車内の高音質化でいちばん体感差が大きいのがスピーカー交換だ。音楽の聴こえ方そのものが変わるからこそ、カーオーディオの“最初の一歩”として選ばれ続けている。
ただしスピーカー交換は配線や内張り脱着を伴う作業でもあり、安心確実に仕上げたいならカー用品店やプロショップで取り付けてもらうのが本来のおすすめルートだ。とはいえ最近の市販スピーカーは付属パーツや車種対応が充実していて、手順さえ押さえればDIYでも思った以上にスムーズに取り付けられるケースが多い。価格と音の変化を天秤にかけたとき「まずはやってみる価値がある」と感じさせてくれるハードルの低さも、いまのスピーカー交換の魅力になっている。
◆エントリーでも“音が楽しくなる”カロッツェリアFシリーズ
家族クルマとして活躍しているホンダ N-BOXスラッシュユーザー代表として参加してもらったのは大学で自動車部に所属する大矢根さん。ジムカーナ車両のホンダ『インテグラ』を楽しみつつ、普段は高音質イヤホンでスマホ音楽を聴くなど音の違いには敏感なタイプだ。家族クルマで触れる機会の多いホンダ『N-BOXスラッシュ』で「車内でも良い音で聴きたい」と思い、スピーカー交換を計画した。
今回装着したのはフルモデルチェンジを果たしたcarrozzeria TS-F1750をチョイス
学生にとって現実的な価格帯で、かつ確実に音が変わるモデルとして選んだのがパイオニア・カロッツェリアのカスタムフィットスピーカー「Fシリーズ」。上位モデルの技術を受け継ぎながら、取り付けのしやすさとコストを両立させた入門ラインだ。今回使うのは17cmコアキシャル2ウェイの「TS-F1750」で、実勢価格は9000円前後。1ユニットで中低域と高域をカバーする同軸構造なので、システムがシンプルにまとまるのも魅力だ。
◆実際のDIYは“準備と順番”を押さえれば意外と簡単
せっかく内張を外すなら、と音質向上パッケージも同時に施工した今回はTS-F1750の交換に加え、ドアの響きを整えるサウンドチューニングキット「UD-S703」も併用している。DIYの基本の流れは、ドア内張りを外す → 純正スピーカーを取り外す → UD-S703の制振・吸音を説明書を参考に施工 → 付属カプラーとブラケットでTS-F1750を装着 → 内張りを戻して完了という手順だ。
説明書の施工例を参考に部材を貼りつけていくポイントは、作業前に“どこにネジがあって、どこがクリップで留まっているか”を把握しておくこと。大矢根さんも最初にWebで内張りの外し方を確認し、ネジ位置とクリップの並びを頭に入れてから着手した。内張りは力任せに引くとクリップを傷めやすいので、端から順に手応えを確かめながら外していくと安心だ。純正スピーカーを外したら配線を抜き、同梱の変換カプラーを介してTS-F1750へ接続、あとは付属ブラケットを使ってボルトオンで取り付けるだけ。車体側を加工しなくて済むのが、Fシリーズの“始めやすさ”を支えている。
手に持つ事でcarrozzeria TS-F1750と純正スピーカーの違いがハッキリと分かる実物を手に取った大矢根さんもまず“スピーカーの作りの良さ”に驚いたという。「各部の作りがしっかりしていて上質さを感じました。純正スピーカーよりずっしり重いのも音が良さそうだなと期待させてくれます」。
UD-S703の施工も難しい作業ではない。防水シートの上から制振シートを貼り、スピーカー背面に吸音・制振シートを追加し、内張り裏にも制振シートを貼り込むことでドア全体の響きを整える。貼る順番が明確なので、説明書どおりに進めれば迷いにくい。貼り付けの際は空気が残らないよう軽く押し込むのがコツで、ここを丁寧にやるほど音の変化が素直に出やすい。車種によってはメーカーHPに車種別施工マニュアルが準備されていて、より効果的な施工方法が記載されているので簡単・確実に施工出来るのでチェックして欲しい。
思っていたよりも簡単に装着出来て驚いたとのこと最後に内張りを戻す前に一度音出しチェックをして、左右の鳴りや違和感がないか確認しておくとさらに安心。こうした“確認のひと手間”まで含めても、作業時間は約1.5時間ほどで完了した。初心者でこのペースなら、スピーカー交換が思っていたより身近なメニューだと実感できるはずだ。
◆“交換した瞬間に楽しい”がTS-F1750の価値
純正と交換後の違いの大きさをリアルに感じられて楽しくなってしまったそうだスピーカー交換後のN-BOXスラッシュで音楽を再生してもらうと、最初のひと言はストレートだった。「聴いた瞬間に“楽しい!”って思えた音でした」とのこと。
まず大きく変わったのはクリアさ。純正では少し曖昧に感じていた輪郭がはっきりし、曲全体の見通しが良くなる。「音が明確でくっきりして、曲の印象がガラッと変わりました」と違いをすぐに感じ取ったそうだ。次に感じたのは情報量の増加だ。歌詞やメロディを追うだけだった音楽が、楽器の存在までリアルに感じられるようになった。「ベースやギター、ドラムがすごくリアルで、はっきり聴き取れるようになりました。純正で“音が弱い、薄い”と感じていた原因がこれだとわかりました」。
メリハリのあるサウンドは今までの純正とは全く違い、さらに音場の広がりも大きい。足元から鳴っていた平板な音が、車内全体にふわっと立ち上がり包まれるような感覚へ変化したという。「音楽の空間の中にいる感じが出て、同じボリュームでも音が大きく感じました。とても気持ちいいです」。
◆まず“音の変化”を楽しむことが次につながる
Fシリーズからワンランク上の性能を持つTS-Cシリーズもオススメ。写真はコアキシャルタイプのTS-C1740取り付けの手軽さと価格の低さに加え、なにより“音が楽しくなる”という体験が得られること。これがTS-F1750の最大の価値だ。カーオーディオは高価で難しい世界というイメージがあるかもしれないが、エントリークラスでもここまで変わる現実を知れば印象は変わるはずだ。
TS-Fシリーズのセパレート2wayスピーカーTS-F1750SまずはTS-F1750のようなコアキシャルスピーカーで、車内の音が良くなる喜びを体感する。そこで満足できたら、同ブランドのセパレート2ウェイ「TS-F1750S(実勢価格1万8400円税込)」や上位Cシリーズのコアキシャル「TS-C1740(実勢価格2万6800円税込)」へ進む道も自然に見えてくる。
スピーカー交換は“作業”よりも“体験”が主役だ。好きな曲がもっと楽しく、もっと気持ちよく聴けるようになる。TS-F1750はその入口をいちばん身近にしてくれるスピーカーと言えるだろう。










