せる価格じゃないし、価格の安さよりも「華」とか付加価値が求められるのがこの世界。そこはやはりドイツ製が強く、C70がその点においていまひとつ決め手に欠けてしまっている。結果として、せっかく値下げしたにもかかわらず、これまでと大差ないような気がするのだ。
ただし、こうした2ドアのスポーティモデルにもかかわらず、後席にまでシートベルトにプリテンショナーを付けたり、ドアにカーテンエアバッグを内蔵させるなど、ボルボと聞いてイメージする安全性への期待に応えている点はさすがだ。
また、ラゲッジルームの使い勝手やオーディオの音質調整などに見られるユーザーの身になった心配りなど、C70がライバルにはないアドバンテージをいくつも持っていることも、あらためてお伝えしておきたい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年富山県滑川市生まれ。学習院大学卒業後、生来のクルマ好きが高じて自動車メディアの世界へ。自動車情報ビデオマガジンの編集部員、自動車専門誌の記者を経てフリーランスに転身。「クルマ好きのプロ」として、ユーザー目線に立った視点と、幅広い守備範囲を自負する。近年は ウェブ媒体を中心に活動中。